二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜2章7話更新&600越え ( No.70 )
- 日時: 2012/08/20 20:00
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)
☆番外編☆第二話 「この子を守るおねえちゃん」
「かーわーいー(はぁと」
「風花ったら、顔を近づけすぎよ。もうちょっとはなして。」
「あうー?」
赤ちゃんは小さい手をにぎったりひらいたりしながら、風花を見た。
「ねえねえ、お名まえ決めないの?」
「もう決まってるのよ。知りたい?」
「知りたいっ。なんてお名まえ?」
風花が目をきらきら輝かせながら母にきくと、母もわらい返して、こたえた。
「この子の名まえはね……。」
「うん、うんっ。」
「『友撫』っていうのよ。」
「友撫ちゃん!? 可愛いっ。ねえ、この子のパパとママは?」
「パパと、ママは……。」
母の表情に、さっとくもりがあらわれる。風花はその理由がよくわからず、母のひざにのって、母を見上げながらきいた。
「ねえ、パパとママはー?」
「いいこと、風花。よくきいてね。」
母が風花の肩をつかんで、いつになく真剣な顔でいった。きれいなライトブルーのひとみは、まっすぐ風花を見ていた。
「友撫ちゃんのパパとママは……死んじゃったの。」
「えっ……。」
風花は、目を大きく見開いた。あたまの中で、母のことばが、こだまのようにひびく。
——死んじゃったの。死んじゃったの。死んじゃった——
「ほ、ほんと……?」
「そうよ。交通事故で亡くなったの。風花のママと友撫ちゃんのママは仲がよくて、それで友撫ちゃんがうちにきたのよ。わたしたちの『家族』になるために。」
「家族に、なるために……。」
からだに、きゅうに力が入らなくなってしまう。風花はぼうぜんとして、ゆっくり友撫ちゃんの見た。いつの間にかねむっていて、やすらかな顔だ。
にこにこしていて、とても幸せそう。それなのに、家族が死んでしまったんだ。両親が死んでしまったんだ。風花は信じられず、友撫の元まで歩いていくと、友撫のほっぺたをなでた。
「友撫ちゃん……かわいそう。」
「そうね。でも、いまはわたしたちがいるわ。」
風花の元まできた母が、うしろから風花の肩に手をおく。
「風花、これからはわたしたちが、友撫ちゃんの『家族』なのよ。だから……風花、あなたはおねえちゃんになったのよ。」
「えっ……。お、おねえちゃん!? ほんと?」
「そうよ。この子を守るおねえちゃん。」
風花はさっきとはちがい、目をきらきらとかがやかせた。
「やった! 風花、がんばるねっ。」
「そうね。じゃあ、この子を見ててあげてちょうだい。ママはいまから、ごはんつくるから。」
「はーいっ。」
風花は母がいなくなると、友撫のとなりにごろんと寝転がった。友撫はしばらく起きる予感がなさそうだったのに、きゅうにゆっくり、その小さい目をひらきはじめると、わあわあ泣きはじめてしまった。
「わ、わあっ。ど、どうしたんだろう。」
風花は友撫をだきしめて、ハッとした。
(もしかして、パパとママがいないのが、わかっているの……?)
「あうーっ。うあーっ。」
「よしよし、だいじょうぶだよ。きょうからは風花たちが『家族』なんだよ。だいじょうぶ、風花が守ってあげるからね。」
風花がそういうと、友撫はだんだん泣き止んでいき、風花の目をじっと見つめはじめた。風花はにこっとわらい返すと、
「いい子だね。」
そういって風花は、友撫をぜったいに守るとちかった。