二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

    それはただ一つの美しい、 / 第一章 . ( No.8 )
日時: 2012/07/01 12:03
名前:  香月  ◆uDMe5UGKd6 (ID: u7NWpt/V)






 林檎の昔馴染みである吉良星二郎の、お日さま園の、エイリア学園というものの、ジェネシスというものの。
 そこの、キャプテン。——基山ヒロトの笑顔が、美宙は嫌いだった。
 美宙よりは美しくないけれど、それでも綺麗なヒロトの髪は、美宙と同じ赤色だ。瞳の色こそ違うが、どことなく美宙とヒロトは似たような雰囲気をしている。
 美宙はそれが嫌だった。
 ヒロト自体は嫌いじゃない、好きでもないけれど、でもやはり、兄妹のような、そういう存在としては信頼しているほうだとは思う。
 だけどヒロトと似た髪、顔立ち、それが美宙は嫌で仕方が無かった。——似ていれば兄妹としか見られないのだから。
 恋とは違う、それでもヒロトに特別な感情を抱く美宙は、ヒロトの笑った顔が嫌いだった。嫌いになるしかなかった。彼に似ないようにするために、必死で顔を背ける。
 それを知ってか知らず、か、ヒロトは何時までも笑顔で居るのだけれど。

「……おはよう」

 取り敢えずは、朝食だ、と。
 少々不機嫌そうな顔を作り、美宙は数分前のヒロトの挨拶に少々低めの声で、やっぱり不機嫌そうに返す。
 ヒロトはそれを意に介さず、どうやら既に食べ終えていたらしい朝食の皿を下げてから、じゃあ俺は試合があるから、とひらひら片手を遊ばせて玄関を出ていく。
 それをぼんやりと見送りながら、何時の間にやら用意されていた朝食の前に座り、手をあわせる。林檎はにこにこ笑顔で、何時も通りブラックコーヒーを手にしながら、どうぞ、と促した。
 いただきますと呟いて口に運ぶトーストは、少しカリッとしていて、中身がふんわりした、林檎の焼いてくれるトーストの味のままだった。
 食事を一段落させて、美宙はいつものようにリビングをぐるりと見渡す。最早習慣になりつつある、この行為に意味はない。ただ、リビングを見渡したときに、視界にちらりと入る、綺麗な顔の女性と幼い美宙の写真は、美宙を酷く安心させた。
 母親ではないと林檎は言うけれど、それが何より母親に近い存在であることを、美宙は知っている。
 林檎は美宙の視線に気づきながらも、何も言わずににこにこと微笑んでいるだけだ。
 しかしやがて美宙は興味を無くしたかのように視線を外して、朝食を再開した。半分ほど開かれた窓から、時折、爽やかな風がふわりと入ってくる。

「……御馳走様でした」

 ぱちん、と両手を合わせて言う美宙にお粗末様でしたと笑んでから林檎は食器を下げようとする美宙を押さえて、私がやるよと笑む。
 それから不意に思い出した様子で、こんなことを言ったのだった。

「今日、雷門とジェネシスの試合よね。——美宙、行ってきなさいよ」
「、何で私が」
「……父さん、何か仕出かしそうじゃない。じゃあこれは私からのお遣い。父さんに伝言、頼むわね」

 そう言われてはもう嫌だとは言えない。
 伝言の書かれたメモを押し付けられては、美宙は緩く苦笑浮かべ、服装を整えて家を出る。持っているものはメモと飴だけだ。
 何処で試合があるんだろうなんて思う前に、家の前には車が止まっていた。スーツを着た、(日本人の)宇宙人だらけの中に珍しい、綺麗な女性に林檎かどうか確かめられたが、ふるふると首を横に振れば、今度は美宙かどうか確かめられたので頷いた。
 女性は何やらスーツを着た他の男達と会話をして(美宙は聞いてなかった)、美宙に車に乗るように促した。
 車内での無言を気まずく思いながら、嗚呼、何かありそうだな、なんて胸騒ぎに美宙は酷く焦燥を覚えたのだった。








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 001.第一章
 次は漸くキャラが出るね、! まだヒロトしかでてないorz.