二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜5000越え ( No.296 )
日時: 2013/08/08 20:46
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

8話   「悪化……?」



クロノ・ストームチームと、観客席で観戦チームにわかれると、サカマキが俺をにらむ。

「どこに行っている。」
「え?」
「おまえもミキシマックスしているだろう。」
「なんで知ってr((「フェイ・ルーンから聞いた。」  あ、そうですか。」
「ベンチで待機していてくれ。万が一のためにだ。」
「……はい。」

目の前で見られるのはうれしいけど、でも……。
念のため、ということで、耳に念動派を防ぐ機械をつけた。びみょうに、これでだいじょうぶなのかよ、とかちょっと思ってる俺。

「風花。」
「ん?」

フェイに呼ばれ、くるりとふり返った。立っているフェイの顔には、なぜか影が落ちている。
どうしたんだろう? なんか、悪いことでもあったのかな。

「どうした?」
「あのね、SARUから聞いたんだけど……風花の《半個半幽》を悪化させるようなしかけをしたらしくて。」
「サリューが?」

フェイは、しんみょうな顔つきのまま、うなずく。

「なにをしたら悪化するかまでは、教えてくれなかったけど……。ただ、視界に『なにか』が入ると、悪化するらしいんだ。」
「視界に、『なにか』……。」

『なにか』って、なんだろ? 嫌なものとか?
でも、たしか記憶の氏からの手紙には、もうこれ以上は悪化しないって、書いてあったような……。
いや、書いてあった。

「行くよ、ふたりともー!」

天馬がさけんだ。

     ☆

けっきょく、ワンダバがしきるか円堂監督がしきるかは、円堂監督がこの最終決戦の指揮を振ることになった。ワンダバは、すんげー落ちこんでるけど。だいじょうぶかなぁ;;

「ユエ。」
「となりのト○ロ!」
「え?;;」
「あ、すみません。ついパニクっちゃって。なんですか?」
「みんな、おまえのことは信頼してるから、おまえも信じろよ。」
「? はい……?」
「よし! みんな、気合い入れてけよー!」

円堂監督の声に、みんなのプレイがヒートアップする。
うん、いいんじゃない、この調子なら。
俺がちらりとサリューを見た、そのとき。

ぱちんっ

指を鳴らす音が、完成にかき消されそうになりながら、響いた。
そのとたん、聞き逃してしまいそうなほど、小さな耳鳴りがした。

(? なんだろ……?)

耳元に手を当て、小首をかしげた。
いや、でも、念動派からはこの機械が守ってくれているはずだし……うん、信じよう。
俺がフィールドに目をもどすと、サリューの行動には気づいていなかったフェイが、動いた。

ズキッ

「ッ!?」

きゅうに、頭に激痛が走る。かなりの頭痛だ。だけど、そばには円堂監督もいるし、ベンチは、選手たちからも丸見えだ。俺のことで気を散らして、負けてほしくなんかない。
そんな一心で、俺は頭に手を添えうつむく。必死にそれをこらえる。
そのとき、一瞬だけ腕が透けたように見えたのは、もう気にしない。気にしていたら、キリがない。
どうなってるんだ? もうこれ以上《半個半幽》は悪化しないはずじゃ……?
やっと頭痛がおさまると、俺はおそるおそる、手を離し、顔を上げた。すると、天馬が苦々しい顔をしながら走っているのが、視界に映った。

(よかった、ちゃんとやれて——。)
「っあ゛ッ!?」

ふたたび、頭痛が襲った。しかも、ケタ違いの痛み。その痛みに、あっさりひざに頭がうまる。
それどころか、いすから身体がずり落ちてしまう。
円堂監督がぎょっとしてふり返った。

「お、おい、風花!? だいじょうぶかよ!?」

円堂監督の声が、頭の中にこだまする。ぐわんぐわん響いて、おかしくなる。

「しっかりしろ!」

監督の声が、どんどん遠のく。
駄目だ、こんなところで、ぶっ倒れるわけには……!

『風花さん!?』
(えっ!?)

はっとして顔を上げると、白いワンピースがうるさくはためいていた。
この子、まさか……!

「ファイアリ……?」
『だいじょうぶですか!? なにやら、《半個半幽》が関わっているようですが……。』

ファイアリのセリフに、円堂監督が顔をしかめる。

「《半個半幽》?」
『あ、いえ。』

ファイアリが両手をぶんぶん振りながら、あわてる。

『気にしないでくださ——。』

ファイアリの言葉が、止まる。
あれ……?
俺は嫌な予感がして、ゆっくりファイアリの足を見た。

(!?)

的中していた。それも、かなり悪く。
ファイアリの足が、消えていた。完全に。ファイアリの目も、驚愕をたたえている。

『嘘……。』
「ファイアリ……。」
「どうなってんだ!?」

円堂監督の声も、いまは鼓膜を震わせるだけの、ただの雑音にしか聞こえない。
いま、いちばん俺の気を引いているのは、それこそ幽霊みたいに、ぼわぼわふよふよした、ファイアリ。

「ファイアリ……?」
『そんな……風花さんが、体力切れ……!?』
(え!?)
『だ、駄目ッ!』

ファイアリの声で、ぶわっと、まっ赤な炎が散った。

     ☆

気がつくと、まっ白な天井がひろがっていた。
ここは……?

「気づいた? ふーちゃん。」

え!? まさか!

「輝!? いッ……。」

俺は思わず上半身を跳ね上げさせ、頭痛に見舞われ、頭をおさえてふたたび寝てしまう。
……ここは?

「ここはおれの部屋だよ。」
「輝の?」
「うん。ふーちゃん、意識を失っちゃったんだよ。ファイアリが消滅しちゃって……。」

……やっぱり……。
あの炎は、ファイアリが消えたからなんだ……。

「ふーちゃん、あのさ。ここ、テレビついてるから、それで観よ?」
「……うん。」

輝が、テレビの電源をつけた。