二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブンgo 〜もう一つの物語〜 ( No.9 )
日時: 2012/07/26 17:34
名前: ぽぽりっち (ID: npB6/xR8)



「起きろ」
「うー……ん」

少年のそんな呼びかけに、霧野はごろんと寝返りをした。
背をむけられた少年はイラただしげに、くしゃくしゃと自分の水色のくせ毛をかく。
そのとき、少年の右手首につながれた鎖が、がしゃんと虚しい音を鳴らした。
少年はゆっくりと息を吸う。

「ラル!!起きろ!」
「う、うわ!」

ため込んだ息を勢いよく吐きながら大声を出す少年に、霧野は思わずその瞳を開く。

名前というよりも《起きろ》という単語に反応したようだった。

霧野は目をパチパチさせながら、自分を起こした少年のほうへと視線をやった。
少年は眉を寄せながら、「やっとお目覚めかよ」とふてぶてしく呟くと、黒めの少ない三白眼で霧野を睨んだ。
だが浅黒い肌をしていて異常なまでに身長が小さいせいか、イマイチ威圧感がたりない。
ぼろぼろの黄ばんだTシャツに、黒いこれまたぼろぼろの長ズボンを吐いている容姿に多少の差はあったものの、彼はあの人にとてもよく似ていた。

「倉間!なんでお前が……!」
「はぁ?お前頭おかしくなったんじゃね?」

間髪入れずに倉間にそっくりな少年は、呆れ顔で声を上げた。

「おかしいって……何がだ?」

霧野のキョトンとした表情を見て、少年は怪訝そうに顔をしかめる。
そして出来る限り、鎖に邪魔されないところまで両手を広げた。

「お前そんなにのんきだったか?この状態を見ろよ」

少年の言葉に霧野は、改めてあたりを見回した。
「な……」と小さく声を漏らす。

あまりに混乱したため気づかなかったのだが、霧野がいた場所はとても人間のいる場所とは思えなかった。

石造りになっているその部屋は4畳半ほどの広さで、唯一の出入り口のような場所には鉄格子がある。
全体的にグレーで窓もなく、外の光はまったく入ってこなかった。
きな臭いにおいが広がり、ところどころにネズミなどが見つかる。
目の前にいる少年は、手足に鎖をつながれていた。

「牢屋……か?」
「ああ」

少年はニヤリと口角を歪める。
その表情に霧野は、大きなムカデが背中を這い上がるような不気味さを覚え、悪漢と感じた。

少年は少々顔をしかめる霧野に、小さく口を開く。

「ところで……倉間って誰だ?変な名だな」
「え……あ、お、俺の昔の知り合いだ」
「ふーん」

少年は興味をなくしたのだろう。
そこから先はなにも問わなかった。

一方霧野の頭はまったく働いていない。

倉間と思っていた人物は倉間は誰と聞いてくる。じゃあ誰なんだ?
一体自分は何をしているんだ?川岸にいたはずだろう?
そもそも自分はなぜ、こんな牢屋にいるのか。

考えれば考えるほど、疑問は形となって表れてくる。

「どうなってんだ……?」

消え入りそうな小さな声で呟いた霧野の碧眼は、理解不能なこの現状に涙をこぼしそうになっていた。