二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜更新困難状態〜 ( No.332 )
- 日時: 2014/04/28 09:41
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: k9pS0/Ff)
☆番外編☆第二十七話 「白人」
「風花、降りて。」
「むにゃっ?」
完全に爆睡中だった風花が起きると、母は「ふふっ。」と笑って、ふたたび降りるようにうながした。寝ぼけまなこをこすりながら、車を降りると、大きな建物が目に映る。
壁のかわりにガラスが敷き詰められており、一番上には、三角の形をした、青色の屋根。まわりには、大量の緑がある。
「ふわぁ……すごぉい……!」
「今日は、ここに用事があるのよ。行きましょう。」
「はーい!」
うれしそうに返事をして、風花は母と一緒に、病院に入っていく。
父と友撫のほうはというと、車のなかで待っているようだ。車からは降りず、父のスマートフォンをふたりでのぞきこみ、楽しそうに会話を繰り広げている。ちょっと入りたい気もしたが、母と一緒にいられるのだから。
病院の裏口から入ると、扉のすぐそばにいた白人が、母に英語で声をかけた。しばらく、風花にとって、わけの分からないことばで会話を進めたあと、白人が風花のほうをちらっと見てから、会話は終了。白人は風花と母に笑いかけ、奥へ入るようにすすめた。
「なにするの?」
「いいから。黙ってついていらっしゃい。」
前を向いたまま、母は返答する。ちょっと不安にはなったが、きっと大事なことなのだ、あとで話してくれるだろう。
数分歩き続けると、ひとつの部屋に行きついた。白人が、なにやら暗証番号らしきものを入力すると、扉が自動で開き、なかのようすがあらわになる。
なかには、大きな寝台がひとつと、いくつかの実験薬品、十人弱の白衣の人々。
「っ……。」
なんだか分からないが、すごく怖い。
なにをされるか分からないうえ、白衣の人々は、みな黙って、風花と母を見つめている。なにも言わないし、なにをしようと考えているか分からないことが、こんなにも怖いなんて。
母に背を押され、こわごわ入っていくと、ひとりが微笑んで出迎えてくれた。
母と同じくらいの年齢に見える男性だ。白衣にすこしかかっている金髪がなめらかで、静かな青の瞳が、まっすぐこちらを見つめている。
「押しかけてしまって、ほんとうに申し訳ありません。」
「なに、かまいませんよ。」
外見とは裏腹に、とてもなめらかな日本語が、彼の口で紡がれる。
彼は風花を見ると、にっこり笑ってくれた。
「きみが、フウカちゃんかな?」
「え、は、はい。」
声をうわずらせながら、風花はうなずく。
男性はくすっと笑うと、ふたりをさらに奥へと招いた。
白人たちがすっと道を開け、まっすぐこちらを見ている。多くの者が眼鏡をかけており、それが光を反射し、表情がうかがえない。
何なのだ、この……この、威圧感は。
やっと三人が止まったところは、まっ白な部屋。中央には寝台のようなものと、手術服に身を包んだ四人ほどの白人。
そのようすは、手術室のそれであった。
「風花、どうしたの?」
知らぬ間にかたまっていた風花の肩を、優しく母が叩く。
おそるおそる顔を上げると、母がにっこり笑む。
「おいで。」
いつの間に——母は、こんなに恐くなったのだろう。