二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜 ( No.319 )
日時: 2014/01/08 18:45
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

☆番外編☆第十九話   「独り」



「陽子先生、あの、これ……。」

教科書とプリントを見比べながら、陽子先生を見上げる。プリントに書かれているのは、小学四年生の問題。
先生は風花の肩をそっとつかみ。

「あなた、もっと難しい問題も解けるのでしょう?」

小さく、こっくりうなずいた。小学三年生レベルの問題まで生ぬるいくらいだ。
陽子先生は続ける。

「なら、もっと解かなきゃ。チャレンジしていきましょうよ。」

出会ったときと変わらぬ、太陽のようなあたたかい笑みで、陽子先生はいった。

     ☆

「もうむりです。」

リビングから、厳しい声が聞こえた。
リビングに入ろうとして、ドアノブにかけていた風花の手が止まる。
いまの……陽子先生?

「あの子の相手なんか、もうできませんわ。」
「そうなんですの? そんなに、駄目なんですか?」

駄目、ということばに、風花の肩が跳ねた。感情のこもっていない声で母がきくと、陽子先生らしきため息。

「頭が良すぎるんですの。」
「あらまあ。」
「あそこまでとなると、わたしも限界ですわ。わたしは小学生相手なんですもの。中学生レベルなんて……むりですわ。」
「そんなことしていいんですの?」
「かまいませんわよ、口実をつくればいいだけですから。」
「そうなんですか、よかったですわね。」
「まったく……奥さまと話していても、腹が立ちますわね。」
「あら、そうですか? それはすみません。あの子にも、謝らせましょうか?」

笑いがこもっていく、母の声。舌打ちがきこえ、布ずれの音が、静かな家に響いた。

「失礼します。」
「またの機会がありましたら。」
「お会いするのも、もうごめんですわ。」

足音がした瞬間、風花は反射的に階段の影に隠れた。こっそり顔を出し、廊下のようすをうかがう。
ちょうど、陽子先生がリビングの扉を開け、出てきた。そして、ぺこりと頭を下げる。

「短い間、ありがとうございました。」
「こちらこそ。」

母のことばが終わらぬうちに、陽子先生は歩き出し、靴を履いて出て行った。
母の小さなため息とともに、リビングの扉が閉まる。
物陰に隠れる風花は、小学生になって何度目か分からないほど、同じことを考えた。
けっきょく、みんなにとって、私はいらないの?
みんな、私を嫌う。離れていくんだもの……。

「風花は……。」


風花、は……。





























































































































独りぼっち、なの……?