二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: サマーウォーズ 【漆黒の天才ハッカー】参照800突破!感謝! ( No.40 )
日時: 2012/09/03 22:26
名前: ソウル (ID: eldbtQ7Y)

【エピソード4】


「佳主馬!!」
「ちょっ……!夏希先輩!落ち着いてください!」

ドタバタという大きな音と共に、夏希が声を張り上げた。
納戸の入り口で肩で息をし、携帯電話を握りしめている。
そうとう急いできたのか、彼女の後ろにいる健二は少し疲れた顔をしていた。
彼の場合、焦っていると顔色が悪くなるのだ。

「夏希さん……」

佳主馬はそんな夏希を、ばつの悪そうな表情で振り返る。

「一体どうなってるの!?」

普段怒ったりなどめったにしない夏希が、珍しく声を荒げた。
佳主馬に携帯を突きつける。その手は震えているようにも見えた。

「夏希先輩……」

健二は静かに夏希の名前を呼び、彼女の腕をつかんだ。
そしてその手をゆっくりと下ろさせ、佳主馬の三白眼を見据える。

「佳主馬君……。なにがあったの?」
「……」

佳主馬は答えなかった。
ただただ目を伏せ、顔を上げない。

そんな佳主馬の代わりに、隣にいた天神が苦笑を浮かべた。

「ありゃー……佳主馬のせいじゃねーよ」

健二も夏希も、同時に彼を見つめた。
天神は続ける。

「俺も見てたんだけどさ、突然キング・カズマが暴れだしたんだ。な?出雲」
「……ああ」

出雲は少し間を開けたものの、ゆっくりと頷いた。
真っ黒な瞳を健二に向ける。

「多分……佳主馬のパソコン……いや、OZのデータだけがクラッキングされたんだと思う」
「えっ!?」

これには思わず、健二を含めた全員が声を漏らした。

(クラッキングって……!あのニュースに流れてた……!)

佳主馬も顔を上げ、その瞳を驚愕に揺らしている。
そしてわなわなと手を震わせ、勢いよく出雲につかみかかった。

「そんなことありえないっ!」

佳主馬はそう怒鳴りつける。

「か、佳主馬君!!」

健二は慌てて佳主馬の体を押さえつけ、出雲から引き離そうとした。

「離してよっ!離してってば!!」

佳主馬は叫ぶように怒鳴ると、浅黒い腕で健二を押しのける。
しかし、健二もそれで離すわけにはいかなかった。
佳主馬が一回スイッチが入ると暴力をふるってしまうのを見たことがあったし、わからないことがあるからだ。

佳主馬がクラッキングされたと言われ、こんなにも怒る理由が。

確かにクラッキングという事実は紛れもない犯罪だ。
他人がされているのを見ても不安になるのに、自分がされたら嫌に決まっているだろう。
だが、今の佳主馬の姿はかなりおかしい。

出雲が言った推測に、我を失うなんて……!

「どうしてありえないの……?」

健二の手によって佳主馬から解放された出雲が、小さく呟いた。
乱れた服を整え、フッと妖艶に微笑む。

「それは……!あんな短時間でクラッキングなんて不可能だか」
「確かに佳主馬のキング・カズマはそこんじょそこらにいるアバタ—とは違う。普通のクラッカーじゃこの数分の間になんてできないよ」

佳主馬の言葉をとぎり、出雲は続ける。
その表情は、大人っぽいものから少しずつ無邪気な笑みに変わっていった。

「でもさ。昔いじめられっこだった君が、この世界でのし上がってきたのと同じ原理だ。このネット……いや、OZという世界では、なにもありえないことなんかないんだよ?」
「……っ」

佳主馬がギリッと歯を食いしばるのと同時に、天神は一瞬驚いたように目を見開いた。
しかし、出雲はそれに気が付かなかったのだろう。
笑みを絶やさず小首をかしげた。

「で、OZのデータ内には何が入ってたの?」

出雲の言葉に、佳主馬はぴくっと肩を動かす。

「そんなに取り乱すってことは、大事なデータが入っていたんでしょ?」
「佳主馬君、そうなの……?」

心配そうな声を出す健二に、佳主馬は小さく口を開いた。

「……データが帰ってきたら教える」

そう言って佳主馬は再びパソコンと向き直った。
その声は、普段の声よりずっと低く、怒りの混じっているものだった。
夏希はゆっくりと佳主馬に歩み寄る。

そして真後ろでしゃがむと、申し訳なさそうに佳主馬の背に手を置いた。

「ごめん……。さっきはついカッとなっちゃって……。佳主馬がそんなことするわけないのに……」
「いいよ、別に。夏希さんは悪くないし」

佳主馬は間髪入れずにそう言うと、じろりとパソコンの画面を睨みつける。

「ただ……あれだけは絶対に取り返す……!」

覇気のこもった声を放ち、キーボードに指を置いた。