二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】-プリンスのDNA ( No.49 )
- 日時: 2012/07/22 16:15
- 名前: 優騎那 (ID: 9RKOH.vJ)
「はァ……はァ……」
その日の夜、豪炎寺は一人グラウンドで打ち込んでいた。
選考試合の時にオリビアに言われたことがずっと引っかかっていたのだ。
『弱いフォワードなのですね』
「うああ!!」
彼女の声を思い出すたび、ボールを蹴らずにはいられなかった。
「戻らぬのですか?」
「……!!」
凛とした声に振り向くと、そこにはオリビアが小高い所にいた。
「夕食の支度はとうに整っておりますよ」
フィールドに降りてきながらオリビアは言った。
「先に食べててくれ。もう少し練習したい……」
相当打ち込んでいたのか、あたりにはサッカーボールが散乱している。
オリビアはくすっと笑った。
そんなオリビアの態度が豪炎寺の癇に障ったのか、豪炎寺は眉をひそめた。
「何がおかしい?」
「わたくしに言われたことが気になっておるのかと……」
超直球ど真ん中図星ストライクだった。
どうもオリビアは人の感情に敏感らしい。
「その節は、申し訳ありませぬ」
「は?」
豪炎寺はなぜオリビアに謝られているのかわからなかった。
「わたくしはフィールドの上に立つと言葉を選ばぬ性分ゆえ、あなた様に不愉快な思いをさせてしまったかと……」
「あぁ。あれは傷ついたな」
瑠璃色の髪のツインテールが揺れる。
オリビアに頭を下げられ、豪炎寺はどうしていいかわからなくなった。
「どうか、お許しくださりませ」
「何故、おれを弱いと言ったんだ?」
謝罪よりもあの言葉のわけが聞きたかった。
伏せていたアメジストの眼差しが豪炎寺を射抜いた。
「あれは、豪炎寺殿がまだ強くなれると分かったうえでああ言ったのです。決して、豪炎寺殿が弱いなど、微塵も思っておりませぬ」
「そうだったのか……」
豪炎寺はずいぶん心が軽くなった。
「なァ、オリビア」
「何にございましょう?」
「練習に付き合ってくれないか?」
オリビアは驚いたような表情をした後、誰からも愛される笑顔を浮かべた。
「無論」
ゴール前にオリビアが立った。
「豪炎寺殿は、シュート技以外にカット技をお持ちですか?」
「カット技は持ってないな」
「ならば、身につけましょう」
「何だと……!?」
自分がカット技を持つ?
今まで考えたことなどなかった。
「DFまでもが攻撃に加わるチャンスが訪れることもあらば、FWが守備に回るピンチもあります。その時に攻撃的すぎるFWならばどうでしょう?」
「邪魔になるだけだな」
「左様。しかし、カット技を一つでも持っておれば、流れを変えることが出来まする」
「わかった。必殺技の特訓に付き合ってくれ」
「はい!!」
オリビアは優しく笑った。
豪炎寺はカット技を習得しようという気になった。
もっと強くなりたい。
全てはその思いから来ていた。
修也少年は自分の心境の変化に気付いていなかった。
オリビアの笑顔を絶やしたくないと思ったのだ。