二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブンgo 〜もう一つの物語〜 ( No.3 )
- 日時: 2012/07/19 22:11
- 名前: ぽぽりっち (ID: npB6/xR8)
あいかわらず日差しは嫌になるほど強い。
霧野は額から流れる汗をぬぐい、フゥと息を漏らした。
二つに結った桃色の髪を振り、あたりを見回す。
そして手でメガホンを作った。
「狩屋ーっ」
その時、川岸から少年がのっそりと頭をだした。
「天馬く・・・ん?」
驚いたように黄色い瞳を見開き、パクパクと口を動かす狩屋に霧野は怪訝そうな顔をする。
そして眉をしかめながら口を開いた。
「お前が川岸で休んでるっていうから、疲れてる天馬たちの代わりに来てやったのに・・・!なんだよその顔!」
霧野の指摘に狩屋は反応しない。
むしろわなわな手を震わせ、落ち着かない様子だ。
霧野はふと、そんな狩屋の腕に視線を移す。
「お前・・・こんなリストバンド昨日してたか?」
小首をかしげる霧野に、狩屋は慌ててリストバンドをもう片方の手で隠した。
「いやこれ・・・もらったんすよ」
いつもランランと強い瞳を帯びている狩屋の瞳。
だが、今はかなりきょどっている。
予想を超えた出来事に焦っているようだ。
(なにか変なこと言ったか?)
霧野はあまりに不自然な狩屋の様子に、疑問を覚えながら彼を見つめた。
その時だった。
「ふ、フハッハハハ!」
狩屋は突然笑い出したのだ。
先ほどまでの焦った表情は消え去り、おなかをかあえて大笑いしている。
「は?」
キョトンと目を丸くする霧野。
そんな彼をチラリとみると、狩屋はまた愉快そうに笑った。
「おい、突然な」
「まさか、こんな風に会うとわな。予想していなかったから焦ったが、よく考えれば『転送』すればいい話だ」
霧野の言葉をさえぎるように、狩屋はそう言った。
含み笑いを浮かべる姿は、いつもより自信にあふれているように感じられる。
「お前・・・大丈夫か?」
いきなり態度が豹変した狩屋に、霧野は本気で心配したのだろう。
スッと彼のほうへと手を伸ばした。
「うぐっ!」
またも途端に狩屋は自分の額を押さえた。
地面にガクリと膝をつき、顔色が悪い。
汗がにじみ、辛そうに口を開いた。
「くそ・・・もう限界か」
「狩屋?どういう意味だ?」
霧野は頭の上に?マークをいっぱいうかべながら、狩屋に問いかける。
しかし狩屋はそれに答えない。
膝に手を突きよろよろと起き上がると、声を張り上げた。
「リターン!」
その瞬間カッと彼の体が光り、霧野は思わず両手で目を覆い隠した。
ドサッとなにかが倒れたような音に、静かに瞼をあげる。
そこには・・・
「狩屋・・・?」
倒れていたのは狩屋だった。
気を失っているのか、ピクリとも動かない。
「どうなって・・・!」
霧野はその次の言葉を飲み込んだ。
いや、飲み込んでしまったのだ。
狩屋の傍らに立つ少年を見て。
「驚いたか?」
少年はフッと口角を上げる。
その様子に霧野は開いた口がふさがらなくなってしまった。
乾いた空気が口内を行き来し、飲み込んだつばは妙にすっぱい。
「俺がさっきのようなリアクションをとった、意味が分かっただろう?」
少年は静かに、だが確かに威圧感をもつ口調で語りかける。
夏の生ぬるい風が、少年の二つに結われた桃色の髪を揺らした。
美しい碧眼が、じっと霧野を見つめている。
色白の整った女顔、雷門中の有名人とまったく同じだった。
そう、『霧野』と——————
「俺はラル。もう一つの世界でのお前だよ」
ラルはそう言うと、胸のあたりにこぶしをもってきた。
状況を理解できていない霧野に、その手を開く。
「ディープミスト」
柔らかな濃い霧が、川岸に立つ霧野とラルの体を包みこんだ。