二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第一幕 青藍【せいらん】 ( No.3 )
日時: 2012/07/05 22:09
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

ある日の昼下がり、桂は拠点の一室で本を読んでいた。
外には雨が降り、太陽の光が遮られて薄暗いのだが、桂は傍らに置いた行灯の光を頼りに
文字を追っていく。
雨音が普段の喧騒を吸い込み、町はいつもより静かだった。
桂が頁をめくり次の章に入ろうとした時、突然その静けさは破られた。
「桂先生!」
バタバタという足音とともに桂のいる部屋の障子が乱暴に開かれた。
「騒々しいぞ貴様ら。新岡にいおかはいつものことだが緒方、お前まで廊下を音を立てて走る
 など珍しいな。」
入ってきたのは二人の人物。
一人は四角い眼鏡をかけ、白衣を着た青年。もう一人は赤い髪を首の後ろで結い、青い作務衣のようなものを着た青年だった。
二人とも息を切らせていて、かなり急いでやってきたことがうかがい知れる。
「ご報告したいことが!」
緒方と呼ばれた白衣の青年の言葉に、桂は眉をひそめる。
普段大人しく、大声を出すことなどほとんどない彼がここまで焦ることは珍しい。
何か重大なことでもあったのかと、桂は読んでいた本を閉じた。
「どうした。」
二人の方に体を向け、少し目つきを鋭くして尋ねる。
緒方は一度深呼吸をして息を整えると、いつもと同じ静かな声音で言葉を発した。
「                       。」
ガタンッ!
桂が立ち上がり、その勢いで文机の上に置かれていた湯呑が倒れた。
湯呑から零れた液体が本の表紙を濡らすが、桂の目にその様子は映っていない。
「・・・・それは本当か・・・?」
「はい、裏はとれています。十中八九間違いありません。」
少しの沈黙の後の桂の言葉に赤い髪の青年、新岡が答える。
桂は目を閉じてしばしの間まぶたの裏の闇を見つめた。
その黒の中にあの時の惨状が映し出され、当時の憎悪がよみがえる。
その黒い感情を無理矢理ねじ伏せて、桂は目を開いた。
「緒方、新岡。お前ら二人で銀時と高杉と辰馬に連絡してここに呼び出せ。但し、呼び出しの内容まで は言うな。」
高杉あたりが単騎で幕府に突っ込みかねんからなと続けると、緒方は苦笑交じりに分かりましたと答え、
新岡はハイ!と返事をしてどこかへと走って行った.
緒方もそれに続いて部屋を出ていく。
自分ひとりとなった部屋の中で、桂は懐に手を入れた。
「————、松陽先生・・・。」
懐から取り出したのは深緑色の教本。
その表紙に刻まれた刀傷と血痕をなでながら呟いた師の名前は、雨音の響く部屋の中に溶けていった。


オリキャラ №1
緒方総次郎(おがた そうじろう)
髪色・黒
目色・こげ茶
青嵐隊副隊長兼医療班主任
髪は沖田くらいの長さで、前髪は真ん中分け。
白衣で眼鏡で童顔。そのため年相応に見られたことがない。
元々内科医だったが桂の下で活動する内に外科も覚えた。(もちろん攘夷志士
なので外科医の免許は持ってない。)
普段は部屋(通称実験室)に籠り、怪しげな実験薬を作っている。
戦闘はあまり得意ではないと言いつつ、その実力は沖田をも凌ぐ。
得物は飛び道具(主にメス)と自作の薬品。
好きなものは実験と医学書。嫌いなものは虫。