二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ヒロと怨炎の幻想(ミラージュ) ( No.837 )
- 日時: 2012/10/02 15:26
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
場所は打って変わり、トキオシア公園。
そのベンチに座る僕と直紀さんは顔を見合わせる。
「直太、久しぶりだな」
「うん、直紀さんもね・・・・・・あの、周吾兄ちゃんのこと知らなかったんですか?」
周吾のことを知らない人がいたとは思ってなかった。
直紀さんに聞いてみるしかないと思ったので、試しに聞いてみた。
「ああ、知らなかったね。顔があまりにも似てるから、灰崎かと思ったよ」
「あれ、灰崎周吾くんって言うんですよ」
「へぇ・・・・・灰崎の弟なら似てるはずだな」
直紀さんは苦笑しながら笑う。
灰崎周吾に兄がいたということになるのか。
「でも、中学生が小学生をいじめていいわけじゃないこと分かってんのかねぇ・・・・・・」
「あはは・・・」
直紀の言うとおり、中学生が小学生をいじめるのは良くない。
そのことを察していて、いじめようと思ったからかもしれない。
「あの、周吾兄ちゃんには兄がいたの?」
「うん・・・・・・祥吾という名前の兄がいるんだけど、そいつは僕の同級生で問題を起こしては、ケンカしまくった」
それに暴力沙汰が絶えず、暴力が原因で所属先の部活を止めてしまったという過去を持つ。
兄の祥吾は幼い頃から乱暴者で暴れまくることが多かったのだという。
弟の周吾も祥吾に憧れて、ケンカしまくることを覚えていったのだと推測できた。
「ちなみにバンも知っていたし、同級生の間では有名になってて札付きの不良として恐れられていたんだ」
「マジですか・・・・・・・」
うわぁ・・・・・・・どうりで不良じみた格好をしているわけだ。
バン兄ちゃんも灰崎祥吾のことを知っていたのか。
「ただ、灰崎はハルにも手を出したことがあるんだよな」
「ええ、ハルさんに手を出した?」
直紀によれば、高1のときにハルが絡まれていたことがあったという。
バンと直紀に話したハルを見て憤慨したのか、殴りかかろうとしたらしい。
しかし、咄嗟の機転で直紀とバンが彼女を守りきった。
「咄嗟の機転でバンが庇って、ハルを守ったよ。僕は灰崎の両手を押さえて防いだんだけどな」
「すげぇ・・・・・・」
「灰崎は暴力することだけしか考えようとしないヤツだったから、授業中は居眠りしてたな」
暴力することだけしか考えようとしない。
つまり、暴力すること以外には何も興味がない。
灰崎はあえて、自分の好みに合う彼女を探していたのだろうか。
「まぁ、灰崎に弟がいたとは知らなかったから驚いたよ」
「そうですよね・・・・・・」
苦笑しながら応える僕の姿を見て納得する。
まさか、灰崎の弟が周吾だったとは想像していなかった。
確かによく考えたら、周吾は兄の祥吾に認められたくてやったんじゃないのかと思う。
「そういえば、何であんなところにいたんだ?」
「実は--------------------」
大沢健太から聞いた話を元にできるだけ詳しく説明した。
知らないお兄ちゃんに声をかけられたことや封筒のことを話した。
その話を聞いてくれた直紀は腕を組んで考えた。
「なるほどね、どうりで駅前に居た理由が分かってきたな」
「え、どういうこと?」
「周吾は直太に構ってほしかったからというのもあるな。でも、実際は殴るためだけに来ただけのことだろ」
確かによく考えたら、周吾は殴るために来たという可能性が高い。
不良少年になりたくなかったので、健太にはなんて話そうか悩んだ。
「健太兄ちゃんには言えないな」
「まぁ、直太君の意志を尊重しておくよ」
直紀の言葉を聞いて、無言で頷いた。
気付けば、夜6時になっていた。
「帰らないとまずいみたいだから、行くね!」
「おお、気をつけて帰れよ」
直紀さんと別れて、帰路についた。
河川敷を経て、帰り道を走っていた。
やがて、自宅に着いて玄関のドアを開ける。
「ただいま!」
「お帰り、直太」
ふと、玄関に靴が置いてあることに気付く。
バン兄ちゃんがいるのだろうか。
「母さん、バン兄ちゃんはいるの?」
「ええ、2階にいるわよ。さっき、夕飯を食べたばかりだから寝てるかもよ」
「そう・・・・・・僕も食べるかな」
靴を脱いで上がる。
急いで夕飯を食べ終えて、居間を出る。
2階に通じる階段を駆け上りながら、部屋に向かった。
「ただいまー!!」
部屋のドアを開けて入った瞬間、目の前に映った光景を見て驚く。
椅子に座りながら、机に突っ伏して寝ているバンの姿。
「バン兄ちゃん?」
ゆっくり近寄ると、顔は伏せられていて居眠りしている。
穏やかな寝息を立てて、口から放たれた酒臭さが漂う。
「うっ・・・・・・」
酒臭さに顔をしかめながら、机の上を見る。
缶ビールが4本くらいあって、周りに転がっていた。
その様子だと深酒したのかもしれないが・・・・・・仕方がないので、試しに起こすことにした。
「バン兄ちゃん、こんなところで寝てたら風邪を引くよ」
起こしても、なかなか起きないところを見る限り--------------------
酒浸りになっている兄の姿はだらしなく映っているとしか思えない。
それでも、自分のことを大切にしてくれる人がいるのだから。
「バン兄ちゃんってば、起きてよ」
眠そうに身じろいだ後、ゆっくり上半身を起こした。
ぼんやりとした視界に僕の姿が映ったのだろう。
僕の存在に気付いたのか、眠そうに目を擦る。
「お帰りー遅かったなぁ」
「うん、ただいま。遅れてごめんね」
ベットの上にランドセルを置き、座り込んだ。
バン兄ちゃんは欠伸した後、眠そうに僕を見る。
「遅かったな、帰る前に電話してくれれば良かったじゃないかぁー」
「ごめんなさい・・・・・・・」
バン兄ちゃんに連絡することができなかった。
その事を反省したのだと悟った瞬間、バンはゆっくり立ち上がる。
フラフラと近寄りながら、ベッドにダイブして横たわった。
「そういやぁ、直紀から話を聞いたぞ」
「え、何を・・・・・・」
「ミソラタウン駅で不良少年と出くわしたらしいな?」
どうして、その事を知っているのか分からなかった。
直紀から灰崎の弟だったということを聞いて知ったそうだ。
「相手が灰崎の弟だったなんてな・・・・・・そいつと知り合いなのかぁ?」
「うん・・・・・・児童養護施設にいた時に知り合った先輩なんだけど、何か不良みたいだった」
バン兄ちゃんに児童養護施設のことを話しながら、灰崎周吾のことを詳しく説明した。
そんな僕の話を聞いてくれたバンは眠そうに見つめていた。
「そりゃあ、どうりでケンカしまくるわけだ・・・・・・そういうところは祥吾と似てるんだな」
「そういえば、高校の時の同級生だったんだよね?」
「うん、クラスで一緒だったからな。知り合いって言うほどじゃないけどな」
眠そうに上半身を起こしながら答える。
僕の頭を撫でながら、優しい眼差しを送った。
「灰崎の弟が中学生だったとは知らなかったな」
「そうだね・・・・・・」
「まぁ、そんなことは気にしないで忘れちまえよ」
バンの気遣いを感じた瞬間、周吾のことを忘れることができた。
過去の記憶を思い出したくないので、もう忘れてしまおうかと思っていたのだ。
「僕の話を聞いてくれてありがとう、バン兄ちゃん」
バン兄ちゃんの胸に飛びついて抱きしめた。
そんな僕を受け止めてくれたバンは優しそうにあやしながら、ポンポンと背中を撫でた。
「まぁ、嫌なことは忘れちまえばいいんだよ。なあ?」
「うんっ! そうするよ」
キャッキャッとふざけながらじゃれ合う。
周りには大切な家族がいるのだから、寂しいと思えることはないだろう。
あの悪夢を見なくて済むことができるし、嫌なことを忘れたい。
バンの存在が何より大きかったのは言うまでもない。
The End---------------------------