二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.11 )
日時: 2012/07/15 19:39
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

今日はアカデミーでの特別授業だ。どの辺りが特別なのかというと、それは教員達に変わり、木の葉の上忍が生徒一人に上忍一人の割合で、生徒に忍術や体術、幻術を教える、といったところだ。アカデミーの教員は、中忍の忍びが務めている事が多い。勿論、イルカもその一人で、今回は上忍達の紹介の後、ゆっくり休憩する事になっている。
「カカシ兄ちゃんか……イタチ兄ちゃんがいいな。でも全然知らない人との授業も楽しそうだってばよ!」
ナルトのこの大きな期待は、数分後にはバラバラの粉々に崩れ去る事になる。何故なら、自分を担当する上忍が、あんな暑苦しい人物だとは思ってもいなかったからだ。

「俺の名前はマイト・ガイ……少年よ、名前を聞かせてくれるかい?」
キラキラとした少年の様な瞳は、見るものに青春の光を抱かせる────訳がなかった。海苔が貼り付いた様な太いゲジ眉、もとい激眉。カツラなんじゃないかと疑ってしまう程、綺麗に整えられたオカッパ頭。極めつけは濃ゆい、としか表現の仕様がない顔立ちに、ナルトはドン引きしていた。
「波風ナルトです……よろしくお願いします……?」
語尾に疑問符がくっついてしまったが、これは致し方がない。これからこの激眉に授業を受けるとなると、現実逃避もしたくなるというものだ。
「声が小さいぞ!!ナルト君!!それでは青春なんてやってこない!よーし、青春パワーを身につける為に、先生と夕日に向かってダッシュだ!」
あんたの声がでかすぎるんだ。青春パワーってなんだ。今は午前八時です。そんな数々のツッコミがナルトの脳内を過(よ)ぎったが、これを言葉にすると、また絡まれるに違いないという防衛本能が働き、口に出すのを止めた。正に、ナルトにとって、マイト・ガイの『ガイ』は『害』でしかなかった。
しかし、ここで敢えて言わせてもらおう。ナルトの災難はまだ始まったばかりだ、と。

「もう……嫌だってばよ」
「甘いぞぉ!ナルト君!いい若い者がそんな事でどうする?見よ!この先生の溢れんばかりの青春パワーを!!」
ここでノリの良い者だったら、『先生……輝いてます!』とでも言うのだろうが、今のナルトにはそんな元気はなく、力尽きて地面に倒れ伏した。
「しょうがない奴だなぁ……先生が起こしてあげようじゃないか……」
そんな不吉な声が聞こえ、ナルトは慌てて起き上がる。
こう言ってしまっては何だが、この激眉教員には、触りたくない。触って欲しくない。もしも体の一部が触れて汗臭い匂いや、青春パワーなどという『邪悪そう』な力が感染してしまったらと、想像しただけでも冷や汗が体中を伝って地面に大きな水溜まりを作ってしまう。
「おお!気合十分だな!それでこそ青春だ!」
お願いだからもう勘弁してくれ。そんな思いが胸に溜まり、ある言葉を呟いてしまう。
「カカシ兄ちゃん……こんなおっさん嫌だってばよ……助けて」
しかし、その言葉こそが、眠れる獅子を呼び起こしてしまう、NGワードだった。
「君は……カカシを知っているのかい?人は俺達をこう呼ぶよ……永遠のライバル、とね。よし!分かった!聞かせてあげよう……俺とカカシがお互いに競い合い、力を高めていた時代に出来た俺達の伝説ベスト1000!」
そこはベストテンで止めるべきだと思ったナルトは間違っていない。間違っている筈がないのだ。

一方その頃サスケは────
「火遁・鳳仙火の術……!!」
サスケの口から複数の火の玉が吐き出され、そのまま的へと命中した。この術は、チャクラで操作する事によって火の玉の飛ばす方向を自由自在に操る事が出来るのだ。
「出来たよ!兄さん!!」
得意げに、偶然自分を担当する事になったイタチの方へ振り向く。サスケのその表情はいつも周りに見せていた、大人びているような物ではなく、年相応の少年の物だった。いや、サスケのそれは大人びているというより大人ぶっているというべきだろうか。
「やはり、サスケは筋が良いな……俺はお前みたいな弟を持って鼻が高い」
サスケの術を使う様子を岩の上に座って眺めていたイタチは、パチパチと賞賛の拍手を送り、近寄ってきたサスケの頭を撫でる。
通常、この術は中忍レベルの術で、アカデミー生徒がどう頑張った所で発動できるものではない。サスケも将来木の葉に名を残す忍びになりそうだと、イタチは誇らしそうな笑みを浮かべて、授業の続きを促す。だが、その時。
「サスケ……少し、こっちを向いてみろ」
イタチは、サスケの纏うチャクラに違和感を感じ、サスケの『眼』を見る。やはり、案の定、サスケの眼は、『開眼』していた。
「写輪眼……」
イタチは驚いた様子でサスケの両眼を見つめる。写輪眼とは、うちは一族に伝わる血継限界で、三大瞳術の一つに数えられる物だ。その能力は血継限界を除く、忍術、体術、幻術の仕組みを一瞬で見破り、コピーする事が出来るという代物で、他にも、動体視力の強化や、チャクラの流れを見分ける等、多種多様の力を兼ね備えている。これはうちは一族の中でも、開眼するものは限られており、一部の家系の忍びにしか発現しないという。
「やったぁ!兄さん、俺もこれで一人前だね!」
喜びの余り、イタチに抱きつくサスケを、くのいちクラスの女子が見たらどう反応をするのだろうか。口調や性格が、アカデミーで使っているものとは全然違うという、二重人格のAB型のサスケを可愛いと思うか、気持ち悪いと思うか。それは女子次第だ。