二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜2章5話更新&500越え ( No.59 )
日時: 2012/08/15 14:51
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)

六話   「ほめるか?    いや」



「今川の手先ではなかろうな?」

いま、信長さまに問い詰められてます。
やべえ、やべえ、やべえ;;
俺がそうひや汗一滴たらしそうになった、そのとき。

「おれたちは、ただの旅人です!」

神童先輩が、そういうと、信長のまえまでいき、まあ勇気があることにこういった。

「決しておれたちは、今川たちの手先などではありません!」

しばらくの沈黙。そのあと、信長はフッとわらった。

「いいだろう。その瞳、にごりのないいい瞳じゃ。」

俺らがホッとしたとき、俺はすかさず、胸元にかくしもっていたものをサッととりだす。

「信長さま。」

俺が声をかけると、信長はこちらをふりかえる。俺は神童先輩の、さらに信長のまえまでいき、ひざまづくと、信長に盆をさしだした。

「よければ、信長さまにこちらを食べていただきたいのですが……いいでしょうか。」
「これは……大福か?」
「はい。そのとおりにございます。」

信長は、盆にのった大福をとると、ぽいと口に放り込み、モシャスモシャス、まあ何度見ても豪快に食べる。
そんなんは表に出さず(だって殺されるじゃん、顔にだしたら)、緊張した面持ちで、信長を見ていた。
すると、

「んんっ!? こ、この味は、いったい……?」

信長がうめいた。一瞬、まわりにいた武士たちがビクッとなるけれど、味のことをいわれ、ほっと胸をなでおろす。

「いったい、なんの味だ?」
「はい、桃にございます。」
「あとから味がきたのだが?」
「はい。風味があとからくるよう、あずきのなかにしこんでみたのですが……お気に召さなかったでしょうか。」

信長にきくと、あっさりこう。

「いいや、うまい。これは、どこで買ったのじゃ?」
「買ったのではなく、自らつくりましてございます。」
「なんと!」

信長がふたたびうめいた、そのとき。

ヒヒーンッ

「な、なんだ!?」

いきなりの馬の声に、俺たちは声のほうを見た。見てみると、馬がつっこんでくる!

「っ!」
「信長さま!」

信長のまえに、ふたりの武士が立ちはだかった。だが……

「じゃまじゃぁ!」

とさけび、ふたりをおしのけると、つっこんでくる馬にふれることもなく、馬はふっ飛んだ。

「ハッハッハッハッハ! 暴れ馬なんぞ、こんなものじゃ。」
「す、すごい……。」

俺たちは、一瞬あぜんとした。
けど、信長ご一行さんがたがいきそうだから、俺と神童先輩はさっとどき、あたまを再び下げる。そのとき、

「よし……。」

と声がしたと思うと、信長にむかって、ワンダバがミキシマックスガンを発射! ちょ、ちょ! いまのタイミングでそれ打ったら、あやしまれるほかないだろ!
けれど、ミキシマックスガンの光線を、信長は打ち払った。信長がふりかえる。

「むむっ!?」
「ハッ。」

ワンダバはダラダラッと汗を流し、ミキシマックスガンとともに、顔をべしゃっと地面につけた。うーわー。つかまったらワンダバのせいだ、これ。

「なんじゃ、それは? 火縄銃に似ておるが?」
「こ、こここ、これは、花火銃といいます。ののの、信長さまにお見せしたいと思いましてっ。」
「なるほど。そうか。それでは、祭で披露してもらおう。精をつくすのじゃぞ、花火職人よ。」

信長はさっさと馬に乗って帰って行った。
俺たちは、安堵のため息をつく。

「にしても、よく花火銃なんて名まえ、とっさに思いついたな。」
「ほめるか?」
「いや。」