二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ ー白銀の女神ー ( No.36 )
日時: 2012/08/03 14:37
名前: 黎 (ID: jX/c7tjl)

 そして、菜々が重体になってから4日後。
 萌香は、あの日以来部活には行けていなかった。
 菜々も何とか意識を取り戻したが、萌香は病院には行かなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そう・・なんだ…。そんなことがあったんだね…。」
「うん・・・。」
 しゅんと下を向いて話す吉美に菜々はそっと吉美の手を握った。
「吉美ちゃん。お願いがあるの。」
「?なあに?」

 
「どんな手を使っても萌香をここに連れてきてほしいの。」





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「・・・・・・・・。」
 その頃萌香は部屋のベットに力なく座っていた。
 ピンポーンとインターホンの音がする。
 だが、今の萌香にとってはどうでもいいことだった。
 しかし、タンタンと力強い足音が萌香の部屋に向かってくる。
 この足音は、母のものではない。
「まさか…!」
 と、悪い予感を察知し、部屋に鍵をかけようとした瞬間、思い切り、ドアが開かれた。
「吉美…!?」
 遅かった。そんな萌香を吉美は構わず、萌香の手を引っ張った。
「萌香。ちょっと来て。」
「ちょ…!吉美!?」
 ぐんぐんと手を引っ張られていく。
 ついた先は病院だった。
「!…吉美、私帰る。」
「ダメよ。菜々に頼まれたんだから。」
「菜々が…!?」
 驚きに顔を吉美に向ける。
 しばらく萌香は病院をにらむように眺めていたが、
「…分かった。行くよ。」
 と、菜々の病室に歩き出した。






「菜々。連れてきたよ。」
「うん。ありがとう。」
 吉美の声に菜々はいつもの穏やかな声で反応する。
 ガラガラと、病室のドアを開けると菜々は微笑みながら2人を待っていた。
「…じゃあ、あと2人さん。よろしくね。」
「うん。」
「えっ!ちょっと!?」
 萌香の反応に構わず吉美は手を振って帰って行ってしまった。
「…ごめんね。萌香ちゃん。迷惑かけて。」
「迷惑かけたのは私だ。菜々・・・。」
 前にも言ったでしょ、と苦笑する。
「こうなったのは私の独断なんだから。・・・でもね・・・。」
 菜々は目をつむる。
「…私、もうバスケできないみたいなの。」
「え!?」
 がたっと萌香は立ち上がった。
「今の私の脳じゃ、バスケみたいな激しいスポーツの衝動には耐えられないんだって。それに、足もけがしてるみたい。」
 微笑ましい子供でも見ているように菜々は笑った。
「なんで・・・わらってられるんだ…!?」
「どうして?」
「私が!…私が菜々のバスケを奪ったのに!?なんでわらってられるんだ!?」
 萌香は菜々にどなるように叫んだ。
 そんな萌香に菜々は、
「…気易くそんなこと言わないで。前みたいに謝れても困るの。…謝れたら、なんのために私はこんな目にあったの!?」
 いつもは声を荒げたりしない菜々に萌香は驚いた。
「…だから私はもうバスケができなくなっても大切な仲間の萌香を助けられたの。くいはないと言ったらウソになるけど、後悔するよりマシなの…。これが笑ってられる理由。」
 さっきまでの菜々とは一変して、穏やかな口調に戻っていた。
「やっぱり・・・わかんないや・・・。」
 萌香は苦笑しながらドアを開けた。
「…また来てね。」
 菜々は笑って萌香に手を振った。
「・・・・・。」
 萌香はそれには答えなかった。




現在、午後4時26分。