二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.262 )
日時: 2013/04/09 12:14
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)

3話   「大ピンチ」



目を覚ますと、そこは着替え室だった。廊下から、観客の声があふれている。

「俺……。」

視界がくらんで、変なのが聞こえて……。
倒れたんだったっけ。
あーあ。なぁんだ。けっきょく、足手まといなんだな。

「月流、起きたか。」
「わっ!?」

声に驚き、体を起こすと、ロッカーにもたれる相崎がいた。

「な、なんでここに……。『フェーダ』の調査、頼んだじゃん。」
「見に来たんだよ。それより、早く立てよ。『フェーダ』の本拠地に向かうぞ。」
「えっ?」
「支援者xだよ。あいつ、気になるし。いくらフェイ・ルーンの父親っつっても、『フェーダ』の奴ってことに、変わりはねぇ。」

そうだっけ……。
そういえば、最近は、最初に比べると、ずいぶん情報収集員としては、役に立ってくれてるような。

「行くぞ。」
「あっ、待てよっ。」

     ☆

「じゃ、おまえそっちな。」
「ああ。ちゃんと見て来いよ、月流。」
「分かってるっての。」

《半個半幽》の能力のおかげで、ずいぶんすんなり、中には入れました。いやぁ、でも、あたりまえだよなぁ。霊体を映し出す防犯カメラなんてあるわけないし。あったら、「霊体記録カメラ」に改名した方がいいって。
再び《半個半幽》を使い、フェイたちの消えた部屋に、するりと入りこむ。便利だ、便利すぎるぞ、この能力ッ。
……っと、あっ! いた、支援者x!
フェイと支援者xは、見つめ合ったまま、どちらとも口を開こうとしない。
動いたのは、フェイの方だった。支援者xを素通りし、向かい側の扉へと消えていく。

(おとうちゃーん! って、泣きつくことを予想してたんだが……。)

近くの本棚へと身を寄せながら、ひとりでそんなシーンを思い浮かべる。えーん、えーんって……ww あ、ダメだ。笑ってるww
あの小動物=フェイ・ルーンっていうイメージは、捨てた方がいいのかもね。
にしても、俺も頭いいわ。この便利な能力を利用し、情報を聞き出すため盗み聞きをするとは。

「あなたは、なに者なのかな?」

おおっ。サリュー・エヴァン、支援者xに大接近!

「まあ、なに者でもいいけど。裏切ったら——どうなるか、分かってるよね。」

サリュー、それ、おどしっていうんだぜ。
ま、もう少しここに居座って、色々と情報を聞き出し——……。

つるっ

足元が、すべった。このっ、ツルツルのタイル(?)めっ!

ガンッ

「!?」

足をすべらせた勢いで、頭が、思いっきり本棚に激突。
やっちまったー……!
その衝撃で、《半個半幽》の能力も、とけてしまい……。

「だれだい?」

ゆっくりふり返ったサリューさん、とんでもなくこわぁい笑み。子どもが見たら泣いちゃうよ?
なーんて、冗談を言っているヒマはなく。
命が一刻を争うので、とりあえず、逃げ——……。

ヒュンッ

い、いま、月流ユエ湖と風丸風花の頬を、うわさのセカンドステージチルドレンの銃が、あすめました……。俺を通りこした閃光は、扉に小っちゃい穴を空けた。
死にかけた……。
って、のんびりしとれーん!
俺はきびすを返し、猛ダッシュ! だって、怖すぎるじゃねーか! 本格的すぎるぞ、あの銃! 扉に穴がっ!
……って、ん? 一生懸命、足を動かしてるのに、景色がちっとも変わらんぞ。動かしても、動かしても。
どうなってるんだ……?

「そんな簡単に、逃がさないよ^^」

あ、ふり返らずとも、この一言で分かりました。
絶対エスパー、使ってる。

「SARU、どうしたの?」

ガチャリと向かいの扉が開き、フェイが入室。その目は、サリューを見て、俺に視線をうつして、すこし目を見開いた。

「フェイか。彼女、ずっとぼくらのこと、のぞき見してたらしいよ。」
「ふぅん……。」

フェイの冷たい視線が、ぐっさり突きささった。
さあ、どうする、俺。
絶体絶命の大ピンチだぞ……。