二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

   花色彼女*   07. ( No.51 )
日時: 2012/08/14 10:48
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照: http://www.kakiko.cc/youtube/index.php?mode

07.





「あっ、美里っち、ッ!?」


 丁度、部活に行こうとしていたら偶然帰宅しようとしている美里っちを見つけた。俺は先日の別れ宣告がどうも気に喰わなくて、新しい彼氏が出来たと言うのにどうも納得がいかなくて、美里っちを呼んだ。
 正式には、呼ぼうとした、と言うのが正しいッスね。


「遅くなって御免。さっ、帰ろうか」

「うん」


 突然現れた男。同じ学年では見知らぬ顔だったから、同じ制服を来ている当たり、先輩だろう。
 すると美里っちは綺麗な笑顔を作って、男の腕に自分の腕を絡める。ぴたり、寄り添う様にして歩く二人は、傍観者の俺から見ても、素敵なカップルだった。

 俺に向けていた、あの綺麗な笑顔を男に向ける。たまに男が美里っちを笑わせて、「やだー」なんて可愛く笑っていた。
 気に食わない、気に食わない気に食わない気に食わない。

 俺は只、捨てられたという事実を胸に、前を歩く二人を眺めていた。
 此処で漸く、俺の恋に終止符が、———、打たれた。





 07: { アフタヌーンは黄金色、あとはセーラだけだ } (/黄瀬)





 お昼三時頃。特別日課で進んでいた授業はあっという間に終了を迎え、部活に入っていない生徒達はぞくぞくと帰っていた。
 俺は美里っちの新しい彼氏を、まるで突きつけられる様に魅せられて落胆した。

 逃げる様に走り去って部活へ向かったが、やっぱり集中出来ず。

 シュートをすればゴールを外し、ブロックすれば簡単に抜かれ、遂には紅白試合は俺のパスミスやシュートミスやらのミスで負けた。
 遂に堪忍袋の尾が切れた笠松先輩は、


「おいてめ黄瀬ッ!ちょっと顔洗ってこいッ!!」

「・・・・・はいッス、」


 怒られ。

 俺は言われるがままにとぼとぼと体育館を後にしたのだった。


「おい、アイツ今日調子悪いな」

「熱でもあんじゃねえ?」




 ×




 体育館近くの、水道の蛇口を逆さにして、ジャバジャバと水を流す。
 途端にサクラっちに会いたくなった。

 蛇口を捻るとタオルがない事に気付き。はあ、と深く溜息を付いてベンチへへたり込む。

 美里っちの眼中に俺は居ない。居るのはあの男だけ。だがどうしたんだろう、先程よりも辛くない。先程はやっぱり付き合っていた彼女に直接心を抉られた様な感覚だったが、今はサクラっちが頭の中に居るからか。
 どうしてだろう、何なんだろうこの感情は。サクラっちの事を考えているとどんなに辛い事があっても辛くない。

 そんな事を考えていると、水滴が一粒、髪から滑り落ちた。そして、其れに比例するように今度はふわりと何かが俺の頭に被さった。
 何だろう、驚いて顔をあげれば其れはタオルだった。同時に、まるで愛しいものを見る様な、優しさに融けたサクラっちの視線と混じった。


「泣いてるの?」

「サクラ、っち・・・、」

「バスケ、しなくて良いの?」

「・・・今日、調子出なくて。追い出されちゃったッス、」



「何かあった?」



 サクラっちは俺の隣に腰掛け、自分の持っていたタオルで優しく濡れた頭を拭いてくれて。その優しい手つきに蕩けてしまいそうで、サクラっちに溺れてしまいそうで。
 気を許してしまった俺は、サクラっちなら、そう思った俺は、少しでもこの気持ちが晴れる事を期待して、口を開いてしまった。


「俺、フられちゃった、」




240814
後3話で完結です!