二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ヒロと怨炎の幻想(ミラージュ) ( No.836 )
日時: 2012/10/02 14:28
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

そんな僕の様子を見て心配そうに覗く。

「さっきから魘されてたぞ。大丈夫か?」
「ううん、大丈夫じゃない」

ブルブル震えながら怯える。
やっぱり過去の記憶を拭うことができないでいるのか。
そうだとしても、児童養護施設で暮らした時のことを思い出してしまう。

「何か悩み事があるなら話せよ」
「ううん、何でもない・・・・・・」

後ろめたさに戸惑うこともあるので、虐待を受けた時の記憶が蘇ってしまうことが多い。
幼い頃に悪夢をよく見たことを思い出してしまいそうで恐怖を感じてしまった。

「何でもないって言うほどじゃないだろ?」
「うっ・・・・・・」

バン兄さんはこういうときに勘が働いているので、僕の話を聞いてくれることが多い。
そんな兄の姿を見て、頼もしく思えたのは気のせいか。

(いや、別に何も言うことはないんじゃないか)

言おうとしても、なかなか言えないことが多かった僕。
そんな僕の気持ちを分かろうとしなかった両親に対しては憎しみを抱くしかなかったのだ。

「でも、黙りこくったままじゃ言えないんだろ?」
「兄ちゃん・・・・・・」

バン兄ちゃんは酒を飲んで帰ってくることが多いけど、今日は予定がなかったらしくて飲まなかった。
そんな兄が飲まないときの姿を見ている方が落ち着く。

「まあ言えないこともないだろうけど、あまり無理すんな」
「うん・・・・・・」
「言えるときが来たらで良いし、無理することはないと思うぜ」

苦笑しながら、頭を撫でてくれる兄の姿を見ていて尊敬するところがたくさんあった。
トラウマを克服させるには、家族とのコミュニケーションを深めていくことで上手く解消できたらいいと思う。
そうすれば、悪夢を見なくなるかもしれないんじゃないか。

「そうだね・・・・・・」
「深夜に起きたら、眠れなくなっちまうだろ?」
「うん・・・・・・」

僕を抱えながら、優しく抱きしめる兄。
その身体から温かみが迫ろうとしていて、うとうとしそうになる。
その温かさに染みてきたのか、兄の腕の中で深い眠りに落ちた。




翌日、小学校に登校してきた僕は同級生で親友の大沢健太と間宮幹彦の2人と仲良く話しながら、教室に入る。

「おはよー」
「おはよう、直太くん!」

クラスの一部が僕たちの存在に気付いて挨拶してくれた。
心地よい雰囲気を醸し出しているクラスなので、結構仲が良い。
健太や幹彦の2人とは気が合って話せるくらい、仲良くなっていた。

「直太、何か悩み事があんのか?」
「いや、何でもないよ」

そう言いながら応えた僕は健太君とふざけ合いながらじゃれ合った。
健太を見ていると、結構仲良くしてくれている友達の1人でありたいと思っていた。

「そういえば、児童養護施設にいたんだよね?」
「うん、バン兄ちゃんの家に来るまではね」

児童養護施設では、年上の人もいて仲良くしてもらった。
それでも、心の傷が癒えることはなかった・・・・・・年下の子たちと一緒に仲良く遊んだりもしていたので、コミュニケーションには自信があったことを覚えている。

「この前、知らないお兄ちゃんに声をかけられた」
「は? どういうことだ?」

健太が言うには、数日前に学校の帰りで会ったらしい。
その時に直太という少年を探しているんだけど、知らないかって聞かれたという。

「それで、健太君はなんて話したの?」
「知ってるけど、何か伝えたいことはありますかって聞いたら----------」

ズボンのポケットから取り出したのは、1枚の封筒。
その封筒の中に手紙が入っているようだ。

「これを僕に渡してほしいって?」
「うん、なんて書いてあるかは知らないけどさ」
「あ、そう・・・・・・」

封筒を開け、手紙を取り出した。

【直太、久しぶりだな。学校が終わったら、ミソラタウン駅前に来れるか?】

見覚えのある文章を見て、誰なのか分かった。
児童養護施設に居た中学生だろう。

「僕、学校が終わったら帰るね」
「えっ、ああ・・・・・・」

健太は戸惑いながら、僕を見て驚く。
このとき、何かが起きようとしていることは間違いないと感づいた。




放課後、待ち合わせ場所に来ていた僕は手紙の差出人を見た。
封筒の裏を見る限り、何も記されていない。

(これは何かありそうだな)

でも、バン兄ちゃんたちに心配かけたらどうなるか分かったものではない。
過去の記憶と決別するしかないから、同級生に僕の思いを伝えるしかなかった。
その時、背後から聞きなれた声が聞こえた。

「待たせたな」

振り返ると、体格がガッチリしている少年がいた。
健太と同じ年くらいだろうか、見覚えがあるような気がした。

「もしかして-------------------------」
「ああ、灰崎周吾だ」

灰崎は健太の親友で同級生だった仲間だが、不良少年として有名だった。
彼に何度か殴られたことを思い出してしまい、その時の記憶が蘇ってきそうだ。
それでも、僕の思いを伝えなきゃいけない。

「周吾兄ちゃん、僕を殴るの止めてよ」
「うるせえ、健太がいないときなら良いじゃんかよ」
「ダメだよ、周吾兄ちゃん!! 僕がどんなに辛い思いしたか分かってるの?」

そう、忌わしき過去の記憶に入っているのは------------------------
灰崎に何度か暴力を受けたことによるものが多かった。
それでも、生き抜きながら耐え続けてきた・・・・・・しかし、心の傷は想像以上に計り知れない。

「周吾兄ちゃん、気がすまないっていうんなら・・・・・・」
「他を当たれってか? そうはいかねーよ」

ボキボキと腕を鳴らしながら、殴りかかる準備に入る。
周吾兄ちゃんとは何度もケンカしまくってやられたことがあった。
それでも前向きに立ち向かっていくしかなかったので、僕もファイティングポーズを構える。

(どうしよう、ここでケンカしたらまずいことになってしまう)

物思いに耽っていたその時、周吾兄ちゃんの首筋が浮いた。
ジタバタと暴れる周吾を見て、背後に居る人物に気付いた。

「直太に手を出すなよ」

バン兄ちゃんの幼馴染・船津直紀だった。
身長は196cmで周吾兄ちゃんには及ばない。

「中学生が小さい子をいじめていいわけじゃないぞ」
「ヒッ・・・・・・」
「なら、僕が代わりに相手してやるか?」

直紀は灰崎を地面に戻して立たせた後、キッと睨みつけた。
灰崎はビクビク怯えながら、怒りを表した直紀の存在に気付く。

「ヒィィッ!」

威嚇に怯えたのか、すぐに逃げ出していった。
直紀さんは腰に手を当てながら溜息をつく。

「まさか、灰崎の弟だったとはな」
「------------え?」

灰崎の弟だったって・・・・・・・どういうことだろう?
直紀は場所を変えて話すからと言って、トキオシア公園に連れて行ってくれた。