二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

    それはただ一つの美しい、 / 第一章 . ( No.14 )
日時: 2012/07/05 18:49
名前:  香月  ◆uDMe5UGKd6 (ID: xJkvVriN)
参照:  \ 赤司様はゼッターイ /






 ♯ side 緑川.




「美宙、」

 ねえ、美宙。
 俺が君のことを名前で呼ばなくなったのは何時からかな。

「……みど、りかわ?」

 ごめんね、ごめん。
 俺が守れていればよかったのかな。
 視線の先、試合が動く。蟻のように小さな選手が、ボールを蹴り合い、激しい攻防戦を繰り広げている。
 スピーカーから聞こえる実況の声に、ぞくり、と背中が凍るほどの寒気に襲われた。こんな試合、実況なんて要らないじゃないか。
 この実況は機械的な音声で、どうやらこの部屋のみに適用されているらしく、外ではきっと何も言ってないのだろう。嗚呼、それとも、何処からともなく現れた実況担当が何かを叫んでいるのだろうか。
 ちらちらと動く赤色。美宙の体は冷え切り、その声も冷え切っていた。

「ごめん、美宙」

 今だけ、だからさ。
 美宙を護ったような気分で居させて。ちっちゃい頃みたいに、今みたいに、少しだけ抱き締めさせて。ねえ、美宙、大好きなんだ。
 ——君にこの気持ちが届くとは思わないけれど、それでも。

「……試合、見えないじゃない」

 俺の肩に顔を乗せて美宙はきっと、困ったように笑っているのだろう。

「、雷門が勝つよ」

 そう言って笑うと、美空は肩を揺らして、其れから有り得ないなんて小さな声で呟いた。
 美宙も結局父さんが大好きなんだろう。美宙は父さんたちが負けることを、否定されることを怖がっている。しかし既に得点は——……

「緑川、かえろっか」

 まるでこの先を否定するように言う美宙。
 俺はうん、そうだねなんて頷いて、そっと美宙から体を離した。

 此方が悲しくなるくらい、痛い笑みを向ける美宙に気付かないふりをして。俺は美宙の手をぎゅうっと握った。




 ♯




 無邪気に笑う彼等から逃げるようにボールを追いかけていた。
 大好きなものにさよならを告げた。

 あの日、確かに大事なものは手放したと云うのに。



 「卑怯だよ、」



 ( この胸を苦しめる、 )








 /・・
 001.第一章
 待て、どうしてこうなった。緑川の独白ぽいな、うん。緑川さんは美宙が好きでも良いと思った。反省も後悔もするわけがない(。ヒロトさんを早く出したい。よし、次は涼野たちを出そう(e。