二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

    それはただ一つの美しい、 / 第一章 . ( No.12 )
日時: 2012/07/03 17:44
名前:  香月  ◆uDMe5UGKd6 (ID: u7NWpt/V)





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 星野美宙という人間を、どうやら甘く見ていたらしい、と緑川は眉を寄せる。
 それは嫌悪感でもなく、不信感、——それより、大きな違和感を覚えたのだ。
 星野美宙という人間は、緑川のなかではいつも笑っているか無表情で、それでもどこか楽しそうに気楽に生きている人間。

 けれど、目の前で試合を見ながら、冷たい声でそう述べた星野美宙という人間は、緑川の知る人物ではなく、どこか額縁の向こうにいる、そんな気さえしてきた。

 ぴりぴりした雰囲気の美宙は黙り込む緑川を横目で見詰めて、再度唇を動かした。

「幻滅した、? 私がこんなこと言うと思わなかった、って」

 そうじゃない、と言いかけた口を閉ざす。
 言いきれるはずもない。確かに緑川のなかで、幻滅、というよりは意外、とは思った。けれど、それよりは、美宙という人物をどうやら信用しきっていたらしい自分が許せないという気持ちが大きく緑川の瞳を揺らがせる。
 美宙は何も言わず俯く緑川にゆるりと口角を釣り上げて微笑む。気にしてないというような笑みに、緑川は今度こそ黙りこくった。

「嫌いよ、サッカーなんて。母さんを壊したのはサッカーだもの」

 ツツ、と、目の前に広がる、試合を見下ろす為の窓ガラスを指の腹で撫でるようになぞり、美宙は溜息を吐く。

「ほ、ほしの、」
「小さい頃、貴方達と一緒にサッカーをしていたときは好きだったから安心してね。サッカー大好き、な星野美宙のイメージは壊さなくて良いよ? 今の発言、聞かなかったことにしてもいいし」




 そう述べた瞬間————不意に、緑川は美宙を逃がさないと束縛するように、両手を窓ガラスに押し付ける。目前に迫る緑川の顔は酷く怒っているような、哀しそうな顔で美宙は息を呑み込んだ。
 恐怖からか、僅かに揺れる肩を見て、緑川は小さく苦笑してから、ぎゅう、と大切なものを離さんとする子供のように美宙を抱き締める緑川の体温は温かく、美宙はかあっと顔を赤く染めた。




「馬鹿だなあ、……星野はサッカー、好きだろ? 俺が一番知ってるけどな、星野、あのときいっつも練習してたもん」
「……どうかな」





 既に試合はハーフタイム。美宙の肩越しに見える試合の点数。緑川はゆっくりと瞳を伏せた。








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 001.第一章
 緑川さん×美宙風味になってr…緑川さんはでしゃばります。此れからもっとでしゃばります(。今回は美宙に圧される緑川さんが頑張る話を書いてみた。…しかし何を書いているのか自分でも分からなくなった。←