二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜更新困難状態〜 ( No.331 )
日時: 2014/01/31 08:37
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)

☆番外編☆第二十六話   「どら焼き」



アメリカに来て三日目。
快晴と言っていいほど、晴れ渡った空。

「今日はどこ行くの?」

助手席に乗りながら、足をぶらぶらさせる風花。どら焼きを口にする友撫。
(作者より:ちなみに、アメリカってどら焼きあるんですか? 売ってるお店があるとしたら、教えてください。
アメリカ行ったときに、買いに行きます。)
母は、友撫がこぼす食べかす処理に追われている。
代わりに、父が風化の問いに答えた。

「病院だよ。」
「え、ほんと? どうしたの? 誰か病気?」
「はへひいはほ?」(翻訳:かぜひいたの?)
「そうじゃないわよ。じつはね、アメリカに来た目的は、ママの病院見学だったの。貴重な体験もさせていただけるみたいだし。」

にっこり笑うと、からだをひねって母を見ていた風花も、微笑んだ。それを聞き、誰も病気ではないと分かった友撫は、ふたたびどら焼きにかぶりつく。

「あ、だから、ムルーシュおじさんいないんだね。」

ムルーシュは今日、友人との約束があると言って、ついてこなかった。母も父も、にこやかに送り出していたから、別にほかになにがあるとも、思っていなかったが。
運転しながら、父はうなずいた。

「ああ。ムルーシュさんは、どうも病院嫌いらしくてな。むりやりは連れて来なかった。」
「そっかぁ。やっぱり、そういう人もいるんだね。」

来てくれればよかったのに、と風花はぼんやり思った。ムルーシュは愉快だし、風花や友撫とよく気が合うため、一緒にいて楽しい。今日も、一緒にいられると思ったのだが。
ちょっとぶすっとしながら、前方を見ていると、父がくすっと笑うのが聞こえた。

「なにさ、パパ。」
「いや……そんな好きか? ムルーシュさんのこと。」
「うん、おじさん面白いもん。」
「ああ、そういう好きか。」

ほかになんの『好き』があるの?
とすこし思ったが、きっとなにか思っていたものと違ったのはたしかだろう。風花としてはあまり興味がないので、それ以上は考えず、スルー、スルー。

「……どらやき、たりない。」

出発して十五分。もうどら焼きを食べきったらしき友撫の声が聞こえる。
たぶん、十個くらいあったと思うんだが。