二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: サマーウォーズ 【漆黒の天才ハッカー】参照600突破!感謝! ( No.31 )
- 日時: 2012/09/01 23:38
- 名前: ソウル (ID: eldbtQ7Y)
【エピソード3】
「な……!どうなって……?」
天神は眉を寄せ、パソコンを見つめた。
画面の中で暴れるキング・カズマに、OZにいたアバターたちが慌てた様子で逃げていく。
キング・カズマの瞳は、今までにないほど狂気と闇に満ちていた。
そして長身の兎は、何かを見つけたように画面から遠ざかっていく。
「お、おい!しっかりしろ佳主馬!!」
天神の鋭い声に、佳主馬は我に返ったように顔を上げた。
慌ててキーボードに指を走らせる。
キング・カズマはそれでも止まらない。
「何やってんだよ!どんどん遠くに行っちまうぞ!?」
「わかってる!やってるよ!でも……僕の言うことを聞かないんだっ」
焦りの入った声をまじえ背後から強く肩を掴んでくる天神に、佳主馬も声を荒らげた。
キーボードをたたく指は速度を上げるが、同じようにキング・カズマはスピードを上げ走り始める。
やっと画面自体がキング・カズマにピントを合わせたとき、佳主馬はぎょっとした顔でその中を見た。
画面には堂々たる態度で仁王立ちしているキング・カズマと、淡い水色の着物姿のアバターがいる。
そのアバターは女性型で一見人のように見えるが、頭から兎や小鹿の耳のようなものが生えていた。
驚愕に瞳を揺らし、じっとキング・カズマを見つめている。
「嘘だろ……なんでこのタイミングでOZの中に夏希さんが!」
佳主馬は苦し紛れに叫んだ。
夏希は確実に、たった今入って来たんだろう。
そのため気づかなかったのだ。
突然のキング・カズマの暴走にも、崩壊しかけたこの世界にも。
彼女のアバターのナツキは、不安げな表情であたりを見回した。
ナツキの視界に広がるのは、大量のソフトを壊され存在すらほころびかけたOZの姿だった。
きっと今、夏希もその傍にいるであろう健二も、この飲み込めない現状に気が付いただろう。
ふいに、ナツキは意を決したように唇を噛んだ。
その途端、勢いよく穏やかな光が真っ白になった床から溢れ、ナツキを足元から包み込もうとした。
「よかった……ログアウトするつもりなんだ……」
佳主馬は一瞬、安どのため息を漏らす。
しかしその安心は、天神の言葉によって音を立てて崩れて行った。
「佳主馬!ログアウトできてないぞ!」
「な……!?」
佳主馬は思わず画面へと身を乗り出した。
するとそこには、何度も何度もログアウト作業を繰り返しているナツキの姿があった。
そしてダダッという地面蹴る音が佳主馬に届いたとき、キング・カズマはナツキに向かってかけて行った。
いつもの何十倍ともいえるその速さにナツキが気づいたときには、キング・カズマは彼女の目と鼻の先にいた。
その勢いのままに、ナツキの白い細腕をギュッとつかむ。
「まずいっ!振り払って逃げるんだ夏希さん!!」
佳主馬の上ずった声に、出雲はようやく携帯から顔を上げた。
そして背を丸めてパソコンと奮闘する彼をしり目に、携帯を静かに閉める。
それを合図にしたかのように、キング・カズマはナツキを連れて画面上から消えていった。