二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.7 )
日時: 2012/07/10 10:36
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

五影会談。それはその名の通り、火の国、風の国、雷の国、土の国、水の国の“影”五名が集って行う、会議の事だ。しかし、今回火の国で行われるのはそんな大層な物ではない。精々同盟国である、火の国と風の国のそれぞれの影が話し合う程度だ。その話し合いの内容は今年行われる中忍試験の打ち合わせである。
因みに、四代目風影にはナルトと同い年の息子がいて、その子には兄と姉がいるというので、それを聞いたミナトが是非連れてきて欲しい、といったので風影の子供達も火の国に来るとの事だ。
「ん!ナルト。今日ナルトと同じくらいの子達が家に来るんだけど、仲良くできるかな?」
「おう!仲良くするってばよ!どんな奴がくるんだ?」
ナルトは目をキラキラと輝かせながらこれから来るであろう、自分と同年代の子供達とどうやって遊ぶか、というプランを立て始めた。ナルトは最近、ひらがなとカタカナだけではあるが、字を覚え始め、六歳にしては上手な字で紙にその内容を書き始めた。その姿をミナトは火の国を治める影とは思えない程、緩んだ表情で見つめていた。

「ん。風影殿。この度は遠路はるばるご苦労様です。そのお子さん達が……?」
「ええ、長女のテマリに、長男のカンクロウ。そして次男の我愛羅です」
ミナトは三兄弟に視線を合わせてよろしく、と笑顔で一言言うと、三兄弟は文字通り三者三様の反応を見せてくれた。
「よ、よろしくお願いします!!」
何故か顔を赤らめる長女、テマリ。
「あんたが火影?女みてーな顔して弱そうジャン」
とても元気がよろしい長男、カンクロウ。
「…………こんにちは」
テマリの後ろに隠れて恥ずかしがる次男、我愛羅。ミナトはカンクロウが言った事も特に気に止めず、風影を会議室へと連れて行った。

「おれの名前は波風ナルト!好きなものは一楽の味噌ラーメン!よろしくだってばよ!」
『…………』
三兄弟は別室に案内され、そこにいたのはナルトだった。ナルトは元気良く挨拶をするが、三兄弟からは沈黙という反応が帰って来た。その中でナルトに声をかけたのは我愛羅だ。
「よ……よろしくナルト君。僕、我愛羅……」
我愛羅はおずおずとテマリの後ろに隠れながら精一杯の笑顔を作る。
「おう!よろしくな!我愛羅!」
テマリとカンクロウもナルトに挨拶を終えて、四人は一緒に遊ぶことになった。その間に火影であるミナトと風影は話し合いを行なっていた。

「……あの子が九尾の人柱力、ですか?嘘でしょう?」
隣の部屋で元気に遊ぶナルトを窓越しに見て、信じられないといった反応を示す。実際、ナルトが人柱力になったのは極最近だが、風の国の砂隠れの里では人柱力になった忍は精神を一尾、“守鶴”に支配される事への恐怖から毎晩、碌に睡眠をとる事が出来ず、情緒不安定になりやすい傾向がある。しかしナルトは人懐こい、無邪気な少年で、そんな様子は少しも見られない。
「九尾は……もう悪いやつじゃありませんからね。今じゃあ私や家内、息子に協力してくれてます」
ミナトは使用人の淹れた茶を啜りながら、風影にそれに、と言葉を付け加える。
「尾獣だって、心のある生き物です。無闇に怯えたり、嫌悪したりしないで根気良く話しかけていればいつかは心を開いてくれますよ」
風影はミナトの話を聞いて少しの間黙りこくってしまった。そして、意を決した様にミナトに頭を下げる。
「どうか……ミナト殿にお願いがあります。風影としてではなく、我愛羅の父親として……」

火影と風影の会議は夕方まで続き、ナルトと三兄弟の別れが訪れた。
「カンクロウ兄ちゃんに、テマリ姉ちゃん!!また会おうってばよ!」
ナルトはカンクロウとテマリの後ろ姿に手を振ると、二人は笑顔でそれに応えた。しかし、ここでナルトはある事に気づいた。“カンクロウ兄ちゃんにテマリ姉ちゃん。また会おうってばよ”────つまり、風影の隣に我愛羅の姿は無かった。
「……あれ?」
「我愛羅君はここよ。ナルト」
クシナが、我愛羅と手を繋いでナルトの元へやってきた。ナルトはそれを見て目玉が飛び出そうな程驚き、どういう事なのか訳がわからなかった。
「我愛羅君はね、ナルトと同じで、尾獣をお腹の中に封印されているの。でも、我愛羅君はまだ尾獣と喧嘩したまんまだから、木の葉で尾獣と仲良くする方法を見つける事になったのよ」
クシナは、ナルトに分かりやすく説明し、我愛羅が暫く木の葉で暮らす事を伝えた。
「よ、よろしく……ナルト君」
期間は最長で七年間。尾獣のコントロールの訓練が長引けば、それだけの期間を木の葉で過ごす事になる。
「そっか……我愛羅の中にもクラマみたいのが入ってんのか……よし!俺が尾獣と仲良くする方法を教えてやるってばよ!」
九尾が改心したのはナルトのおかげでは無いのだが────そこは子供の言う事なのでクシナは笑顔で聞き流しておいた。
そして、我愛羅が木の葉で暮らし始めてから五日目。我愛羅の中に封印されている尾獣の守鶴、一尾は未だに我愛羅に心を開くことはないが、尾獣チャクラのコントロールと精神修行なら
既に大方完了していると言っても良い。そこはやはり風影の息子という事もあって我愛羅の筋はとても良いと、ミナトは思う。
「ん!我愛羅君はとっても飲み込みが早いね!これなら直ぐにでも砂に帰れるんじゃないかな?」
ミナトは我愛羅の頭を撫でながら褒める。我愛羅は照れているのか、えへへ、と笑いながら目を細める。
「でも……出来れば、ずっと『おじさん』や、ナルト君と一緒にいたいな……砂にいても、僕、化け物って呼ばれるだけだから……」
そういった我愛羅の表情は六歳の子供がするには、余りにも寂し過ぎるもので、ミナトは心痛の思いだった。決して、おじさんと呼ばれた事が原因ではない。
「我愛羅君がいたいと思ったなら……いつまでもいれば良いと思うよ。砂に帰りたいと思うまで、いつまでもね」
ミナトはそう言って我愛羅に笑顔を向けた後、手を繋いで、火影邸へと戻る。
最近、ナルトに構ってあげていないから、拗ねていないか心配だ。

火影邸────。
「あ!ナルト!兄さんから離れろよ!!」
「へへーん!イタチ兄ちゃんはお前だけのものじゃ無いってばよ!」
ナルトは全然大丈夫だった。むしろ、このままイタチに懐きすぎて、自分を蔑ろにされないか、という不安がミナトに過ぎった。
「あの……火影様?どうかしましたか?」
自分を気遣うイタチの言葉も、今のミナトにとっては優越感に浸っている様にしか聞こえない。重症、いや、最早末期である。
「イヤ……何デモナイヨ」
サスケと一緒にぎゃいぎゃいとイタチの取り合いをしているナルトは、見ていて微笑ましい様な、寂しい様な、そんな感情が胸の中に渦巻いたが、今のミナトには家庭内に波風が立たないようにそっとその場を離れることしか出来なかった。波風ミナトなだけに。

「あ!我愛羅!修行終わったのか?いいなー。最近父ちゃん、俺の修行に付き合ってくんねーから寂しいってばよ!」
今の言葉をミナトが聞いたら、ヘッドスライディングをしてナルトに抱きついただろうが、タイミングの悪い事に、ミナトはもう自室で書類仕事へと移っていた。
「ごめんね、ナルト君……僕のせいで……」
シュン、と居心地の悪そうに落ち込む我愛羅に、ナルトは慌てて、その代わりイタチに修行を見てもらえるから良いと、必死に我愛羅を慰める。ナルトとて、人を嫌な気持ちをさせてまで誰かに甘えたい訳ではないのだ。先程のイタチ取り合い事件は、サスケとは気軽に喧嘩を出来る仲なので、例外だ。
「えっと……なぁ、我愛羅。外いこうぜ!俺達の友達に紹介してやるってばよ!」
ナルトの言葉に落ち込んでいた我愛羅の顔がパッと明るくなって、またすぐに落ち込んだ様子になる。やはり、砂隠れでの経験から、自分の中の一尾のせいで他人を傷つけてしまわないか、という不安があるようだ。
「大丈夫じゃないか?ナルトの父さんとの修行は上手くいってるんだろ?」
「……うん、でも」
サスケの言葉を聞いて、それでも踏ん切りがつかない我愛羅の手をナルトは優しく引っ張って、外に連れて行こうとする。
「もしもの時は俺が止めてやるってばよ!俺ってば、つええからな!」
まだ忍ですらない子供に、そんな自身がどこからやってくるんだ、という横槍は入らない。イタチも、サスケも、我愛羅にもっと自身を持って欲しいと思っているのは同じだ。
「うん……行く」
やっと首を縦に振った我愛羅を連れて、ナルトとサスケ、イタチの四人はにいつも遊んでいる公園へと向かう。今の時間なら、全員とはいかないかも知れないが、ある程度は友人がいる筈だ。
「……あ」
イタチの元へ、小鳥がやってくる。この鳥は、木の葉が飼っている伝書用の鳥だ。
「すまない……任務だ」
えー!?というブーイングの嵐がイタチを襲う。だが、任務は任務。それもイタチの様な優秀な忍となると重要度が増してくる。
「許せ三人共……また今度だ」
そう言ってドロン、と音を立てて白煙と共に消えるイタチ。瞬身の術だ。
「ちぇっ。ナルト、我愛羅、兄さんなんか放っといて行こうぜ」
放っとくも何もイタチはこの場にいないじゃないか、というツッコミが我愛羅の脳内を過ぎったが、言葉にはしない。我愛羅はなるべく人を怒らせたり困らせたりする事をしたくない、優しい子だ。
その後、公園に辿り着いたナルト達は、友達に我愛羅を紹介した後一緒に遊ぶ事になった。