二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.25 )
日時: 2012/07/28 15:11
名前: 黎 (ID: .uCwXdh9)

「「萌香あああああああああああああああああ!!」」
 赤司と萌香の声が重なった。
(く……!)
 萌香は真っ逆様に落ちていく。




—ーーーーいざとなったら私が守るから安心して。萌香ちゃんーーーー



 ダッと萌香のもとに走り出している人間がいた。
「萌香ちゃんっっっ!!!」
 それは、菜々だった。
(菜々…?)
 萌香は今の状況を呑み込めず、静かに目を閉じた。




 ドォォォン!!!!

 大きな衝突音が響き渡る。
「…あれは…!?」
 赤司はギャラリー席から身を乗り出すようにして、様子を見ていた。


「・…!」
 萌香に全く衝撃と痛みは全くなかった。
 だが。
「大・・丈夫…?萌香…ちゃん……?」
 萌香の下敷きになるように菜々が倒れていた。
「菜…菜々…?どうし…て…?」
 菜々は萌香を受け止めようとして、バランスを崩し、頭を強く打ちつけて倒れてしまったのだ。
 菜々の頭からはツウッと血が流れていた。
 カタカタと顔を青ざめ、そんな光景に震えている萌香に菜々は、
「…言ったじゃない…。いざとなったら…私が・・助けるからね・・・って・・・。」
 萌香の頬にスッと手を寄せた瞬間ガクッと菜々の意識が途切れた。
「菜々ァ!!」
 何も言えない萌香の代わりに吉美は菜々に近寄る。
「レフェリータイム!!」
 審判がピピーッと笛をふく。
 萌香のベンチ側からは、
「菜々ちゃん!しっかりして!…急いで救急車!」
「は、はいッ!」
 という監督たちの声。
 萌香はその場から動けなかった。








 そして、菜々が救急車に運ばれた後、残り時間1分だったが、試合を再開した。
「…萌香ッ!」
「ッ!」
 バシイイン!とボールを吉美から受け取る。・・が、動きはいかんせん悪くなっていた。
「萌香!」
 チームメイトからパスの要求がきた。
 萌香は仲間に向かって、パスを出した。
「あうっ!」
 ガンッと鈍い音がした。
 萌香はハッとしてチームメイトを見た。どうやらボールが頭にあたってしまったようだ。
 何とかボールは相手チームにわたらずに済んだが、もちろん仲間は怒っていた。
「ちょっと萌香!しっかりしてよ!」
「ご・・ごめ・・。」
 ピピー!
「試合終了!」
 1分間、何もせずに終わった。


 萌香はフラフラと危ない足取りでベンチに座る。
「萌・・・。」
 吉美が声をかけようとしたとき。
「ちょっとお〜。白銀さん〜。」
 闘気0の萌香に美羽はかわいらしい小走りで近寄る。
「自分のチームメイトにあんな大怪我させるなんて・・・。ひどくありません〜?」
 ギッと吉美は美羽をにらみつける。
「ふざけんなッ!てめえがあんなとこにいなかったら萌香だって無理に着地しなくて済んだし、菜々だって…あんなことには…!」
「やだあ〜。変な言いがかりはやめてくださる?」
 クスクスと皮肉交じりに美羽は笑う。
「てめえどこまでッ!」
 グッと吉美は美羽の胸倉をつかむ。
「きゃあ〜〜〜〜!」
 また、わざとらしい悲鳴をあげる。
 奈波小メンバーも、
「ちょっとお!美羽に何すんのよ!」や、「これだから野蛮人は!」というわざとらしい中傷を吉美に浴びせる。
 だが、それは吉美にとってヒートアップさせる道具にしかならず、
「上等よ!野蛮人は野蛮人らしく暴れてやるわよ!!」
 と、美羽になぐりかかる。
「い、いやあ〜〜〜!」
 これにはびっくりしたのか美羽も本物の悲鳴をあげる。
「やめろ。」
 荒々しいフインキを突き刺す声が凛と響いた。
「あ・・赤司君…!?」
 意外すぎる人の登場に思わず胸倉をつかんでいた美羽をパッと放す。
 美羽はゴホゴホと咳をすると逃げ帰るように奈波小ベンチに戻って行った。
「…お前たちは勝者だ。お前たち勝者が敗者にかかわる必要なんてないだろう。…キャプテンなら感情に流されずよく周りをみろ。」
 赤司に言われて吉美はハッとし、周りを見渡した。
 みんな不安そうな顔で吉美を見る。
「・・・ごめん・・・。」
 いつの間にか赤司は萌香の隣にいた。
「…萌香は俺に任せろ。ほかのチームメイトのことは沢村。ちゃんとやれよ。」
 とだけ言い、赤司は目に力のない萌香を肩組しながら歩き出した。


「萌香……。」
 吉美は心配そうに萌香の背中を見送った。