二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 負けません。 (黒子のバスケ.) +参照1700突破激感謝! ( No.43 )
日時: 2012/09/10 22:39
名前: 悠希 ◆YLdWB0/d2s (ID: dhvyz82z)


 『無茶はしないでくださいね』
 『……無茶、しないでね?』
 『無茶しちゃだめっすよ!! 黒沼っち!!』


 @第28Q.限界を超えて

 ——ボールが加速し、火神の手元に収まった。
 わきあがる歓声と疑問の声。虚ろな目をしながら、麗也は笑った。

 
 「イグナイトパス……ってか」


 そのボールを火神が緑間のブロックを妨げ、ダンクを決めた。
 っしゃ、と麗也は小さくガッツポーズをする。


 「か、が——っ」


 ぐらりと視界が一瞬ぶれた。何とか姿勢を立て直す麗也。
 やばい、と直感的に麗也は悟った。
 と同時に酷い咳が出始めた。げほげほっ、とむせる。


 (く……るし……)


 その時、タイムアウトが要求された。
 一瞬ぼやけた視界に、鮮やかな水色が映る。


 「タイムです、黒沼君。一旦ベンチにいきましょう」
 「そ、…か。……ちょっと、キツイ、かも、しれな……っ!!」
 「あと…あと少しです。この試合、凄く頑張った君が……勝利の瞬間にいないのは、ダメですよ」


 めったに見ない黒子の優しい笑顔が、今度ははっきりと視界に映った。
 そっか、と今度は落ち着いた様子で麗也は言う。
 点差は——たったの2点。それを見て、麗也の目がいつも通りに戻った。


 ■ ■ ■


 秀徳がとったタイムアウトも終了。
 そして——ようやっと、火神が緑間のシュートを完全に止めた。だがもう足は限界のようだ。


 「——火神!! こっちだ!!」
 「黒沼っ……頼んだ!!」


 回ってきたボールを数回ドリブルし、シュート体勢に入る。
 ——火神が頑張っている。黒子が頑張っている。先輩が頑張っている。


 (だったら……俺だけダウンしてる暇はない!!)


 麗也の手からボールが放たれる。ここまで来てもまだ外れた事はない。
 スパッ、と軽い音をたててボールは見事に入った。


 「ナイスシュート、黒沼!」
 「っしゃあ!! もう1本決めてくぞ!!」


 緑間にパスは集中している。——それを黒子が弾いた。
 完全に流れは誠凛である。残りは……数秒。ボールがコートをかけ巡る。


 「——黒沼!!」


 そして麗也にボールが回ってくる。その瞬間、ブロックに2人が来た。
 それに対し、麗也は待っていたといわんばかりに微笑んだ。
 素早く日向にパス回しがされる。そしてそのまま日向が3Pシュートを決めた。


 「残りあと3秒で誠凛が勝った——!!」
 「おおーー!!」


 体育館内に響く歓声。……だが、緑間はボールを持っていた。
 そしてジャンプをしてシュート体勢に入る。
 足に限界を迎えている火神。が、それでも、と火神は飛んだ。


 「……信じていたのだよ。お前が飛ぶという事を」


 ——しかし、緑間はそのまましゃがむ。フェイクだ。
 絶句するメンバー。やばい、と悟った火神。
 だが、そのボールは見事に落とされ——逆に誠凛がもう1本、シュートを決めた。


 「……僕らも信じてました。火神くんは必ず飛ぶと」
 「そして……緑間はきっと、ボールを下げる……ってな」


 ————体育館に鳴り響いた、試合終了を告げる音。
 それと同時に、全員が叫んだ。


 「っしゃああああああああっっ!!」
 「っ……黒沼君、火神くん…!」


 黒子が寄ってくる。麗也と火神も笑い——拳をぶつけあった。
 85対81——誠凛の、勝利だ。

 
 (やったね、麗也……!!)


 にこりと由梨も笑った。


 ■ ■ ■


 「……あら? 黒沼君はー?」
 

 試合終了後、控え室でリコは尋ねた。
 だが全員体を痛みでプルプルさせたまま、知らないと言った。


 「トイレ……かしら? ちょっと探しにいって——」
 「じ……じゃあ、俺……行って、くるっス……」
 「え? ……火神くん、絶対動けないわよね? じゃ、じゃあ黒子君も一緒に行ってきてくれる?」
 「はい、分かりました」


 黒子が火神を支えながら控室を出た。
 ぷるぷる震えている火神をちらりと見て、黒子は尋ねる。


 「……どうしてそんな体なのに来たんですか?」
 「この試合……俺ぁ、アイツに……だいぶ、迷惑かけた。から、礼を……言っとこうと思ってな……いってえ!!」
 「…………そうですね」


 黒子も静かに頷いて、トイレに向かって曲がり角を曲がる。
 


 「……え?」
 「ちょ……おい……黒沼……?」


 壁にもたれるようにして、麗也が座り込んでいる。
 体が痛いのかと思ったが——その顔色を見れば違うと分かった。
 麗也は2人を見て安堵したように笑い、糸が切れたように倒れこんだ。


 「くろ……おい、黒沼——?!」
 「————黒沼君!!」


 ——体はもう、とっくに限界を超えていた。


 ■ ■ ■


 vs秀徳戦編、終了です。
 ぐだぐだと長くてすいませんでした(´・ω・`)
 
 参照数1700突破感謝です。
 本当にありがとうございます!