二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ブリーチ 夜を超える者達 一ノ一ノ五更新 8/29 ( No.32 )
- 日時: 2012/09/14 19:22
- 名前: スターク ◆FwuTUrVzG2 (ID: aiiC5/EF)
第一章「闇の軍勢」 第一話「現世異変」六頁目
「興味ぃ? 俺もてめぇみたいな優男にそんなの持ってねぇよ! なぁ、一護!」
「同感だぜ! たまには良いこと言うじゃねぇか恋次!」
「何? キモい、自分に酔ってたりする?」
相当な早口で言葉を紡ぎながら、恋次は狒々王の頭蓋の部分をエツゥナイにたたきつける。どうやら彼としてエツゥナイは、最初から気に食わない相手のようだ。生理的に受け付けないレベルだろう。攻撃にも一切の容赦が無い。更に一護も上段から手加減なしの全力の斬撃を放つ。
二人の全開の攻撃を、エツゥナイは冷や汗をわずかに浮かべ受け止める。恋次の攻撃は黒い盾を作り防ぎ、一護の剣は爪で受け止めた。しかし、両者に驚きの表情は浮かんでいない。なぜなら、最初から初撃は止められると想定していたからだ。
「お前こそ相当酔ってるぜ……悪い名前忘れた」
「全くだな。所でどうよ? この至近距離から全力の月牙受けたらさ?」
「……チィ! 吹きとべぇッッ!」
「そうはいかねぇなぁ! わりぃが体は頑丈なんだよ……」
「このッッ——」
攻撃を受け止められたのに、距離をとって次の攻撃を行わないことに訝るエツゥナイに、恋次は指を立て「馬鹿が」とでも言いたげな表情で挑発をする。さらに一護もそれに続く。彼らのやらんとしていることを悟り、エツゥナイは目を魅開き全力で二人を吹き飛ばそうと試みる。
しかし腕力の全て使い彼の攻撃に抵抗する二人は簡単には引き剥がせず、確実に霊圧は高まっていく。このままでは甚大な一撃を一挙に二回至近距離で受けることになる。焦燥感から額から大量の汗が流れ出す。
恋次の言葉を皮切りに、凄まじい赤色の閃光を放つ狒々王の口。それを見てエツゥナイは怯え動きを止める。一護の月牙天衝と恋次の狒骨大砲が炸裂し、その瞬間二人はその衝撃で吹き飛ぶ。黒と赤の霊圧が混ざり合いうねる。
「はっはっはっはっは、どうだ畜生!」
「油断するなよ恋次」
「……あぁ、まだ生きてるみてぇだな」
十秒近くたっても、轟音と衝撃による鳴動が鳴り止まない。大きな損傷を追った恋次は、荒い息をつきながら強がって見せる。しかし、エツゥナイの霊圧を察知した一護は、恋次に警告を放つ。そのときだった。攪拌し続ける赤と黒を切り払い、エツゥナイが現れる。彼は血塗れで片腕が吹き飛び、右肩から腰に掛けて大きな切傷が刻まれていた。
「はぁはぁはぁはぁ、まさか、君たちがここまでやるとは……完全に馬鹿にしていたよ。ガハッ! ホルオス!」
「ヒヒーン!」
「おい、まさか逃げる気か!?」
「心外だな。悪いがお迎えが来たみたいでね……」
肩で息をしながらエツゥナイは一、護達と正対する。エツゥナイは脳内で恋次達に対する評価を改めて、苦しそうな声で自分の力の副産物であるホルオスを呼ぶ。嘶きを上げ愛馬は主人の下へと駆け出す。そのままエツゥナイに突進したかと思うと、唐突に彼の中へと姿を消した。
訝り声を上げれない恋次に変わり、異空間の扉を開き逃げ自宅に入ったエツゥナイを制止しようとする。
その時だった。エツゥナイに劣らない強大な霊圧が十出現したのは。
「お迎えだと? 待てよ、何だよこいつらのこの強さ……」
「戦慄くなよ死神代行。今は大丈夫だ。これは一方的な殺戮じゃない。戦争だ。
ある程度の準備期間を与えてやろう。ついついやり過ぎて、死神代行たちを殺してしまわないか心配だったみたいだ皆ね?」
「嘗めたことを……」
黒い穴の向こうから解き放たれる凄まじい霊圧達を察知し、恋次が愕然とした表情を浮かべながらつぶやく。そんな彼の心情を察したエツゥナイは彼を安心させるようなやさしい口調で言う。その物言いはまるで一護達を完全に馬鹿にしているようで。そもそも、自らたち以外全てを格下と見下しているかのようだ。そんな軽蔑の感情を察した一護は、眉間にしわを寄せて震えた声で言葉を吐く。自分の積み重ねてきた戦いの歴史を軽く見るなよ、と。
「どうかな? 実際、君は死神の援軍や仲間の救援が無かったら死んでたんじゃないかな?
そもそも、これが僕の本気とは限らないよ? 負け惜しみとか言わないでほしいな?
僕も伝令役として色々制約があるのさ。ほら、こっち側じゃぁ死神代行や最後のクインシーなんか大戦力のはずだろう?」
「何が言いてぇ?」
「分らないかな? 強い奴がいないと戦争本番で詰らないだろう?」
「まるで絶対負けないみたいな物言いだな?」
しかし、エツゥナイの饒舌は止まらない。先ほどまで肩で息をしていたとは思えない滑舌の良さだ。どうやらホルオスを吸収した影響らしい。水を得た魚のように、取るに足らないことをしゃべり続けるエツゥナイに苛立ち、一護が額に青筋を立てながら本筋を問う。
それに対してエツゥナイはこれ以上ないほど簡潔に、本心を口にした。その完全に自分達を馬鹿にした態度に、恋次が声を荒げる。
「物言いじゃないな? 僕達が負けるなんてありえないんだ……」
恋次の批判にエツゥナイは余裕綽々とした顔つきで、絶対勝利宣言をした——
第一章 第一話「現世異変」 End
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