二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.6 )
日時: 2012/07/09 09:23
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

時刻は午後六時。火影邸は現在、宴会が行われている。その理由は単純で、ナルトの四歳の誕生日だからだ。ミナトは、自分やクシナ、ナルトの友人を家に招いて誕生日パーティを開いている。その出席者はうちはの兄弟とその両親に、ミナトの上忍時代の部下三人。そして、木の葉隠れの英雄とされている、木の葉の三忍も呼んでいる。呼ばれた大人達は、ミナトの親馬鹿加減に呆れてもいたが、素直で元気なナルトを見ると、自然と表情が綻んでいた。
「ナルト!爺ちゃんだ、爺ちゃん。言ってみろ」
「爺……ちゃん?」
ナルトにミナトの師匠である自来也が自身を祖父と呼ぶように促す。確かに弟子の子供という事で、孫、というのも可笑しくない。だが。
「ナルト、その人の事はエロ仙人って呼んで良いわよ」
クシナが余計な事を言ったせいで、ナルトの自来也に対する呼び名がエロ仙人、で定着してしまった。

その後、ナルトとサスケが二人で遊んでいると一人の女性が二人に近づいてきた。
「うふふ!君達可愛いわねぇ?私の事お姉ちゃん、って呼んでね?」
黒髪の女性はナルトを抱きかかえると頭を撫で始めた。しかし何故だろうか。女性だと言う割には背中に当たる感触が女性のそれではない。
「大蛇丸……その年でお姉ちゃんはねぇだろのぉ?それにお前は『男』だろ」
自来也が言った言葉をナルトが理解するのは時間がかった。何故なら、大蛇丸の容姿は、女のそれでしかなかったからだ。
自来也の言葉に気づいたナルトとサスケはどうしたかと言うと、それは勿論。
「ぎゃー!オカマだってばよー!!は、離せぇぇぇ!!」
「ナルトを離せ!オカマー!」
大蛇丸の腕の中で暴れるナルトと、ナルトを救い出そうとサスケが大蛇丸をポカポカと叩く。その様子は見てて微笑ましい様な、子供達を助け出さなければいけない様な、そんな感じだ。結局、ミナトによって救出されたナルトは九死に一生を得た、そんな様子で泣き出してしまった。

「い、痛いってばよぉ!!」
「だーれが、おばちゃんだってぇ?もう一度いってごらん?」
現在ナルトは妙齢の女性に頭に拳をぐりぐりと捻じ込まれ、お仕置きをされている。その理由はナルトは女性の事をあろうことか『おばちゃん』と言ったからだ。しかしそれは決して間違っていなかった。女性の名前は綱手。木の葉の三忍の紅一点である綱手は現在四十二歳。術で若い姿に変化しているが、立派なおばちゃんである。

ナルトは三忍に存分に可愛がられた後、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「あ!カカシにーちゃん!!」
ナルトはカカシの元へと猛ダッシュして、飛びつこうとした。カカシがナルトに気づいて振り向くと同時に、その腹にナルトの頭が減り込む。
「ガフッ……ナ、ナルト……?」
カカシはそのまま倒れ、ナルトがその上に乗っかり笑顔を浮かべる。
この間の一件以来、ナルトの中でカカシの株が一気に急上昇した為に、カカシは火影邸へ来る度にこの様に飛びつかれている。その時、ミナトがカカシの事をジト目で見ていたのは、カカシも苦笑しざるを得ない。
「……カカシを押し倒すとか、君元気すぎだろ?」
二人を覗き込む様に見ていたのは左目に眼帯をした、うちは一族の青年だ。名前はオビトといって、カカシと同じくミナトの元生徒で、隣にいるリンもその一人だ。
「君がミナト先生のお子さんか。俺の名前はオビトだ。よろしくな、ナルト君!」
「私はリン。カカシ君随分懐かれちゃってるね?」
二人はナルトに自己紹介をし、暫く遊んだ後、共にミナトの元へナルトを送りに行った。

誕生日会の翌日、ナルトは両親に連れられて、里外れにある、岩山の洞窟へと連れられていた。その場にはナルトにとって見覚えのない忍び達が数名が何かの準備をしていた。今日はクシナの中から九尾をナルトの中に移す儀式が行われる日だ。本来、九尾を始めとする尾獣を封印された忍び達、所謂人柱力は体内から尾獣を抜かれると死んでしまう。だが、クシナの場合は別だ。
波風クシナ、旧姓うずまきクシナは元々うずまき一族の出身で、その一族は全員生命力が高く、一族が暮らしていた里は長寿の里、と呼ばれていた。
そして何より現在クシナの中に封印されているクラマは、クシナやミナトの事を敵として認識してない。つまりクシナに死なれるとクラマとしても後味が悪いという訳で、少しだけクシナの中に自分のチャクラを残しておくことで、クシナを死なす事なく、自分がナルトの中に移る事が出来るのだ。
「母ちゃん……」
ナルトが不安げな表情でクシナの顔を見つめる。事前に説明は受け、九尾の事も知っている。だが、それでも四歳のナルトに伸し掛る恐怖と不安は半端なものではない。
「大丈夫だってばね!九尾は見た目は怖いけど中身は良い奴だし、きっとナルトの事を大事にしてくれるわ」
口ではそう言うものの、やはりクシナも不安を隠せないらしい。普段は気をつけているのだが、興奮したり動揺したりする時に出る、口癖が出てしまっている。

九尾をクシナから取り出す儀式は無事に終わった。次はナルトに九尾を封印する儀式を行う。
『……儂の名は九尾の妖狐、クラマという。厄介になるぞ?ナルトよ』
その声は思ったより優しくて、今にも泣き出しそうだったナルトは安心し、気を強く持った。体内に何かが入ってくる違和感が、こそばゆくて、腹あたりが熱くなったが、特に拒絶反応などもなく、儀式は無事に終わった。

二年後────ナルト六歳。
「ん!ナルト。クラマのチャクラを使うのが上手くなったね!」
ミナトは手加減をしながら手裏剣をナルトに向かって投げる。ナルトはそれをチャクラを解放しながら、クナイによって弾く。ナルトは印を組んで解放したチャクラを風に変換し、術を唱える。
「ふーとん!だいとっぱの術!」
口から出る風は豪突風とまではいかないものの、ミナトの放った千本という忍具を吹き飛ばし、次の術へと移行する。
「ふーとん、しんくーれっぱ……ってあれ?」
ナルトの口から出たカマイタチはひょろひょろと宙を舞い、ぽひゅん、という情けない音共に消滅した。
「ん!その術はまだナルトには早いかな?そこは無理せずに真空波に止めるべきだったね」
ナルトは術を発動するとき。チャクラを練るのはなんの問題もない。クラマが自分の分は勿論、ナルトの分までコントロールしてくれているからだ。それでもいずれは自分でチャクラコントロールを覚えなければいけないので、現在練習中である。
問題は印の組み方だ。六歳児だから仕方ないとも思うが、印の数を覚えきれないのである。そして組む速さも、非常にゆっくりで、酷い時は途中で止まってしまう程だ。
「ん!ナルト。今日の修行はここまで!じゃあ、お父さんとどこかに遊びにいこうか?」
「ううん。今日はサスケと遊ぶ約束してるから、また今度だってばよ!」

その夜、ミナトは偶偶旅の途中に里へ帰って来た自来也と居酒屋で酒を飲んでいた。
「先生……ナルトが最近やけに冷たいんです……反抗期ですかね?」
「お前は少し子離れすべきだのぉ……ナルトはしっかり親離れしていくじゃからの……」
ミナトの親馬鹿ぶりは健在であった。