二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

髪や目の色で人を判断するのはよくない。 ( No.4 )
日時: 2012/07/08 22:19
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

*とっつぁんのキャラが若干違います。


「やっと着いたな・・・。」
土方は十五メートルほど先に1−Cのプレートを見つけた。彼の言葉に伊東がああ・・と疲れた声で返事をする。
何故二人がこんなにも疲れているのかというと伊東の目と髪色のことで教師に説教を受けていたうえに迷子になり、しばらく校内をうろうろしていたからだ。
一応のために書いておくが彼の目色も髪色も天然ものである。
「すまないね土方君。君まで巻き込んで・・・。」
「謝る必要ねーよ。俺だって目ぇ群青だし。」
見るからに憔悴している伊東に土方がフォローを入れる。だが土方自身は伊東に説教した教師から何も言われていない。群青の瞳はパッと見黒目と見分けがつかないのだろう。
土方のフォローもあってか伊東は少し元気を取り戻した様子で笑い、いつの間にやら目の前に迫っていた教室の扉を開けた。教室の中へと入って行く伊東に土方も続く。
「っで!!」
教室に一歩足を踏み入れた途端、土方の額に何かがぶつかった。土方は驚いたが、よく見てみるとそれは伊東の背中だということに気づき思わず文句が口をついて出る。
「急に止まるなよ!危ねぇだろーが!」
伊東の反応はない。教室の奥を見つめたまま固まっている。
不審に思った土方は体を傾けて伊東の陰から教室を覗き込む。そして伊東と同じように固まってしまった。
教室の中で一人の教師と四人の男子生徒がにらみ合っていたのだ。
いや、にらみ合っていたという表現はこの場に成立しない。教師は確かに四人に向かって睨みをきかせているが、当の四人は教師を睨んではいない。彼らのうち三人は薄い笑みを浮かべて教師を見、残る一人は眠たげな目をしながら頭をかいていた。
「おめぇ等入学初日からんな恰好なりして来るたぁ、いい度胸じゃねえか。」
サングラスをかけた強面の教師が低くどすを効かせた声で言う。首にかけられた名札には松平片栗虎とあった。
「ハッ、いいがかりだな。俺達のこれは地毛だぜ?」
紫黒の髪を掻き上げながら片方しかない深緑の目で松平をせせら笑う男子生徒。そのネームプレートには〈高杉〉と書かれている。
「染めているわけでは無いのだ。文句を言われる筋合いはない。」
長髪の生徒が琥珀色の目をわずかに細める。胸元の半透明の板には〈桂〉の一文字。
「それにこいつもカラコンとかじゃねぇしな。」
銀髪を掻き回しながら自身の赤い瞳を指さす少年。ネームプレートには〈坂田〉の字が乗っている。
「ちゅう訳ですき、見逃してくれませんかのう?」
〈坂本〉と書かれたプレートを付けた茶髪に青い目をした少年が笑う。だがその笑顔にはどことなく黒いものが感じられた。
四人から発せられる威圧感に、松平はたじろいだ。
「まあ、あれだ。地毛ならしょうがないよな・・・。」
松平はそう言って四人をそれぞれの席へ戻らせ、そこでやっと土方達の存在に気が付いた。
「何やってんだ。さっさと席着け。」
教室の入り口で固まっていた二人はその言葉で我に返り、慌てて自分たちの席へと向かった。