二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜過去の天才〜(3Q更新★) ( No.26 )
日時: 2012/08/02 22:49
名前: しぃな (ID: r4kEfg7B)

第5Q 『変化』




「杏奈」

・・・逃げる?
いや、無理だな。足痛いし。

「ぁ〜・・・何?征十郎」

「・・・」

「いや、ねぇなんか超恐いんだけど!?」

無言で、ニコニコしている。
それがなんか気味が悪い。

「杏奈」

「すいません。連絡しなくてまじすいません」

土下座する?
いやそれはさすがに・・・

「杏奈」

「何!?」

「大丈夫なのか?」

あぁ・・・ほら、またそうやって優しくする。
駄目だなぁ〜・・・まだ全然好きだわ。

「ん・・・過呼吸のこと?それとも足?」

「両方だ」

「過呼吸は・・・今日久しぶりに出たんだよ。スリー打った時、征十郎のか、おみ・・て・・・」

ギュッと抱きよせられる。
有季たちはビックリしていた。

「・・・征十郎?

そういえば、約束したっけ?また絶対会おうって。」

約束、守れたね。
そう言ってあたしも征十郎の背中に腕を回した。

「うっ、征十っ朗」

「陽一さんの話は聞いたよ。頑張ったな」

その一言で、せき止めていたものが音を立てて崩れた。
泣かないなんて決めていた自分がバカらしい。

泣けばよかった。最初から。
楽になればよかった。

「はぁ・・・あのさ、」

大輝が、ポツリと言った。

「お前ら早くより戻せよ」




「・・・青峰、」

「なんだよ」

「お前は走って帰りたいのか?余計なお世話だ。杏奈行くよ」

グイッと腕を引かれて歩き出す。
皆が、ポカン・・・とこちらを見ていた。

あぁ・・・なんか、逃げたい。
恥ずかしい。









懐かしい場所に、征十郎はあたしを連れてきた。
帝光中の、みんなでバスケをした体育館。

夕日に照らされ、薄オレンジ色に染まっていた。

「わぁ・・・懐かしいなぁ・・・」

「そうか?まだ一年も経ってないだろう」

「十分だよ。それだけここから離れてたんだから」

「杏奈」

「何?」

「今の、お前にとってのキセキの世代ってなんだ?」

「え〜なにそれ。
キセキの世代・・・ねぇ・・・、いい思い出かな。」

「思い出か・・・、



俺達にとっての杏奈は希望だったよ」

遠い目をした征十朗。
なんだか、嫌な予感がした。

「バスケをただ楽しむための、希望だった」

「それって・・・」

「勝つことがすべて。俺はもう楽しいなんて忘れた。」

ズキッと、胸が痛んだ。

「杏奈は楽しいか?バスケ」

「・・・っ楽しいよ?」

「・・・そうか。」

なんでそんな冷たい目をしているの?
変わってしまったの?

「征十郎は・・・あたしのこと好き?」

「あぁ。好きだよ」

嘘じゃない。・・・でも、何かが違う。

「あたしも、好きだよ・・・」

「・・・どうして泣いているんだ?」

それは、悲しいから。
ううん。征十郎が泣いてるからだよ。

「っ・・・」

「そうだな、久しぶりに1on1しようか」

黙って、頷くことしか出来なかった。


足が痛くて、結果は完敗だった。

・・・いや、足が痛いなんていい訳だ。
征十郎は強くなっていた。変わってた。全てが。


「征十郎。」

「なんだ」

「あたしとの1on1は楽しかった?」

お願い。楽しかったと言って。
もう、これ以上征十郎のあんな顔見たくない。

「・・・つまらなかったよ。弱くなったね」

「ふっ弱くなったんじゃなくて、征十郎が強くなったんだよ」

もう、無理だ。
あたし、バスケが嫌いだ。

征十郎を、こんなにしたバスケが、嫌いだ。




返してよ。あの頃の征十郎を。

元に戻してよ。



「また、泣く」

「うん。だって悔しいから」



悔しいよ。征十郎。