二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.185 )
日時: 2012/12/06 15:19
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)

七話   「過去」



「つぎの力、だれだろうな?」
「さあ?」

つーか、こんどは幕末いってみたい。坂本龍馬とか。でも、俺はどちらかというと、西郷隆盛派なんだよなー。よくかわってるっていわれるww
あ、でも、ペリーも好きだぜ? あの日本人が描いた絵(←ぇ)。

「えっ、幕末だとぅっ!?」
「なに、幕末じゃと!? もういっぺん、いうてみよ、友撫!」
「兄者よ、たいへんじゃ! 幕末にむかうとのことじゃぞ!」

キセキ! パーフェクトゥ! 俺のねがいが通じだぜ!
つか、俺と友撫、なにやってんだよ。それ以前に、友撫、俺のこと「兄者」ってww よびかた、おびかたww
と、なんやらかんやらで、友撫が俺の元から脱走。あわててジイさん(クロノストーン現象で石になっちゃった大介さんだよ!)の元にかけていった。ジイさん……友撫を俺から奪うとはっ。なんたるくせ者! おぼえておけよ★
さわがしい部室。なのに、いきなり手のあたりがスースーした。

(ま、まさかの……?)

俺は、ちょっととまどいながら、ゆっくりと両手のひらを見た。
案の定、その両手は、ユラユラとゆらいでいた。そして、すこししてから、スゥ……ッと、もとにもどる。

『《半個半幽》とはちがう、もうひとつのダメージか?』
「まあ、そんなところだろうな。そもそも、もうきっと、消えてもよかったはずなのにな……。」
『おそらく、そのことについては、友撫ちゃんも気づいてないだろうし……。』
「ああ。そうだ……な……。」
『なっ……お、おい!』

ドサッ

「風花!?」

耳元でふたつの音がきこえた。
でも、「風花」とよばれる声は、どんどん遠くなっていって、最後には、きこえなくなっていた——……。

     ☆

「ねえ、ママ、パパ。ここでいいの?」
「そうよ。それより、ここで待ってなきゃだめよ。風花は、友撫のおねえちゃんでしょ? 友撫のおてて、はなしちゃだめよ。」
「はーい。風花、待ってる。」

風花は、友撫の手をしっかりにぎって、両親を見送った。ふたりのほほえむすがたを見送るのは、風花が大好きなことのひとつだった。
ふたりの笑顔が遠くなっていくのは、すこし悲しいけれど、でも、わらってくれているのは、うれしい。風花は、ふたりの笑顔が大好きだったのだ。

「パパとママ、たのしそうだな……。」

風花は近くにあったイスに、友撫をつれてすわった。冬なので、ひんやりとつめたい、プラスチックのイスの感触が、おしりを冷やす。
両親が見えなくなったとたん、風花はハッとした。
ふたりが見えなくなって、きゅうに、知らない国に来たという自覚とともに、不安がいっきにおしよせてきたのだ。

(パパとママ……かえってくる、よ、ね……?)

いきなりおそってきた不安は、友撫の手をにぎっていないほうの手を、ぶるぶるとふるわせた。
しばらくしても、ふたりは帰ってこない。ふと、柱にそなえつけてある時計を見ると、もう一時間はたっていた。

(すぐくるって、いってたのに……。)

とん……

きゅうに、左の肩が重たくなった。見やると、友撫がすやすやと寝息をたてて、ねている。

「友撫……。」

風花は、友撫をだきしめた。

     ☆

「んっ……?」

俺は、そっと目をあけた。でも、すこしあけただけで光が一気に入ってきて、再びギュッと目をとじる。

「あっ、目がさめました?」
「速水先輩? あれ? ここって……保健室?」
「そうだよ。」
「浜野先輩……。」
「いきなりたおれるから、びっくりしましたよ。」

速水先輩が、半分あきれたような顔でいう。

「ちゅーか、なんかうなされてたけど、どんな夢見てたんだよ?」
「やっぱり悪夢ですか?」
「悪夢……。」

悪夢とよべないこともない、自分のほんとうの「過去」。でも、あの映像が実際、夢のなかででてきたことは、はじめてだ。過去としては二番目にいやな記憶ではあるけど……。

「すみません。ちょっと、ひとりにさせてくれませんか?」
「えっ、でも……。」
「速水、そういうときもあるって。ひとりにさせてあげようぜ?」
「は、はい。べつの世界にタイムジャンプとか、しないでくださいね。」

ふたりはそういい残し、保健室のとびらをしめた。
俺は上半身起き上がり、右手のひらをのぞきこんだ。なんだか、まえよりもうすくなりはじめている気がしていたんだ。ユラユラと、すぐかすんでしまいそうな……それくらいの、うすさに。でも、ほんとうだったみたいだ。
もう、そうとうからだは、こたえてきていたんだな。精神的についてこれていても、肉体的には……。

『なにしんみりしてる、バカ。』

いきなりとなりから声をかけられ、俺はハッとした。その声は、鼓膜ではなく、直接あたまに流れ込んでくる声。
アクアの声だった。

『おまえ、けっきょく《半個半幽》の《幽》がすすんできるじゃないか。』
「しかたないよ。……おまけに、時間的矛盾タイムパラドックスの影響もあるしな……。」
『同時に、おまえは時間的矛盾のおかげで、いまいられるともいえるがな。』
「ふたつの現象が、いっきにおそいかかってきる、って言う認識で、いいのかな……。」
『そうとるのが、打倒だろうな。』
「……うん。」
『もう、限界か? それとも、みんなに自分のほんとうのすがたを知られるのが、こわくなったか?』
「そんなことない。……でも……。」
『ったく! ひとつだけ、率直にいおう。おまえは、雷門の役に立ちたくてきたかもしれないけれど、いまのおまえは、はっきりいって、ただの足手まといだ! いちばん、おまえが足手まといになるのは、ひとりでウジウジかかえこんで、それが爆発したとき。
 なやみは、だれかに相談すればいい。だれでも、いいから……。』

アクアはそういったあと、俺のからだのなかに入っていった。

「でも……。」

アクアのいったことはズボシ。けれど、相談する相手なんて……。
とてもじゃないけれど、だれにすればいいのか、わからなかった——。