二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: サマーウォーズ 【漆黒の天才ハッカー】 ( No.6 )
- 日時: 2012/10/29 21:52
- 名前: ソウル (ID: eldbtQ7Y)
【エピソード1】
『何者かのクラッキングにより、警視庁の極秘ファイルが外部へと漏れ出したとされます。警察内総出で捜査をしているようですが、犯人の目星はついていないようです。さて、次のニュースは夏の———』
「すごい話だなぁ……」
健二は呆然とテレビを見つめて呟いた。
「まったく、クラッカーってやつだな」
呆れ顔でそう返す佐久間は、ニュースが終わり健二へと視線をずらした。
ちなみにここは健二の家である。
殺風景な彼の部屋に、佐久間は泊まりに来ていた。夏休みということで。
「もうあれから1年もたったんだな……」
佐久間は思い出したようにそう言いだした。
健二は「うん」とだけ返す。
夏希と近づけたあの特別な夏。
それは、『仮想世界OZ』の中で起きた大事件や、栄の死などが重なっていて、単に良い思い出とはいえない。
その複雑な思いが、健二にあいまいな返事をさせた。
「……で、お前は俺とのんきにテレビ見てていーわけ?」
「は?」
突然態度を変えひょんなことを尋ねる佐久間に、健二は不思議そうな顔をした。
佐久間はリビングの椅子から、勢いよく立ち上がる。
「俺、去年も言ったろ!夏ってのはスイカと花火と《女》だって!」
「う、うん」
こぶしを握り大声で熱く語りだす佐久間に、健二は驚いたように勢いでうなずいた。
「お前は言ったさ、『スイカと花火だけで十分だよ』って!」
「ああ、うん言った」
「でも今のお前は違うだろ?」
「へ?な、なんで……」
佐久間はいったん会話をやめ、すうっと大きく息を吸った。
「夏希先輩がいるだろ!」
声を張り上げる佐久間。
彼の言葉に健二の顔は、まるで熟れたトマトのように真っ赤に染まっていく。
「な、何言ってんだよ!ぼ、僕たち受験生なんだからもっとまじめ」
「そう、俺たちは受験生だ」
あわあわと反論する健二の言葉をとぎり、佐久間は腕を組んで目をつぶった。
そしてカッと目を開く。
レンズの下の目が、珍しく強い光をおびていた。
「だがしかし!俺たちが受験生のこの夏、夏希先輩はすでに大学生なんだぞ!?大学なんてパラダイスに行ったら、イケメンなんていっぱいいて、可愛いあの人は声かけられまくりで……健二ふられるぞ」
「う……」
最後一気に声のトーンを落とした佐久間に、健二は思わず口ごもった。
確かに不安ではあるのだ。
夏希は美人でスレンダーだし、性格もさばさばしている。
高校の時の人気を続行しているだろう。
そしてなにより夏希は健二がどんなに努力をしたとしても、彼の一歩手前を歩いているのだ。
「……だからな健二、お前この夏こそやるべ」
『〜〜♪』
今度は佐久間の言葉が邪魔された。
犯人は健二の携帯だ。
着メロが楽しげに響きだす。
健二は携帯を手に取り、電話の相手を確認した。
そして嬉しそうに笑みをこぼし、通話ボタンを押す。
「もしもし、夏希先輩?お久しぶりです」
『久しぶり、健二君。あのさー……ご飯食べに行かない?」
「え、ご、ご飯ですか?」
健二はチラリと机の上に転がっている、食べ終わったカップめんを見た。
『もしかしてもう食べちゃった?』
「え!いえ!今おなかすいたなーって思っていたとこです」
『そっか、よかった!私健二君に会いたくなっちゃって……。あ、○○駅に12時30分集合でいい?』
「はい!」
健二は平静を装い、電話越しにうなずいた。
そんな彼に、佐久間は小さく笑う。
「耳まであかいぞー」
そう指摘され、健二はさらに顔を赤らめそっぽを向いた。