二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.259 )
日時: 2012/09/18 00:12
名前: 黎 (ID: 6Bgu9cRk)

 何かが頭の中をかき乱す。
 忽然と萌香はそう思っていた。
 けど、萌香にとって苦しみより、悲しみのほうが深かった。
 1つ目は、自分が娘としてではなく、白銀琉香のクローンとして扱われてきたこと。
 2つ目は、自分の幼馴染赤司征十郎。
 彼は今まで自分をどんな目で見てきたのか。今まで言った言葉も全部萌香ではなく琉香に言った言葉だったら。
 その恐怖が萌香を苦しませる。
(…私は生まれてよかったのか?)
 その思いだけが萌香の心を満たしていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ピーッ!第一段階始動。16分後に第二段階を開始します。』
 無機質なアナウンスの声が廊下内に響き渡る。
 その頃、赤司達一行は、5階の階段を走っていた。
「…始まったか・・・ッ!」
 水晶は唇が裂けるばかりの勢いでつぶやく。
「えっ!?萌香、どうなっちゃうんですか!?・・・死んだりしませんよね!!?」
 桃井は泣きだしそうに叫ぶ。
「…黙っとれッ!まだ第一段階だ!…けど、どっちにしろ急がなければならないことには変わりはない!」
「何かあるんですか?」
「たぶんな。あのくその書物をこっそり読み荒らしたことがあってな。その時の第一段階は記憶を除去される。」
 水晶はギリリと歯ぎしりをする。
「なんで記憶消さなきゃならねーんだよ!?」
「完璧なる白銀琉香になるためには、今までの白銀萌香の記憶が邪魔だからだ。たとえるならゲームをセーブしたいのにセーブできなくてわめく子供と一緒って話だ。」
 青峰の怒号に赤司は冷静に答える。
「だからあのくそは嫌いなんだ…。わがままな子供みたいでッ!」
 水晶は語尾を強くした。
「水晶さん。萌香さんがどこにいるかわかりますか?」
「ああ。大規模な実験ができるとしたら、この5階の中央フロアだけだ。」
「…着くぞ!」
 赤司の声の方向にみんなは視線を向ける。
 確かに、いやな空気が漂っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う・・・。ああ・・・。」
「あと…。もう少し。もう少しだからな・・・。琉香・・・。」
 海東はパソコンを操る。
—父さん!—
 
 その時、ガタンッ!と海東はパソコンに座っていた椅子から滑り落ちた。
「く・・・ッ!わずらわしい・・・・・・ッ!」
 海東は懐から銃を取り出した。
 今の声は海東の記憶の中の萌香の声であって、いまの萌香の声ではない。
 だが、夢と現実の差がつけられないほど海東は追い詰められていた。
「…半分死んでもらう…!失敗作ゥゥゥゥゥゥゥゥううううっ!!」
 海東は引き金を引こうとした。
 だが。
「…・・・・・・・・・ッ!」
 わずか0,5秒海東はひるんでしまった。が、また引き直す。
「もうお前は必要ないッ!!!」
「「「「「それはテメエだああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」」」」」
 海東が言い終わった瞬間、水晶、青峰、黒子、赤司、桃井は怒号を上げながら、中央フロアの窓ガラスを割って入ってきた。
「・・・来たか。」
「早く愚妹から離れるといい!!親ばかッ!!」
 プルリ、と萌香の瞼が動いた。




 運命はどちらに傾くのか。