二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: サマーウォーズ 【漆黒の天才ハッカー】参照400突破!感謝! ( No.26 )
- 日時: 2012/08/12 14:18
- 名前: ソウル (ID: .uCwXdh9)
【エピソード2】
「ひ、久しぶり佳主馬君」
健二は上ずった声で佳主馬に言った。隣には頬を桃色に染めた夏希がいる。
佳主馬はそんな二人を見比べ、小さく口を開いた。
「うん」
それだけ言うと、居間の方向へと歩いて行ってしまった。
「はは……相変わらずだなぁ……」
健二は苦笑を浮かべ、寂しそうに呟いた。
すると、隣で顔を赤らめていたはずの夏希が、彼にパチッとウインクをする。
まだ遠くへは行っていない佳主馬に聞こえないよう、小さな声で囁いた。
「大丈夫よ!照れてるだけでほんとは佳主馬、健二君のこと気に入ってるんだからっ」
この言葉は前回もかけられていたのだが、むしろ嫌われているんじゃないかと思うほど、佳主馬の態度はあっさりしていた。
健二は眉を下げて、しゅんとした表情で佳主馬の背中に目をやった。
そして「あれ?」と声を漏らす。
「どうしたの?」
夏希はキョトンとした顔をしている健二の顔を覗き込んだ。
上目づかいをしてくる彼女に、半ば無意識で顔を赤くさせながら、健二はそっと佳主馬の背中を指さした。
そこには、誰ものっていない水色のおんぶ紐がかかっていた。
赤ちゃんがのれば見えなくなるような位置に、キングカズマの詩集が施してある。
夏希はそれを確認すると、はぁっとため息をついた。
「あーあ……ほんとは佳主馬に直接言わせたかったんだけどなぁ」
そう言うと、今度はニコッと音が鳴るようなかわいらしい笑みを見せる。
誰もが癒される、陽だまりのような笑みだった。
健二は思わずあたりを見まわす。
そんな健二には気づかぬ様子で、夏希は話を始めた。
「あれね、陽奈美ちゃんの」
「陽奈美ちゃん……?」
先ほど聞いた聞き覚えのなかった名前に、健二は小首をかしげて復唱した。
「そ!佳主馬の妹ちゃん」
「……あーーー!」
健二は一瞬黙り、ハッとして珍しく声を張り上げる。
そしてパッと顔を輝かせ、紡いだ。
「そういえば前、聖美さん妊娠してたから……!」
「うん!生まれたんだよ!まったく佳主馬ってば陽奈美ちゃんがいないときもつけてるなんて可愛い!」
夏希は興奮気味に話していたが、「あ、シスコンって言うのか」と付け足した。
「なー……あれが佳主馬の親戚だってよ。大学生!」
「ふーん……きれいな人だねぇ」
そんな健二と夏希の様子を、かげからうかがっていた人物があった。
「出雲……隣の男誰だと思う?」
「さぁ、親戚じゃない?彼氏ではないと思うよぉ、天神」
出雲と呼ばれた色白の少年は、黒い癖のついた髪を揺らしあくびをした。
だが携帯のボタンを押す左指は、高速で動いている。
そんな彼の態度に、天神と呼ばれた浅黒い肌に黒く短い短髪の少年が「お前なぁ—……」とぼやけたように言った。
この二人は特徴こそ違うが、生まれ持った部分はかなり似ていた。
大きな黒目がちな目も骨格さえも、お互いのコピーのようだった。
髪型さえ違くなければ、2人が双子なことは一目瞭然だろう。
「別に俺には関係ないんだもん」
自分に文句を言いそうだった天神に、出雲は興味なさげに言い放った。天神が何かを話す前に。
しかし、出雲の視線はやはり携帯にくぎ付けだった。
まったく天神のほうを見ないで言っていたのだ。
画面にはワンセグが流れていて、美人な女性キャスターが眉を上げ真剣な顔立ちでニュースを流していた。
『何者かのクラッキングにより、警視庁の極秘ファイルが外部へと漏れ出したとされます。警察内総出で捜査をしているようですが、犯人の目星はついていないようです』
そんな言葉をつづり、先ほどまでとは別人のように笑った。
『———さて、お次は』
アナウンサーが言い終わる前に、携帯を閉じた。
出雲はフフッと小さな含み笑いをする。
彼の眼は、笑ってはいなかった。