二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.281 )
- 日時: 2012/09/23 13:42
- 名前: 黎 (ID: 6Bgu9cRk)
「俺は・・・お前にあんなことを言ったんだぞ・・・。」
「それでも…。父さんだから。」
ゴオオと、煙の臭いと火の音が大きくなっていく。
「俺はお前という人格を消そうとしたんだぞ…?」
「知ってるよ。」
萌香は再度手を海東に差しのべた。
「こんな最悪な親がいてたまるか・・・。」
「けれど、琉香の前では立派な父親だったじゃないか。」
萌香は座り込んでいる海東と視線を合わせてこういった。
「帰ろう。」
「・・・・・・・・。」
海東が萌香の手を握ろうとした瞬間。
バゴオオッ!
火事によって焼けた木柱が萌香に向かって倒れこもうとしていた。
「萌香ッ!」
がばっと海東は萌香を押しのけた。
「・・・父さんッ!」
しかし萌香が海東に視線を集中した時には木柱によって海東への道が封鎖されていた。
「しっかりして父さんッ!今助けるから!」
「…もう、いいんだ萌香・・・。」
「よくないッ!」
「わかってたんだ。もう、こんな実験無駄だってこと。けど、おれはあきらめきれなかった。もう1度太陽のような琉香の笑った顔が見たかった。」
語尾が涙声になっていた。
「けど、一回目の実験でお前が生まれて、どうしても俺はお前を娘と認めたくなかった・・・ッ!」
「とう・・さ・・。」
「でも、お前は俺に冷たくされても、おれにずっと笑ってくれてたんだ。そして、おれの覚悟が揺らぎ始めた・・・。」
「…私、あの時何も知らなくて・・・。」
「…結局ガラクタだったのは俺だったんだ。絶対に琉香はよみがえらないことも知ってたくせに誰かにこんな俺を止めてほしいだなんて・・・。」
それ以上、海東は言葉を発しなかった。
「父さん!?大丈夫!?うわッ!」
萌香が木柱に駆け寄ると、火事の炎はもっと炎上した。
「…もういけ萌香!これが俺の運命だ!」
「いやだ!父さんを置いていけるか!」
「一度もお前のことを顧みなかった俺を父親だなんて言うなッ!!」
「!?」
「…こんな俺を父親だって言ってくれて、それだけでもう俺は満足だ・・・。」
海東は残り少ない力でポケットからリモコンを取り出し、ボタンを押した。
ガコン。
「!?」
窓があき、滑り台のような体系になると萌香はそこに吸い込まれるように落ちて行った。
「…これが最初で最後の父親らしいことか…。萌香。落ちる場所は廃工場の裏口だ。そこには炎はない。征十郎君たちになんとかしてもらうんだ。」
「父さんッ!父さん!!」
萌香は悲鳴を上げるように海東を呼んだ。
「琉香…。俺はいつも気づくのが遅いな・・・。」
——あたし、妹がほしい!そうしたら、パパとママが仕事に行ってもさみしくないもん!——
「…パパももうすぐそっちへ行くからね・・・。」
海東は微笑むと、意識を失った。
そして、響いたのは、炎の音だけになった。