二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D.gray-man -天空の鏡- ( No.19 )
- 日時: 2012/07/07 20:54
- 名前: ラン (ID: qs8LIt7f)
第四夢 -君の名前を-
「確かめに行く?アイツがそうなのか」
「......ううん。いいよ」
「なんで?」
「知らない方が良いと思うから」
「...なんで」
「人は悲しい記憶は覚えて。楽しい記憶は忘れるんだよ」
「...」
その子が本当にあの人なら。きっと傷ついてしまうかもしれない。触れて欲しくない過去を触れられるのは、何より悲しい事だから。切ない事だから。苦しい事だから。
「じゃあ、部屋に戻るね」
「...わかった。俺も戻る」
部屋は近かった。ハルナの右に空部屋。その右がカナタだった。もしかしたらその空部屋が、あの少年の部屋になるのかも知れない。そう思うと、ワクワクする。
「じゃーな」
「バイバイ」
互いが部屋に入った。カナタの部屋は、何もかもが黒い。逆にハルナの部屋は、何もかもが白い。白と黒を混ぜれば灰。隣の部屋の次期住人こそ、灰人。
「...」
35年前のある日の春。イギリスの一つの家庭に双子が産まれた。柔らかく微笑む女の子と、奇怪な左腕を持つ男の子。男の子の左腕を調べても、原因はわからなかった。両親は不安のまま男の子を育て、温かく女の子を育てた。
しかし、両親は男の子を恐れた。近所の人々から気味悪がられ、ついに力が底つきた。奇怪な腕を持つ双子の男の子を捨てた。
両親はハルナを一人娘として育て、ハルナにも一人っ子だと言い聞かせた。それでもある日、ハルナは見つけた。産まれたときに撮った写真を。隣には、父に抱えてもらって笑っている男の子がいた。それが少女の双子の兄だった。
コンコンという音と共に、白髪の少年が入ってきた。さっき入団してきた人に間違いない。
「あれ...?あ、すいません!」
「?さっきの...」
「あ、アレン・ウォーカーです。よろしくお願いします」
「ハルナ・ラフェインです。よろしく」
アレンはラフェインという言葉に違和感を感じた。どこか聞いたことのある、懐かしいような切ないような。そんな感情に押しつぶされた。
ハルナもまた、アレンという言葉に反応した。懐かしい名前。自分の大切な人の名前。
「えっと...ボクの部屋知りませんか?」
「...迷ったの?」
「......はい」
「私の右の部屋だと思うよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
笑顔と共に、申し訳なさそうな顔をしたアレンが部屋を出ようとした時、ハルナはアレンの元へ駆け寄って止めた。
「どうしたんですか?」
「ちょっといい?」
「はい...」
「ネアって知ってる?」
「え...!?」
アレンは驚いた。急に知りもしないものの名を言われて。しかも、なぜそんな事を聞いてくるのか、理解できなかった。
「いえ...」
「...そっか。じゃあね」
「はい」
ハルナが悲しそうな顔をしたのに、アレンは気付いた。でもそれに触れず、自分の部屋へ向かった。