二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ブリーチ 夜を超える者達 一ノ一ノ三更新 7/8 ( No.29 )
日時: 2012/08/29 16:40
名前: スターク  ◆FwuTUrVzG2 (ID: 68i0zNNK)

素海流様へ

お久し振りです。
スカル、何だか憎めないと言うか可愛いですよね^^
面白いです。
いつになるか分りませんが時間が出来たら覗いて見ますね!



_____________________ここから本編________________________




                     第一章「闇の軍勢」 第一話「現世異変」五頁目





  「やれやれ、同世代メンバー全員集合かい? 面白いじゃないか」
  「余裕かましてるんじゃ、ねぇぞおぉぉぉ!」

  斜に構えた様子で見下すエツゥナイに迎い、一護は黒い霊圧を纏わせた天鎖斬月を、全力で振り下ろす。それをエツゥナイは三本の爪で防ぐ。一護はすかさず刀身から溜めていた霊圧を月牙として解き放つ。ズ……ン、と鈍い音が響き衝撃で二人は吹き飛ぶ。

  「ぐっうゥ、ア゛ァッ!」
  「…………ッ」
  「まだまだぁっ!」
  「まさか、相打ち狙いとは笑わせる! どう考えても僕のほうが君より頑丈なのにさッ!」

  うめき声を上げながらも、体勢を立て直した一護は、予想外の形でダメージを受けたことに放心しているエツゥナイに、容赦なく切りかかる。しかし、彼は忌々しげに舌打ちをしながらも、容赦なく浴びせられ剣戟の雨を全て払いのける。

  一護の攻撃を全て受けきりながら、その上で彼は大気の霊力を練り、いくつもの黒玉を生み出す。剣と剣が重なり合うような至近距離で彼は黒玉を容赦なく解き放つ。爆発の余波で自らもダメージを食らいかねない距離だ。一護は後ろへと逃れようとするが間に合わない。

  「一護!」

  甚大な霊力の奔流と轟音に驚き、茶渡は一瞬漆黒の馬から目を離し盟友一護の名を叫ぶ。しかし、敵から目を離すのは当然ながら悪手。その隙をつかれた茶渡は、黒馬の放つ黒い弾丸に貫かれ、うめき声を上げる。

  「いってぇなぁ! てめぇこそ無茶するじゃねぇか!?」
  「生憎と僕は君と違って霊圧硬度を持っているんだ……こんなの大したことないさ」
  「ケッ! どいつもこいつも硬いのが主流かよッ!」

  しかし、茶渡の損傷に気づかない一護は、すぐに戦線に復帰する。黒球の直撃を受けたというのに、額から血を流す程度の一護を見て、内心エツゥナイは戦慄く。霊圧を体に纏わせることにより、一護は自らの攻撃の全てを防いだのだ。それはつまり霊圧の量自体なら、彼のほうが自分より勝っているという証明だった。それを肯定した上で悟られまいと強がりながら、エツゥナイは叫ぶ。自らを鼓舞するように。彼の心情を、長い戦いの中で培った勘から察した一護は、余裕に満ちた声で彼の言葉に答える。

  『強ぇけど、絶対勝てないレベルじゃない! チャドは……少しダメージを受けちまってるみてぇだが、まだ持つはずだ!
  石田も井上が治療している! いける、この勝負勝てるぞ!』

  「硬いだけじゃないさ。速くて強い!」
  「セロ!」
  「ナニィッ——!?」

  闇の陽炎に飲まれるような現象を一瞬見せ、圧倒的な速度で後ろに回り込むエツゥナイ。一護はそれに反応し左手の掌からセロを放つ。完全武装された鎧で目立った傷こそできないが、十数メートル後ろへと彼は吹き飛ばされる。

  「月牙天衝!」
  「黒い。漆黒だ——、認めるかよ! こんなの!」

  更に間髪いれずに極大サイズの月牙を解き放つ。その黒き片翼は、まるで全てを飲み込む闇のようで。漆黒の中にいた黒牙(ウルバス)達の誇りを踏み躙るかのようだ。個人的な感傷を専攻させエツゥナイは、怒髪天の形相を浮かべ咆哮する。

  「嘘……だろ!?」
  「嘘じゃないよ、現実さ!」
  「ぐっ!」 

  一護の放った全力の月牙を、爪から放たれた黒き三つの巨柱吹き飛ばす。膨大な霊力の奔流と苛烈な振動が辺りを支配する。夜の中に黒き霧が渦巻く。全力の月牙が弾かれた一護はしばし呆然とする。エツゥナイ自身もそれなりの体力を使っているのだが、ノーダメージとは少し驚いたらしい。黒き三叉の爪の攻撃を避け切れず、受けてしまう。 

  「一護!」
  「茶渡君! 黒崎はあれ位じゃやられない! 自分の敵に……」
  
  先決を撒き散らし落下していく知己を、心配げに見つめ茶渡は叫ぶ。いかに戦時とはいえ、同胞が傷つくのを平然と見ていられるような男では、談じてないのだ彼は。だが、戦線においてはそれが命取り。織姫の治療を受けていた石田が、茶渡を目の前の敵に集中させるたためにと声を荒げたのも遅く—— 

  威容を放つ漆黒の巨大馬は茶渡の目と鼻の先にいた。茶渡り息を呑む。防御も回避も間に合わない。確実に傷を負う。
 
  「その通りだチャド! 仲間を信じ目の前の敵から目を離すな。仲間とはそういうものだろう? 次の舞、白蓮(はくれん)!」

  その時だった。
  一陣の風が茶渡の硬そうな頬を撫で、聞き馴染んだ、だが懐かしい声が響いたのは。その声は相変わらず凛とした中に優しさがあって。頼りがいのある風情を漂わせている。技名の詠唱とともに肌寒いような冷機が体中を覆い、五体の穴という穴を針で刺されたような痛みが襲う。しかし、これは自分を狙ったものではないことを茶渡は最初から知っている。懐かしい仲間の救援。

  「朽木ルキア!」
 
  面差しもを見ずとも分かる。霊圧が彼女だと告げている。守る刃を渇望した親友、一護に力を与えてくれた張本人朽木ルキア。長年の付き合いだ。十年前から姿は少しも変わっていないが、そんなことは気にならない。なぜなら彼女が死神であることを知っているからだ。

  「久しいな、相変わらず昔が老け顔だったせいか、あまり変わって見えんぞ?」
  「ムッ! 朽木も相変わらずのようで何よりだ。この霊圧阿散井も来ているな?」
  「あぁ、一人で十分だといったんだがな。まったく過保護な奴だ。しかし、こうなってくるとあいつも連れてきて正解だったな」

  いきなりぞんざいな言いようの戦友に、苦笑を浮かべながら茶渡は挨拶を交わす。気分の悪いものではない。こういうやり取りができるのも長い付き合いならではだろう。しかし、再会を喜んだのはつかの間。すぐに二人は戦闘態勢に戻る。
  
  白蓮により凍った黒馬が氷を砕き、再び動き出す。

  「一護のほうには恋次が云ってる! 心配するな、我々はこの馬を何とかするぞ!」
  「ムッ!」

  茶渡とルキアは結託し黒き馬と向き合う。その時だ。思ったより深い傷で、簡単に体勢を立て直せないでいる一護にとどめの一撃を食らわそうと迫っていたエツゥナイが、吹き飛ばされたのは——

  「卍解狒々王蛇尾丸!」
  「ウワッ、ガハァッ!?」
  「よぉ、一護ッ! 苦戦してんじゃねぇか? 手伝ってやるぜ!」
  「苦戦なんて、してねぇよッ!」

  霊力の嵐の中から姿を現したのは、骨のように白い長蛇の姿をした斬魄刀と、赤い長髪をしたヤンキー風の長身死神だ。彼もまた一護達にとって深い縁のある男である。

  意外な増援に一護は顔を綻ばせ悪態をつく。

  「手強そうだな」
  「霊圧で察しはつくだろうが!」
  「一人じゃ駄目なら二人だぜ一護!」
  「足引っ張るなよ?」
  「お前がなっ!」

  悪口の押収をしながら、二人は最初から一蓮托生の念で、並び立つ。恋次とて戦闘部隊の副隊長の任につく猛者だ。相手の力量を測れぬ馬鹿ではない。冷静に敵に実力を分析し二人で戦うことを提案する。一護もそれに否を唱えることは泣く。

  ここに一護と恋次、ルキアと茶渡のダブルタックが成立した——

  「へぇ、これは少し厳しいかもしれないねぇ……まぁ、戦いは厳しいほど楽しいから良いけどさ!」
  「余裕ぶってやがれよ名前も知らねぇ誰かさんよぉッ!」

  「十大闘士“一番”(グラディエーター“ファースト”)エツゥナイ・サウザール。エツゥナイって呼んでくれ」
  
  余裕の態度で自己紹介するエツゥナイに青筋を立てる恋次。沸点の低い彼にとっては、なめられている気がしてならないのだろう。実際、素での実力差を把握したエツゥナイは彼を馬鹿にしているのだが。

  「六番隊副体長阿散井恋次だ! てめぇをぶっ殺す!」
  「君には興味ないなぁ——」

  護邸十三隊副隊長連の切り込み隊長と名高い恋次は、顔を高潮させながら叫ぶ。それを皮切りに三人全員が動き出した。




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