二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ブリーチ 夜を超える者達 一ノ二ノ二更新 10/17 ( No.39 )
日時: 2012/10/31 14:44
名前: スターク  ◆FwuTUrVzG2 (ID: aiiC5/EF)

   第一章「闇の軍勢」 第二話「黒き者達」三頁目


 「皆さん、座りましたね? では、話を始めましょう。分っていることもあるかも知れないですが、先ずはご静聴願いまス」
  
  全員が席に着いたことを確認して、浦原は厳かな口調で言う。
  一護達エツゥナイと戦った六人は、沈黙しうなずく。浦原はそれを了承と取り説明を始める。

  「彼らの名前は黒牙(ウルバス)。文字通り、術叱り姿叱り黒を貴重とした者達でス。八千年前、護廷がまだ組織だっていなかった戸魂界に突如現れ、不浄なる者達を排除すると宣言し、蹂躙したらしいでス。しかし、当時の卍解保持者数百名総出で彼らに挑み、八割以上の犠牲を出しながらも、彼らを夜獄(アティナイ)という空間に追いやることに、成功したそうです。そして、当時の鬼道の第一人者たる大禍海実時(おおまがうみさねとき)及び、鬼道の熟達者千名による禁術結界により、封印することで平和を勝ち手折った。それが、戸魂界と彼等の確執でスね。驚くことに当時戸魂界に侵攻した黒牙の数は数十に満たなかったらしいっス。詰まり、一人一人が卍解した隊長級の戦士を十人近く葬ったということになります。その圧倒的な力の秘密は、彼等が使役する黒神獣(ディアルロイアー)という眷属にあると私は考えていまス。そして、彼らを攻略する糸口も……」

  一旦説明を止め、浦原は鉄斎の注いだ玉露を口に含む。
  彼がカップを置くのを皮切りに、ルキアや石田もお茶を口にした。
  話が止んだのを確認して、一護が手を挙げる。浦原はそれを容認し、質問を許す。

  「本当にそれ以上知らないのか?」
  「残念ながら。黒神獣が、夜獄に生息している生物であることくらいですかね、後は。夜獄へ移動する方法も分りませんし、彼等の現在の勢力など知る由もないですしね?」
  「結局、化け物じみて強い連中だってことしか分らねぇじゃねぇか。何か、あいつらの弱点とか……」
  「死神代行よぉ? 余り、失望させてくれるなよ? 強くて弱点がねぇなら諦めるのか?」

  一護の顔は真剣だ。星十字騎士団よりも十刃よりも手強いだろう相手なのだ。怖くない筈がない。
  しかし、浦原は彼の感情を感じ取った上で、厳しく言う。知っていることは他にはないと。
  男の瞳はどこまでも真摯で、偽りなど欠片もないことが良く分る。
  一護は卓袱台を強く殴りつけ、嘆く。誰一人彼に声をかけることができない。誰もが彼の気持ちを理解しているからだ。
  しかし、そんな中かけられる声が有った。
  ——前置きは良いだろう? 浦原元十二番隊隊長——
  新七番隊隊長飛燕崎竜真(ひえんざきりゅうま)の声。音楽を奏でるような、美しい余裕に満ちた声だった最初とは違い、感情の滲み出た男らしい声音だ。本気で失望しているのだろう。
  
  「アンタが七番隊隊長さんか? でもよ、今までの戦いは、一回の戦いで弱点とか見えたり、展望がっ!?」
  「展望が見えた! 弱点が見えた!? そんなのは過去の戦いだから言えることじゃないか? 十刃との激突もクインシーとの戦争も……今回なんかより余程深い絶望からのスタートだったはずだ! 十年も経って日和ったか」
  「でも、でもよぉ! 今まで一番強い奴等なのは……」
  「確かに平均すれば強いわな。皆、ウルキオラやハーシュヴァルツクラスだろう。だが、藍染やユーハバッハと比べたら皆マシだ。あいつ等より上が十人も二十人も居るなら別だがな」
  「あいつ等、いつでも進軍できるんだぞ?」
  「確かにな。その通りだ。引き換え俺達は、夜獄には行けない」
  「分ってるならもっと……」
  「浦原。地下修練所を借りれるか? この腑抜けを叩き直す」
  「あぁ、修練所ならすでに開いてますのでっ!」

  待合室から現れた百八十センチメートル程度の痩せ型の男を一護は見つめる。
  白髪のロングストレート、青の瞳をした爽やかそうな印象を受ける美男だ。
  七番隊隊長飛燕崎竜真だろう。彼を睨み付け、一護は声を荒げながら、感情を吐露する。
  その嗚咽に竜真は耳を済ませながら、淡々とした口調で言い返す。何時だって、危機だった。
  まるでその場に居たかのようにすべてを見透かし、エツゥナイより強い者がそうそう居るとは思えないと言う結論を含ませて。だが、一護が危惧しているのはそこではなかった。
  今の状況で、星十字騎士団より強い輩に急襲されては戸魂界は滅亡する。一護にはそれが見えていたのだ。
  その懸念を一瞬で肯定する竜真を見て、一護はいっそう怒気を強める。
  分っているならなぜそんな冷静で居られるのだと、検視を剥き出しにし叫ぶ。
  すると竜真は言葉では納得させられないと思ったのか、一護の顔面を掴み瞬歩で走り出す。
  浦原の了承を得た竜真は、一護を無造作に運びながら、地下へと進んでいく。
  そして、開けた場所に出ると彼を投げ捨てた。

  「ってぇー! くそっ、やりやがったな」
  「良い反応じゃねぇか? さっきより余程強そうな表情だぜ」
  「あんた一体何をしたいんだ!?」
  「今の護廷を昔の護廷と一緒にして欲しくないだけさ」

  開けた視界で、一護は周りを見回す。そこは思い入れ深い場所。浦原喜助が、一護を鍛え上げるために作った空間。殺風景だが、完全防音機能と霊圧遮断装置が施された、非常に多機能かつ多目的な場所なのだ。一護にとって、多くの思い出がある場所でもある。
  一護はここに運んたということは、何か大きな力を使う気なのではないかと危惧し、竜真を睨む。
  竜真は既に抜刀している。唾のないスマートな造りの斬魄刀だ。臨戦態勢にあることを察し、一護は竜真を非難する。それに対し竜真は、厳しく言い放つ。

  ——俺達の強さを過小評価しすぎだ、と。彼の言葉にはそんな感情が強く滲み出ていた。

  
  
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