二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.28 )
日時: 2012/07/29 14:49
名前: 黎 (ID: .uCwXdh9)

 あの奈波小との試合から1週間。
 勝ったにもかかわらず、チーム内で不協和音が生じていた。

・・・・・・・・・・・・・
「…か。萌香!」
「うわッ!…なんだ。吉美かあ。」
 休憩中、ボールを持って突っ立ている萌香に吉美はあきれ顔でみつめる。
「…最近ずっとそんな調子だけど大丈夫?それに3週間後に試合だって・・・。」
 試合、という言葉を聞くたび萌香はうなだれてしまう。どうしてもあの時の光景がフラッシュバックでよみがえってしまうのだ。
 萌香は意を決してボールをキュッと抱きしめながら、
「…あのさ。…菜々は?」
 懺悔するように吉美に言った。
 菜々はあの試合からまだ目を覚ましていなかった。
 すると、吉美はニッと笑うと、
「監督がさ、今日の朝、菜々目ぇ覚ましたって!」
 と、晴れやかに言った。
「…ほんと?!」
 萌香は半分うれしい、半分悲しいといった表情を浮かべた。
「うん!だからさ、部活終わった後でも行っておいでよ!菜々も喜ぶだろうしさ!」
「・・・ああ。」
 萌香は微笑した。
 すると。
「吉美〜。早く部活再開させなよー!」
「あ!うん!」
 チームメイトの数人が吉美に近寄る。
 チラリ、とチームメイトの1人は萌香を見ると、
「…なんで真面目に練習やんないのよ。」
 と、冷たい声で萌香につぶやいた。
「ちょっと…!」
 吉美がとめようとするが、ほかのメンバーも、
「やっぱり!?そう思ってた!?私も思ってたの!」
「エース様は練習しなくても天才なので勝てますってやつ!?」
「そういうのむかつく!」
 と、萌香を責めたてる。萌香は黙ったままだ。
「…みんな、外周10周走ってきて。」
 冷たい口調で突き放すような吉美にみんなは、
「え〜?なんでよ?」
 と怪訝な顔を吉美に向ける。
「いいから行きなさいッ!!」
 吉美の覇気に押されたのか、ぐちぐち言いながらもみんなは外へ走り出した。
「…吉美やっぱり私は・・・。」
「今日は休みな。監督からは私が言っとくから。」
 吉美はポケットからごそごそと紙を出し、それを萌香に渡した。
「これって・・・。」
「そ。菜々の病院の地図。ちなみに、小笠原総合病院だから。」
 と言って吉美は練習に戻ろうとする。
「…ありがとう。…やっぱり吉美は優しいね・・・。」
 と萌香は律儀に吉美に礼をする。
 吉美はふっと笑っていた。
「そういう言葉は赤司君という彼氏に言ったほうが彼も喜ぶと思うけど?」






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「あともうちょっとで着くな・・・。」
 フウと一息つく。
「萌香。こんなところでどうした?」
「ああ。病院に…ってうわあッ!」
 萌香を驚かしたのは、いつも通りの赤司君。
「病院?ああ、佐々木のとこか。」
 クールに状況を理解する赤司。
 萌香は顔を赤くしながら、
「…1週間前のことは…感謝してる…。あのときはちゃんと礼をいえなかったからな・・・。」
 と、もじもじしながら言った。
「ああ。あの肩組の時か。あのときはああしてしまったが、今となれば、俗にいう、お姫様抱っこでもよかったな。」
 と、赤司はサラリと核爆弾発言をした。
「ななななな何を言ってるんだ!馬鹿者!!」
 萌香の顔色がヒートアップした。
「そんなに照れることじゃないだろ。オレと萌香の関係はそういうものだろ。」
 と、赤司は至極当然に言った。
「私は初めて聞いたぞ!?そんなドロドロしてそうな関係!…昼ドラかッ!?」
「昼ドラじゃない。たとえるなら、ロミオとジュリエットだ。」
「あれ最後死ぬだろ!?」
 あはは、といつの間にか笑っていた。
「・・・それでいい。」
「え?」
 突然赤司に言われた言葉。
「おまえは笑ってろ。そのほうが似合ってる。」
 と、赤司は微笑する。
「ああ・・・。」
 萌香もどこか満足そうだった。
「俺は用事があるからここで残念だが退散する。」
 赤司は萌香に近づいた。
 そっと、赤司は萌香の額に口づけた。
「…お前が落ち込まないようにするおまじないだ。」
 と勝ち誇ったように赤司は薄く笑い、歩き出した。
「私は強いんだぞ!」
 と、萌香は顔を赤くしながらも笑顔で赤司に叫んだ。


 もう、病院についていた。