二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

始まりの夜 ( No.2 )
日時: 2012/07/08 21:03
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

ああ、恨めしい。



ああ、妬ましい。


あなた達の声が、笑顔が。


「・・・誰アルか。」

灯りの消えた部屋の中で、一人の少女が布団から体を起こした。

少女は布団から出ずに、ただ部屋の隅の暗闇を見つめる。

「神楽・・・。」
「兄ちゃん、聞こえたアルか?」
「うん、俺にも聞こえた。」

少女の隣で眠っていた彼女の兄も、ゆっくりと体を起こす。
隣に人がいると安心するのか、少女は兄の服の袖を掴んだ。

「大丈夫、兄ちゃんが守ってあげるからさ。」

少女の橙色の髪を、兄は優しくすいた。






極東の国、日本。
二十年前に天より飛来した天人の技術を取り入れたことで、この国に『科学』の力が台頭し始めた。

科学によって作り出された人工の光で住処である闇を奪われ、狂暴化する妖怪や悪霊が後を絶たず、
その為に人々は、昼に活動し、夜は家に籠るという生活を余儀なくされている。



これは、『科学』と『魑魅魍魎』が共存する不思議な世界の物語である。