二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.20 )
- 日時: 2012/08/01 08:30
- 名前: 近衛竜馬 (ID: fxK7Oycv)
サバイバル演習場の中央付近で、カカシが無言のまま、腕を組んで立っていた。この様なわかりやすい場所で構えているのは、これが戦闘ではなく、下忍候補生の実力を試す為の試験だからであり、ナルト達がどう動くのかを確かめるためだ。
「へぇ。三人同時に来たか……っと」
風を切って飛んで来た二枚の手裏剣を、カカシは何の苦労も無く、クナイで弾いてみせた。そしてそれを切っ掛けに、ナルト、サスケ、サクラの三人がカカシを取り囲むように姿を現す。
サスケは寅の印を結んで、口内にチャクラを溜める。そして、それを火の性質に変換し、一気に撃ち放つ。火遁・豪火球の術だ。
それだけではない。ナルトが、風遁・真空玉(しんくうぎょく)で炎の中に風の玉を撃ち込む事で、火遁の勢いは更に増した。これは性質変化の相性を利用したもので、風遁は火遁に負けてしまう、という優劣があるが、風は火の勢いを強くし、火力を強める効果もある。
「なるほどね……チームワークとしては悪くない。だが……チャクラコントロールが甘い!」
カカシは水遁・水鮫弾という鮫を象った水の塊を火の玉に放つことで、業火球を消滅させる。
「クラマ……力を貸してくれ!」
『良いだろう……儂のチャクラ……好きなだけ使うがいい!』
火遁が消化された事で、辺りに水蒸気が舞い、ナルトはその中に紛れながら風遁・真空連波の術を発動する。
「く……(へぇ。中々いい動きするじゃないの……だが!)」
無数のカマイタチが、カカシの体に生傷を付けるが、そのカカシは身代わり、つまり偽物。本物は、辺りの土煙に紛れてどこかに隠れてしまった。
「影分身の術!」
独特の、両手の人差し指と中指を重ね合わせる印を構えて、ナルトは二人に分身し、前後左右、そして最後に下を見る。すると、サクラの足元の地面が、僅かに盛り上がるのが見えた。
「危ない!」
「キャアア!!」
分身の一体が、サクラを救うために、押し退ける。カカシが使っている術は土遁・心中斬首の術。これは対象を地面に顔だけ出して生き埋めにする術で、これに、分身ナルトがサクラの代わりに掛かってしまった。だが、分身がこれに掛かったとしても、何も問題はない。分身ナルトは、土に埋まった直後にその術を解いて、白煙と共に消え去った。
「(影分身の使い方も上等……手ぇ抜いてませんね……先生!)」
カカシは地中から這い出ながら、内心でナルトをここまで鍛え上げた自身の恩師の名前を叫ぶ。
「タァ!!」
「おっと……!」
サスケの指先が、カカシの腰に吊るしてある鈴に触れる。カカシは身を動かして、それを防いだが、正直今のは危なかった。
「(イタチも、ただ可愛がってるだけじゃあないのね……)」
冷や汗を掻きながら、拳や足を使って攻撃してくるサスケと体術対決を展開する。
「ぐ……」
途中から、二人に増えた。相手が下忍とは言え、ナルトとサスケを相手に手加減したままでは正直キツイ。だが、その時。
「……どうした?」
突然ピタリと、ナルトとサスケの動きが止まる。自分の腰を見てみれば、成程。いつのまにか鈴を取られていたようだ。
「ま!お前らは合格でいいな……所で、この試験を、お前らはどういう理由で、協力して鈴を取りに来た?」
カカシとしては、それが凄く気になる所だ。今までカカシがこの試験を担当した子供達は、カカシ曰く『言う事を素直に聞くだけのボンクラ共』だった事から、合格はさせ無かった。それ故にどんな答えを出したのか、とても気になるのだ。
ナルトは、自分の気づいた事を簡単に説明した後、それに、と話を続ける。
「もしも二人だけ合格で、一人が失格ってなっても、『鈴は三人で協力して取ったから、三人共鈴を取れた』って事で無理矢理押し切るつもりだったんだってばよ!」
成程、とカカシは頷く。確かに、この試験はそういう考えもありだ。鈴が二つでも、三人で協力して取れば、三人共鈴を取ったという事でいい。トンチの様な、屁理屈の様な。そんな考えで挑んだ事は百点をあげても良い。だが。
「三人で取ったという割には、サクラがあまり目立たなかったぞ」
語尾にハートマークが付きそうな、とても良い笑顔でカカシはそう指摘する。確かに、今回はナルトやサスケばかりが鈴を取るのに貢献していた。尤も、サクラだって手裏剣やクナイを投擲する事で、二人の援護をしていたのも事実なのだが。
この指摘に対する答えを考えていなかったのか、三人ともあたふたと、慌てた様子で、即興で考えた屁理屈を言うが、そのどれもが、ツッコミ所のある物で、カカシはニコニコしながら、ズバズバとツッコミをいれる。
「ま!冗談だ!……さっきも言った通り、お前らは文句無しの合格(ごーかっく)!明日から任務始めるぞ!」
カカシの言葉に、ナルトとサクラはハイタッチをしながら喜び、サスケはフッ、と気障な笑い方をしながら微笑んだ。