二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜解決しました ( No.45 )
日時: 2012/08/07 12:04
名前: 柳 ゆいら (ID: z52uP7fi)

8話   「足手まといなんて、思ってないからね」



ジリリリリリ……

鳴りはじめた瞬間は、あまりにいきなりでびっくりしていたけど、みんなハッとして、

「いそいで外に!」

というフェイの声で、元来た道をかけだした。どうやら、内側からならすんなりあくらしく、とびらに走っていくと、スーッとカンタンにひらき、とびらは俺たちを外へと逃がした。
走って行っている間に、ふと、自分の目を疑う『モノ』を見た。それは、どう考えても、みおぼえのある設計の『モノ』で。

ウィーン……

にぶい機械音をたてながら、うしろから追ってくるのは、俺が疑ってしまっていた『モノ』。
みんなにとっては、ただの警備ロボットかもしれない。でも、あの警備ロボットの設計は……!
俺があぜんとしてしまい、思わずたちどまっていると、警備ロボットが俺にむかって、右腕をふりあげていた。そんな現状を、俺はまったく理解できず、いまだに警備ロボットを見上げたまま、微動だにしなかった。
その重そうな腕がふりおろされそうになった、そのとき。
ほんとうに一瞬のできごとだった。ほおに風を感じ、反対側には、あたたかいなにかを感じ、警備ロボットが視界から消えていき、こんどは冷たいなにかにたたきつけられた。
俺は、おしたおされたんだ。だれかに。でも、すぐにわかった。雷門のひとじゃない、オレンジ色の服を着てる、ライトグリーン色の髪をした……。

「フェイ……。」
「自分から死ぬ気なわけ!? 逃げるよ!」

フェイは、無気力な俺をむりやり引き起こし、走り抜ける。俺の腕を、しっかりつかんで。


ああ、なさけないや。
俺、いったいなんなんだよ。
みんなの役にたちたかったはずなのに。
自分から死にそうなメにあいそうになって、仲間に助けてもらって。
自分で自分の身も守れないなんて……。
足手まといになるだけだ……………………。


「べつに、足手まといなんて、思ってないからね。」

俺の意志を読み取ったかのように、フェイはまえを向いたまま、そういった。
俺はなんだか救われたような気がして、あふれるなみだをぐっとこらえた。そうだ。足手まといだと自分で思うなら、足手まといにならないよう、やれることをなにかこなせばいいんだ。

(ごめん、フェイ、みんな。俺、どうかしてたわ。)

心のうちでそうつぶやくと、俺は自分の足で走り出す。フェイとならんで。

「風花……?」
「ごめん、フェイ。俺、ほんきでいくわ。」
「……ああ。」

一瞬なにかわからないという顔だったけれど、すぐにフェイは合点した。
が……うしろとまえの挟み撃ちにあってしまったらしい。まえからもうしろからも、警備ロボットがウヨウヨきやがる。

「友撫、ここでストレス発散すれば?」
「オッケー、お兄。」

前線の友撫と、いちばんうしろの俺は、そうとだけいうと、それぞれでロボットと格闘する。いや、ロボットはべつに格闘技できないから、俺らが一方的に殴りながら、道あけていっただけ。
なのに、友撫の奴の奇声がすごくて……。

「アラァアー!」
「どけ、ゴルァアア!」
「ジャマなんだよっ、失せろ!」

とかな。
もう小学四年生とは思えないようなおことばで。なんかフェイも超苦笑いしてるし。
サッカースタジアムのような、ひろいひろい部屋に入ると、最後から二番目に入ったフェイは、俺が入ったことを確認すると、部屋をロックした。みんなでフウと安堵のため息をついた。
だけど、俺だけだった。壁によりかかって、あたまをおさえていたのは。
(いたい……いたい。)
「お兄、だいじょうぶ?」

また『アレ』だった。それはわかってる。
でも、薬も水もない。おさえられないいたみだった。

「風花?」

フェイがそんな俺に気づいてしまい、声をかけた、そのとき。

「う、うわあ!」

天馬の声がして、はじかれたように顔を上げると、サッカーフィールドのような長方形のゆかから、水のベールのような壁があらわれ、天馬たち雷門中と、俺、フェイ、友撫との間をひきさいた。