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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- それはただ一つの美しい、 / 序章 . ( No.3 )
- 日時: 2012/06/30 14:05
- 名前: 香月 ◆uDMe5UGKd6 (ID: u7NWpt/V)
少女は、独りぼっちだった。
それは今も昔も変わらず、少女はその現状に満足していた。何の問題もなかったのだ、何の問題も。
少女が独りじゃなくなったのは、お節介な少年が傍に出来てからだ。
少年との日々を幾月、幾年と重ねていくうちに、少女は独りになるということを忘れてしまった。独りじゃなくなった。それは、嬉しく、幸せなことなのだ。
——否、幸せなことだったのだ。
けれど、少女の愛する少年は居なくなってしまった。少女を置いて、何処かに消えてしまった。
がらんとした部屋に残された一枚のメモ。告げられた現実。
少女は泣いた。泣いて泣いて泣いて、喚いた。少年は戻ってこない。その事実だけが、少女の頭に入った。メモの裏側、ひっそりと書かれた少年の想いに、少女は気付かないままだった。
そして少女は、ひとつ、大事なことに気付かなかった。
少年は死んでしまった。
少女は何も知らないまま、少年の愛したサッカーを憎み、少年を嫌い、大人になった。
年月を経るごとに募る憎しみだけが少女を動かした。
数年経てば、自分が何を憎んでいるのかも忘れてしまった。少年のことは、記憶の片隅にしか残っていなかった。
心のなかに残ったのは、サッカーに対する憎しみだけだった。
少女はもう、女性という存在になった。
やがて女性には、一人の家族ができた。独りぼっちではなくなった女性は、たった一人の家族である、少女を可愛がった。
「——美宙、」
少女はサッカーボールに手を伸ばす、
女性はそれを、止めることはしなかった。
(( それはただ一つの美しい、 ))
———紛れもない愛情だったはずなのに。
/・・
000.プロローグ
少年と少女が主人公ではなく、女性と少女が主人公です。
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