二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.8 )
日時: 2012/07/11 09:59
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

鬼ごっこ。それは鬼事の意。言わずと知れた、子供の遊びの定番中の定番。だが、その実体は一切の甘えも許さない、過酷な業(ぎょう)。果てしなく走り続ける事、苦行難行。弱った獲物をじわじわと追い詰める事、悪逆無道。正に、鬼の子が行う地獄のデスゲーム────と、少し大げさに表現したが、それでも子供達にとってこの遊びは真剣勝負といっても過言ではない。特に、将来忍者を志す里の子供達にとっては。

「ひゃっほーう!捕まえてみやがれ〜!」
犬の様な姿勢で走る少年、キバは犬塚一族の子供だ。今使用しているのは四脚の術というその名の通り人間の四足歩行を可能にする術で、犬塚一族の秘伝忍術だ。二本足で走る時より遥かに速く走れるのだが、使用者が未熟だと、こうなる。
「ギャン!?」
体の速さに動体視力がついていけず、公園に生えている木にぶつかり、そのまま鬼によって捕まえられる。痛みと悔しさと恥ずかしさでキバは何も言うことが出来なかった。

「ひ、卑怯だぞ……!シカマル!お前はもう捕まっただろ!?」
「めんどくせぇけどよ。ナルト……こういう作戦なんだよ。悪(わり)ぃが、チョウジが逃げ切るまでそこにいてもらうぜ」
シカマルという少年は、奈良一族の子供だ。彼等の使う秘伝忍術は、自分の影を操り、対象の捕縛や攻撃など、多種多様の使い方が出来る、万能な術だ。しかし、術者のチャクラ量が少ないと、すぐに術が切れて、自分が不利な状況に陥ってしまう。まぁ、今回は唯の遊びなので、心配する必要はない。

「やりぃ!シノ、タッチ!」
ナルトが、サングラスを掛けた少年を捕まえて、してやったりと喜んだ表情を見せる。だが、それは糠喜(ぬかよろこ)びだと、次の瞬間に気づく事になる。
サラサラと、シノの体が崩れていき、その体を象っていたのは虫だった。
シノだと思っていたのは、実は、油女一族の秘伝忍術、寄壊蟲の術で手懐けた、虫達が作った分身だった。そして、背後に、シノが姿を現して、ナルトは即座に振り向く。
「忍びを志すなら、例えどんな状況でも油断などしない事だ……何故ならその隙を狙って罠などに掛けられる可能性があるからだ」
地面に仕掛けられていた、ブービートラップはナルトの足を縛り、近くの気に吊るす。
最早何でもありの鬼ごっこは、夕方まで続き、夕飯の時間になると、それぞれの家に帰っていった。

「ハハ……我愛羅ってば、すぐ捕まっちゃってたな……?ああいう時は、砂を使ってでも逃げなきゃ駄目だってばよ!」
我愛羅の使う術は守鶴の力を利用した、特殊な術だ。本来攻撃にしか使えないこの砂は、我愛羅に掠り傷さえも与えないようにその身を護っている。その理由は正確には分かっていないが、それは我愛羅の母親、加瑠羅の我愛羅を護りたいという願いが篭っているからだという。これは風影がミナトと会談をする際に言った言葉で、ミナトを挟んで我愛羅にも伝えられている。
「でも……僕まだ術の制御が出来ていないから……皆を傷つけちゃうかも」
自嘲気味に笑った我愛羅に、ナルトも苦笑しながらその手を引いて自宅へと戻る。
「そんな事より、今日は沢山走ったから腹が減ったてばよ!早く帰ろうぜ!」
太陽の様に、底抜けに明るい笑みは、我愛羅の心を照らし、闇を少しだけ振り払う。我愛羅が砂に帰るのは、もう少し先になりそうだ。