二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜5000越え ( No.295 )
日時: 2013/08/04 17:38
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

7話   「なにごとにも、期間はつきもの」(※けっこう長め)



いやあ、やばいのなんの。遅れたら、まじめに水鳥先輩に殺されるって。あぶられるって。火あぶり火あぶり。
あっ、よし。見えてき——。

「げぇつぅりゅううぅぅ!!!!」

ドッゴォッ ドサッ

今の状況をお伝えします。
ただいま、頬にこぶしをねじこまれ、頬骨が痛いです……折れそうです……。
もちろん、殴ったのは水鳥先輩。殴った本人は、ゆかに突っ伏している俺を、仁王立ちで見下ろしている。

「おまえ、遅れてくるなんて、いい度胸してるなぁ?(^言^)」
「すみません、やぼ用で……。」
「どんな用だよ?」

う……。
ほんとのこと、話すわけにもいかないし……。
……前言撤回。みんなには事情をご説明いたします。
じつは……「フェイがもどってきた!」ってなったあと、俺はすぐ、みんなの前には出て行けなかった。だから、クロノストーンのごようすでもうかがいに行こうと思って、例の館に潜入したんだけど。
そこで、サリューとでくわしちゃって。
しばらく話しをしていたら、長引いちゃってね。え? 何の話しか? いや、それは言いづらいもんがあるんで、カットで。

とにかく……。

いいわけ、あれでいいか。

「言えねえのかよ?」

水鳥先輩、超至近距離ですごんでくる。こわいからやめて。水鳥先輩。

「まあまあ、水鳥先輩。フェイが帰ってきたんですし!」

ナイスフォロー、天馬。いつもはよけいなことばっかりだけど、今回だけはよくフォローしたな!
水鳥先輩も、それを聞くと、表情が和らいだ。

「ま、まあ、それもそうだな。」

水鳥先輩、一本取られたり! ……って、なにあほみたいなこと言ってんだ、俺。

(まあ、でも。)

伝馬たちが笑ってくれてて、良かった。フェイがいなくなってから、ずっと暗い顔だったし。
……でも、俺、ほんとに入れるのかな。
セカンドステージチルドレンだってことを告白しちゃったし。それで、スパイにまで怪しまれたし。

「風花。」

はっとして顔を上げた。この声……!

「フェイ!」
「うん。」
「「おーい! 風花も来いよ!」」

みんなに呼ばれ、俺は思わず、その場にかたまった。
え……?

「どういうこと……?」
「ぼくが、ほんとのことを伝えたんだよ。」
「え?」
「風花はスパイじゃないってこと。スパイなのはぼくだけってことをね。」
「フェイ……!」
「当たり前のことだよ。だって、仲間でしょ?」

フェイが、にっこり笑ってくれる。その笑みが、すごく暖かくて。

「おーい、はやく!」

向こうで、輝が手をぶんぶん振ってる。
俺は口角を上げ、思いっきり笑って。

「ああ!」

俺は、みんなの元へ走った。

     ☆

となりのベッドから、剣城の静かな寝息が聞こえる。この顔……剣城ファンが見たら、萌え死ぬだろうなぁ。
にしても……。

(み、水のめぐみを……!)

のどがかわき、俺はベッドから降りた。剣城は、いわゆる神経質だからな。ちょっとでも物音立てると、目を覚ましちゃうんだ。静かにしねえと。
冷蔵庫を開けてみて……絶句。
なんだ? こりゃ。マジむかつく。ふざけんなよな。なんでこんなのど渇いてるときに……!
あ、失敬。ついむかついて、我を忘れちゃって。
なにが入ってたかって、手紙だよ。ほんとに、ふつうの。

『for 風花   from 記憶の氏』

まったく……天界の奴らは、へんなところに手紙を置いていくらから、嫌いだ。
封筒を開け、手紙を取り出した。かさり、と乾いた音が、小さく部屋に響く。

「ん……。」
(わっ!?)

背後で剣城が声を出した。まさか、起きた……?
ゆっくりふり返ると、ほう、よかった。単なる寝返りか。
じゃ、さっそく手紙を拝見っと。手紙を開くと、つややかな黒髪を長く伸ばした少女が登場。おお、近代的。

『風花、そちらでの暮らしはどうじゃ? 楽しいかもしれぬが、天界ほどの気楽さはなかろうなあ。』

またこのはじまりかたかよ……いやらしい。
まあ、いいや。とりあえず、知りたいのは本題だ。

『風花も知ってのとおり、我らが人間界に文(ふみ)を出すのは、重要なことを伝えるためじゃ。こととは、きさまの《半個半幽》じゃ。』

ぴくんっ、と肩が震える。そんな俺の反応を予想していたのか、記憶の氏はにやりと笑った。

『きさまも気になることであろう? じつはな、期限を決めたのだよ。』
(期限?)
『きさまを、人間界に置いておく期間だ。』
「ッ!?」

落としかけた手紙を、俺はあわてて拾い上げた。そのとき、バタバタ音をたててしまったから、剣城が起きていないといいんだけど。

『おまえの関わっている一件が、終わるまでとする。』
「え……?」
『雷門が現代にもどり、『おまえ』が、全員から記憶を消す。そこまでの処理を終えたら、きさまは天界にもどらなくてはならない。やり方は知っているだろう?』
「俺が……。」
『きさまの両親は、すでに天界にむかえ入れている。きさまを心待ちにしているようすはないが……待っているはずじゃ。なにしろ、親なのだからな。はよう来るがいい。』

映像は、吸い込まれるように、消えていった。
ただ俺は、あぜんとしていた。
この一件って……サリューたちのことだろ? あともう一試合したら、この事件は解決するんだ。
つまり……。

『あ、そうそう。』
(わあぁっ!?;;)
『すまぬな、二度に分けてしまって。』

ほんとだよ! 心臓飛び出るかと……。

『いまの《半個半幽》は、これ以上悪化しないよう、プログラムしておいたから、安心するのじゃ。』
「あ、そ……;;」

はあ……。なにかと思ったぜ。
にしても、《半個半幽》って、プログラムできるものなんだな。ずっと、自然現象だとばかり……。

「でも……。」

あと一戦、か。
俺は冷蔵庫を閉じ、のどのかわきもわすれ、力なくベッドにもぐりこむ。

——剣城SIDE——

月流、なんの話しをしてたんだ? とちゅうで起きて、とっさに寝たふりして、盗み聞きしてたが。

(なにか、重要なことらいしな……。)

記憶を消す、とか言ってたな。
月流の行動、気をつけてみるか……。

     ☆


——風花SIDE——


(試合当日、か……。)

肩をひとり落としながら、ミーティングルーム。みんな緊張していながらも、楽しそうに話をしていた。

「いよいよだね。」
「えっ?」

すとん、ととなりに輝が座った。緊張してながらも、自分は出ることが出来ないことについて、ちょっと不服な色が出ている。

「最終決戦だね。」
「ああ。……天馬たちには、頑張ってほしいよな。」
「勝ってもらわないと、この時代が危ういって言うか。」
「プレッシャーだよなぁ。」
「セカンドステージチルドレンの力でプレッシャーかけられる以前に、もう感じてるよね。」
「ほんとに。」
「月流。」

上から声が降ってきて、視線をうつした。

「剣城か。どうした?」
「怪しいまね、するなよ?」
「え?」

剣城はそう言ってくるりときびすを返し、みんなの輪にもどっていった。

「みんな、集まれ。」

サカマキの声で、前の方にみんなが集まった。