二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 負けません。 (黒子のバスケ.) +参照700突破激感謝!! ( No.22 )
日時: 2012/08/15 11:45
名前: 悠希 ◆YLdWB0/d2s (ID: ijJ7UejJ)

 「——日本低い。……なんでも」
 (——で……かっ!!)


 @第15Q.パパ・ンバイ・シキ


 試合体育館に現れたパパ・ンバイ・シキ——通称お父さん。
 想像していたよりもかなり大きく、麗也は思わず顔をひきつらせていた。
 そんな時、日向が持っていたボールが主将の谷村の足に軽く当たる。


 「あぁ、すいません」
 「そういえばおたくら、海常に勝ったってマジ?」
 「あ、いや、練習試合ですけど……」


 日向がそういうと、谷村は小馬鹿にしたような表情になった。


 「なーんだ。思ったよか大したことないんだ。“キセキの世代”って」
 「…………」


 日向も思わずむっとなる。麗也も静かに谷村を睨みつけた。
 そんな時由梨が麗也の隣に立ち、同じように谷村を見ながら囁いた。


 「あの人は他人を見下す面があるから。……あまり聞かないほうがいいよ」
 「……さすが情報収集のスペシャリスト。そういう部分まで収集済みか」


 冷静に麗也も返すが、その瞳には少し苛立ちが浮かんでいた。


 「キセキの世代? 負け? そいつらに勝つために呼ばれたのに、こんなガッカリだよ。弱くて」


 お父さんもそう言って歩き出す。麗也はじっとお父さんを見ていた。
 あちらも麗也の方を見ながら歩いていて——軽く、黒子にぶつかった。


 「ダメですよ僕、子供がコートに入っちゃ——」


 お父さんはがっしりと黒子をつかんで持ち上げる。
 体格差的にもお父さんから見れば子供にみえる——のかもしれない。
 だが、黒子はれっきとした高校生である。——選手なのだ。


 「……選手?」


 それに気付いたのか、お父さんも少し目を見開く。
 そして黒子をおろしたあと、睨みっぱなしだった麗也の方を見て言ってきた。


 「あんな子供いるチームに負け? “キセキの世代”ってみんな子供?」
 (……でもって何故に俺のほうを見て言うんだってのこのお父さんめが)


 ふと周りを見れば、かなりの人物が麗也を見ている。
 中学時代、麗也にも取材は来ていた。雑誌にもそれなりに載った。
 恐らく“キセキの世代”ということで見られているのだろう。


 (で、お父さんはあらかじめ伝えられてでもしてたのか? そして俺を見て言ってきたと?)


 完全に喧嘩売られてるじゃん——と麗也は楽しげに笑った。
 由梨が相手チーム選手の情報を知る限り全員に伝える。そして——試合は始まった。


 *


 (火神が……高さで負けた?!)


 初っ端から麗也は驚いた。火神がお父さんに高さで負けたのだ。
 いや、高さだけでもないだろう。——手足の長さ、それも含まれている。


 「まずは新協ボールだ!」 
 

 作戦通り麗也と火神の2人でマークに行く。
 が——その時、麗也にも2人のマークが付いてきた。半分忘れていた麗也は、くっと息を詰まらせる。


 「いかせねぇよ、キセキの世代さん!」
 「パパー!! 決めちまえー!!」
 「…こ…っのやろ…!!」


 麗也がマークから抜け出そうとした瞬間——お父さんがシュートを決めた。
 笛の音の後、新協側に2点の得点が入る。にんまりと笑ってくる相手2人を睨み、麗也は元のポジションに戻った。


 (完全なマークだな。でも——)


 ちらりと麗也は由梨のほうを見る。そして、笑った。


 (全部由梨の言ってた通りだな)


 ボールは誠凛。日向がシュートを放つ。
 が、お父さんが手を伸ばしてそれをいとも簡単そうにブロックした。


 (つか長ぇって! て言うかまだ動いちゃだめなのかよ!)


 由梨の言葉を思い出しながら麗也は走る。


 『最初の数点だけは様子見。私か監督が頷いたら——3人、おもいっきり行ってください』


 まだ由梨かリコからの頷きという合図はない。
 そんな時、日向と新協の主将である谷村が会話をしているのが耳に入る。


 「楽だぜ。あいつにボール回しゃ、勝手に点入ってくし」
 「……楽かどうかはしんねぇけど、文句言うなよ。とんでもねぇ奴ならうちにもいるし」


 そう言って日向は、麗也、黒子、火神の3人のほうを見てきた。
 その3人は由梨とリコのほうを見て——“合図”を受け、頷き返した。


 「ま、呼んだわけじゃねぇんだけどな?」


 刹那、3人は動き出す。麗也と火神はお父さんの完全マークに入った。
 お父さんに自分のプレーをさせない——それが目的である。


 「っは……、なぁ、パパさん?」
 「——っ?!」
 「シュート、入れて見ろよ」


 入れさせないけどな——麗也は笑う。火神も鼻で笑った。
 お父さんはカッとなり、シュートを入れようとジャンプした。


 「させねぇって……言ったよな!」


 麗也と火神は同時にとんで——お父さんのフォームを崩す。
 ボールはそのままとんでいき、ガコッと鈍い音を立てて外れた。


 「なぁっ……?!」
 「——あんまりなめてっと、本気出すからな?」


 にっこりと麗也は微笑んだ。由梨とリコからは一応もう一つ言われている。


 (初戦からシュートはうちまくるな——……か。さて、とりあえずマーク抜けていくか)


 麗也にはとにかくお父さんのマークに行ってほしいと言われたのだ。
 の前にマークを抜けなければならない。


 (とにかく……マーク抜けて、パパさんを止めて行く!)


 だっと麗也は走り出す。移動したお父さんの所へだ。
 麗也は堂々とお父さんがいる中で、火神に言った。


 「火神、お前次シュート決めてくれ」
 「——了解」
 「堂々と言いやがって……。させるわけないだろ」


 お父さんが言う。そんな時、丁度お父さんの手元にパスが向かってくる。


 (ラッキー)


 お父さんがそれを取ろうとした瞬間——バシッとそれが火神にパス回しされた。
 そのまま火神はシュートを決める。


 「子供怒らせると、結構やばいかもよ!」
 「…っていうか子供で話進めるの、やめてください」
 「……そうそう。かなり馬鹿にされてる気分」


 再び回ってきたボール——それを麗也は取る。
 そして本日1本目のシュート体勢に入った。


 「はっ、ははは! そんな所から入るわけないね!」
 「——どーですかね」


 お父さんは完全に馬鹿にしていて、ブロックする気もない。
 傍から見ればそうだろう。ゴールからは、半分以上離れているというのにだ。
 だが——麗也はしっかりと意志を持ってボールを放つ。


 「入るわけ——」


 ————パスッ、とボールはゴールに収まった。歓声が上がる。
 お父さんは驚きの表情のまま、硬直している。麗也と黒子、火神は拳をぶつけあった。




 (やはりあいつ……シュート範囲が着実に伸びているのだよ)


 眼鏡をおしあげながら、見に来ていた彼は心の中でつぶやいたのだった。