二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.10 )
日時: 2012/07/14 12:23
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

今は忍者アカデミーの休憩時間。サスケは今、非常に困っている事がある。それは現在進行形でサスケの精神に害を与えている。だが、自分に害を与えている人物、数名のそれは悪気がなく、むしろ自分の事を良く思っての行動故に、邪険な扱いは出来ない。でも、これだけは、小さな声で良いから言わせて欲しい。
「ナルト……助けてくれ」
サスケは、くの一クラスの女子に囲まれながら、その娘達の黄色い声を一身で浴びていた。次々と自分に問いかけてくる、知ってどうなるのかと言いたくなるような質問に答えながら、どうにか逃げ出せないかと、手段を講じる。そして、女子の群れの向こうに、我が親友の姿を見つけ────それはもう、楽しそうにニヤニヤしていた。
「薄情者が……」
サスケの嘆きは、ハイテンションな女子の耳には届かない。
女子に声を掛けられる度に精神がガリガリと削られていくのが分かった。いつの世も、モテる男は辛いものだ。

「……胃に穴が開きそうだ」
一つ授業を挟んでやっとサスケに訪れた本物の休憩時間。机にもたれ掛かりながら隣にいるナルトになぜ助けてくれなかった。という意味も込めて自身の不調を訴える。サスケはアカデミー入学後一ヶ月間。毎日女子の群れに集(たか)られている。初日やそこらの時は良い。サスケだって男だし、女子に人気があるのは嬉しい事だ。しかし、好きでもない女性にいつまでもワラワラと囲まれると、寄って集って鬱陶しい。としか言えない状態になる。
「大丈夫か……?少し休んでるってばよ」
「誰のせいでこうなったと思ってるんだ……?」
決してナルトのせいではない。ナルトのせいではないのだが、自分を助けなかったのもまた事実だ。
もしも胃潰瘍になったら口から血をぶっかけてやる。という最早呪いでしかない言葉を視線に乗せてナルトを睨みつける。
ナルトは苦笑しながら、サスケをそっとしておいてやる為に、教室を出た。決して、サスケの射殺すような視線から逃れる為ではない。

「ナルト君……」
ナルトがアカデミーの修行場で手裏剣の練習をしていると、ヒナタが小さく、消えてしまいそうな声で話しかけてきた。ナルトはちょいちょい、と手招きをすると、丸太で出来た椅子に座らせて、自分も隣に座る。若干距離が空いているのは、ナルトがまだ子供だと言う事が関係している。
「そう言えば、さっきヒナタはサスケのトコにいなかったよな?女子ってば、みんな、ああいう美形が好きなんじゃねぇのか?」
『安心を隠しながらする確認』の後に、女子であるヒナタへと疑問を投げかける。傍から見れば『デリカシーの無い奴だ』と思われるだろうが、今は周りにそんな事を言うような人間はいない。
「私は……いのちゃんやサクラちゃん見たいにサスケ君じゃなくて……他に、『好きな人がいる』から」
それが誰を指しているのかはナルトには分からないが、ナルトは若干のショックを受けた。『それがまさか自分だという事は無いだろう』という『鈍感な思考』は、ナルトの口を勝手に動かしてしまう。
「へぇ、それって『どんな奴』だってばよ?『特徴だけで良いから』教えてくれ。頼む!」
知ってどうなるというのだろうか。そんな考えは思考の隅に追いやって、ナルトは気づかれない用に生唾を飲む。
「その人は……『太陽みたいに明るい笑い方をする人』で……私からしたらサスケ君よりずっと格好良い人……優しくて、『私の命の恩人』なの」
ヒナタは最後の情報を脳内で思い返して、酷く後悔する。なるべく誰だと分からないように言葉を選んだが、最後の一言で水泡に帰した。今ので絶対に、バレてしまった。『拒絶されたら』どうしよう、等と『いらぬ心配』をして、頭から血が引いた。
「へぇ。ヒナタの命の恩人か……駄目だ、心当たりが無いってばよ」
しかし、ナルトは全く『覚えていない』様だった。『自分達が三歳の時』など記憶に欠片程も残っていない様で、『それはそれで少し寂しい』が、一先ず安心した。
「そっか……それじゃ『そいつもきっとヒナタの事好き』だから、これからも仲良くしてあげて欲しいってばよ!じゃあな!」
そういってナルトは『急いで』教室へと戻るが、ヒナタはナルトの去り際の言葉の意味が分からなかった。しかし、ナルトの顔が赤くなっているのを見て、自分の顔が火山のようにボン、と噴火した。
訂正。やはり、『気づかれていた』様だ。でも。
「え……ナルト君が私の事………………キュウ」
ヒナタは動揺と恥じらいの余り、その場で気絶してしまった。その後アカデミーの教員に発見されたヒナタの顔は、どこか『幸せみを帯びていた』という。