二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.262 )
日時: 2012/09/18 15:36
名前: 黎 (ID: 6Bgu9cRk)

 カタン。
 小さな物音が経った。
 それは萌香が揺らり、と気味悪くたった音だった。
「萌・・・香…?」
 桃井は萌香に近づこうとした。
 しかし。
 パアンッ!という音があ桃井の手の甲に響いた。
「痛ッ!」
「おい萌香何してんだよ!」
 手の甲を押さえた桃井に青峰が近寄る。
「何かおかしい気がします・・・。」
「黒子。俺も同感だ。」
 赤司と黒子は萌香を警戒した。
 萌香はゆっくりと目を見開いた。
「「「「「!?」」」」」
 みんなは驚いた。
 なぜなら、目を見開いた萌香は人間の顔つきをしていなかった。
 顔色は青ざめ、目の色は眼球の奥まで見えそうな透明な水色。
 それはもはや、ロボットのようなありさまだった。
 そんな萌香が口を開いた。
『…警告。実験責任者以外の人間を発見。排除の要求を申し出ます。』
 機械のアナウンスのような声。
 もう、優しい萌香の声はどこにもなかった。
「しっかりしろ!萌香!」
 水晶は萌香に駆け寄ろうとした。
 すると。
 バキュンッ!
 海東の銃から発砲する音が水晶の横を通り過ぎる。
「俺の邪魔はさせない…!」
「ふざけんな!琉香はもういないんだよ!」
「だから俺はもう1度あの子を生き帰させる!」
 ギッと海東と水晶は睨みつけた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「萌香!帰ろう!私も、青峰君もテツ君もムッ君も、緑んもきーちゃんもあかりさんも、・・・・赤司君だって待ってる!だから一緒に帰ろう!」
 桃井はまた萌香に手を伸ばす。
「萌香さん。またバスケやろうって言ったじゃないですか。」
 黒子も笑顔で微笑む。
「萌香。俺は・・・」
 赤司が何か言いかけた時だった。
『こ・・「来ないで。もう・・かえって。」
 機械音のような声が消え、萌香の声に戻る。
「萌香さん・・・。」
「私…もう帰れないんだ…!」
 ポロリ、と萌香は静かに1筋の涙をこぼす。
「もう…分かったんだ。私はしょせん作り物。父さんや母さんは私ではなく琉香を望んでるって…。それに征十郎だって・・。」
「違う!」
「違わないさ!」
 赤司の言葉をかき消すように萌香は叫んだ。
「…だからもう私は琉香になる。いままでテツヤやさつきや真太郎や敦や涼太が見てたものは全部ニセモノ・・・。」
「萌香・・・。」
 桃井は口を手で押さえる。
「こんなに悲しいのも、つらいのも、全部作られた偽造品・・。」
 ポロポロと萌香は涙を流す。
「もう、いやなんだ。…だからもう帰ってくれ…!」
 赤司はじっと萌香を見据えていた。




—琉・・・香…?—
—…?違うぞ。萌香だよ。—
—…そうか。初めまして萌香。よろしくな。—
—…ねえ。—
—なんだ?—
—父さんと母さん仕事であまりいないんだ。・・だからずっと一緒にいてくれる?—
—・・・ああ、いいさ。ずっといてやるよ。




これからもずっとな…。—