二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.349 )
- 日時: 2012/10/25 22:45
- 名前: このみ (ID: KCZsNao/)
第28Q 「恐怖?」
コートの中央で、涼ちゃんが唇を噛み締めて立っていた。
顔を伏せて、拳は震えている。
『涼、ちゃん……』
そう呼べば、悔しさに顔を歪めた彼と目があった。
涼ちゃんはすぐに顔を背けて、ボソッと言った。
「なんスか?慰めなんていらないっスよ」
『……違うの。ただ、言いたくて……』
「何を」
『涼ちゃんと……バスケするの、……すっごく、楽しかった……。
また、やろう、ね……』
涼ちゃんがピクリ、と動いた。
彼はゆっくりこちらを向いて、叫んだ。
「次は勝つっス!!!!」
今度はニッと笑ってて、私も笑えた。
「それにしても、なつきっち強いっスねー。てか、バスケすると性格変わるっスね。怖かったっス」
『こ、怖い……!?そんなに……酷い顔してた……!?』
「いや、ずっと笑ってて怖かったっス」
『……私……笑わない方が、いい……かな』
「……真剣な顔でやれば、かなり変わると思うっス」
『……そうする……』
なんて話してれば、わらわらと皆がやってくる。
「なっちゃんかっこよかったー!」
「なつき、次相手俺な!」
「すごいです。びっくりしました」
「ふん、人事を尽くしていれば、黄瀬に勝つことくらい造作もないことなのだよ」
「見直したぞ、なつき」
『皆、ありが、と……』
「俺に対する言葉は一つも無いんスか!?」
「ない」
「酷いっス!」
横で涼ちゃんが半泣きで叫んでる。
彼のファンに見せてあげたい。
「なつき」
聞きなれた大好きな声に、肩がはねた。
彼は、先程の私を見てどう思ったのだろう。
怖い女だと、思われてしまっただろうか。
『……ぁ、敦……。私……怖かった……?』
恐る恐る訊けば、なんで〜?という間延びした返事が返ってきた。
Tシャツの裾をぎゅっと握りながら、視線を下にして、目を合わせないように答える。
『なんで、って……。わ、私……』
女なのに、涼ちゃんに、勝ったから。
その言葉は言えなくて、飲み込む。
もし、彼が頷いたら、私はどうすればいいのだろう。
じんわりと目の縁に涙が溜まる。
見られたくなくて、俯いたのに、彼は、敦は。
私の脇の下に手をいれて、自分と同じ目線まで軽々と持ち上げた。
「怖いなんて思ってねーし」
涙が流れた。
敦はそれに気付いたのか、笑って私の目尻に軽くキスをした。
嬉しくて、もどかしくて、恥ずかしくて、照れくさくて。
私は彼の首に腕を回して、肩に顔を埋めた。
いつの間にか皆は体育館の外にいて、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。