二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D・Gray-man 〜涙のメロディ〜 こめんと募集中! ( No.250 )
日時: 2012/08/20 20:27
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


 第15粒「金の花が舞う」


 『ほら、サクラ。見てごらんよ! またあの花が咲いているぞ』

 『うん、そうだね』

 金の花が風に舞いながら散り落ちていく。その様子を無邪気に嬉しそうに見る彼を見つめながら、私は返事をした。

 『もうこの花も散る季節だね』

 そう言いながら手を前に出すと、儚く小さい金の花が私の手の平にのる。

 『どんなに美しい花も、散れば醜く枯れていくものね』

 そう言った私に彼は『そうかなぁ』、と言った。

 『俺は花が散って、花びらが舞っているときが一番好きだけどな。まるで、命の終わりを美しく飾っているようだから。———サクラも、そう思うだろう?』

 私は舞い散る幾千の花びらたちを見ながら、

 『そうね』と言った。

 すると、彼が私の後ろに座った。私は彼に体を預け、彼の右手に自分の右手を重ねた。

 ”あたたかい“

 人の体温はとても心地よく、秋の肌寒い風で冷たくなった手を温めてくれた。

 落ちていく花びらを見つめていくと、花びらは水たまりの上に落ちた。雨が降った後の水たまりには、波紋を広げながら、私と彼の姿を映している。

 『ねえ、そういえば』

 あたしの言葉に彼が振り返る。

 『この花の名前はなんだったかしら?』

 彼はクスリ、と笑うと立ち上がり、私の前へと回ってきた。

 『この花。この花はね、』

 ———ザアアアァァァァァァァッッ。

 突然、強い疾風が吹き、金の花が舞う。それはまるで、天へと向かっているように。

 『——————。』

 彼がこの花の名前を言っている。けれど聞こえない。こんなにも近くに居るのに。風が、花が、邪魔をする。

 待って、行かないで。

 私は叫ぶ。けれど声にならない。

 彼の一言は口の動きで分かった。何故そんなことを言ったのかは分からない。

 「待って、待ってよぉ!」

 ・・・
 あたしは叫んだ。何故あたしの名前を知っているのか。それを聞くために。

 否、違う。こんなにも心が叫んでいるのだ。

 『待ッテ、行カナイデ!!』

 胸が締めつけられる。息が苦しい。涙があふれてくる。こんなにもそばにいたい、いっしょにいたいと思うこの気持ちは、なんなのだろう。

 無我夢中で手を伸ばす。彼に届かないのは分かっている。けれど、

 『さよなら』

 あの言葉の意味が分からない。

 なぜ突然そう言って、去っていくの?
 あたしを  私を
 一人に
 しないで!!

 「待って、あなたは———」



 「あなたは誰!?」

 そこで、目が覚めた


   * * * * *


 「———ッッ!」

 体を起こして、ベットを降りる。流れていた雫を拭き取る。

 ———頭が、痛い。

 きっと、あの夢のせいだ。

 夢の内容は詳しくは覚えていない。ただ、金の花が舞っていることしか、記憶にない。

 あの夢は、入団した6歳のころからずっと見てきた。ずっと、と言っても毎日じゃない。十日に一回のペースだ。
 その度に、頭痛がするし涙を流している。

 あたしは夢の中の、自分の姿は覚えている。金色の髪に、空色の瞳。年は今と同じ16ぐらいだろう。ただし、今と異なる点が一つだけあった。
 それは、髪の長さだ。あたしは入団してから一度も髪を伸ばしたことがない。いつもこのショートヘアを保っている。

 ・・・幼い頃から、あの夢のことをずっと疑問に思っていた。そして最近、ある仮説に至ったのである。それは———

 ———コンコン。

 部屋をノックする音が聞こえた。あたしは「はーい」と返事をする。すると、

 『サクラ? よかったら朝食を食べに一緒に食堂に行きませんか?』

 声の主はアレンだった。

 あたしは自分がまだ何も食べておらず、空腹だったことに気づく。

 ———ぐううぅぅ。

 ちょうどお腹もなった。

 「うん。ちょっと待ってて」と言うと、赤と黒のネグリジェから団服へと着替える。そしてドアを開け、

 「おまたせ」

 というと、アレンと食堂へ向かった。


   * * * * * 


 それは———前世の記憶ではないか、と。  


 〆 8月20日