二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D・Gray-man 〜涙のメロディ〜 コメ募集中!! ( No.97 )
日時: 2012/08/19 16:16
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)

 

  第2粒「tragedy—悲劇—」


 仮想19世紀末。

 アクマが大勢の人々を殺していた。

 アクマ、といっても『悪魔』ではない。

 『AKUMA』。人類を標的(ターゲット)に造られた悪性兵器。それが『AKUMA』だ。

 
   * * * * *


 「はあっ、はあっ、はあっ、・・・・・・!! 来ないで、来ないでよッ!!」

少女は暗い夜道、追いかけられていた。そう、『AKUMA』に。

 少女は別に何か特別なことをしたわけではない。ただ、母の言いつけどおり、買い物に行っていた。その、
帰り道にアクマに襲われたのだ。

 「はっ、はっ、うわぁッ!!」

 「! アーサー!」

 共に逃げていた少女の弟、アーサーが転んだ。そしてその後ろには、

 「!!」

 アクマがいた。アクマはアーサーに銃口を向ける。アーサーは泣きじゃくりながら、姉の名を呼び、精一
杯助けを呼ぶ。

 「セ、セシリアお姉ちゃ———」

 ドドドドドドドドドッ!

 アクマの銃口から砲撃が開始される。アーサーの体には無数の穴が空き、そして———


   * * * * *


 AKUMAの砲丸。それはアクマの血でできている。弾丸には毒のウイルスがふくまれており、アクマは
自らの体型を転換、———コンパートして、それを撃ち出す。

 撃ち込まれると、ウイルスが急速に体内を浸食して———


   * * * * *


 「な、何・・・? これ」

 アーサーの体には無数の、星———ペンタクルが広がっており、そして、


   * * * * *


 ——————砕け散る。


   * * * * *


 「ア、アーサーァ・・・・・・」

 少女、セシリアは力なく弟の名を呼ぶ。だが、返事が返ってくるはずもない。もうあの元気な声は聞こえ
ないのだ。

 セシリアは後ろのアクマに向き直り、睨みつけ、

 「この化け物! なんで殺すのよ! なんで!!!」

 力の限り叫ぶ。

 ———しかしアクマには言っても無駄だった。


   * * * * * 


 アクマは殺人を望んでやっているワケではない。兵器として進化するよう強制———プログラムされてい
るのだ。

 アクマは殺人マシンではない。アクマは魂を内蔵した生きる兵器だ。

 アクマは<製造者>によって造られる。



 『千年伯爵』。

 

 それが<製造者>の呼び名だ。

 千年伯爵は今、人類終焉のシナリオを演じている———


   * * * * *


 アクマは次のターゲット、セシリアを発見し、銃口を向ける。

 「イ、イヤ、イヤァァァァ!! だ、誰か、助け———」



 『 Pelsone di satana (悔い改めよ) ——————』



 「———えっ・・・?」

 歌声が、聞こえた。

 次の瞬間、砕け散る。

 アクマが。

 何が起こったか、把握できていないセシリアの前に、胸に白い十字架をつけた黒服の、金髪の少女が映った。

 
   * * * * *

 ——————それを止めるのが、エクソシストの役目である。


   * * * * *

 遠く屋根の上。金髪の少女の、空色の瞳が夜の闇の中、紅く、輝いているように、セシリアには見えた。
   

   〆 6月27日