二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマGO 金色の懇願姫 ( No.6 )
- 日時: 2012/07/29 19:34
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: BvZBUYdW)
二つ目の御話 「女郎花」
マサキは、校門の裏にある花壇を、じっと見つめていた。
花壇には、先が広がっている黄色い花が咲いている。
花壇は、赤レンガで積み立てていて、シックなふいんきを醸し出している。
「……ん〜」
——見れば見るほど、こんな花見た事がないって思えてきたぞ?
けれど、花壇に植えられているから、前から咲いていたんだろう。
そんな事を思いながらも、またマサキは悩んだそぶりを見せて花を見つめていた。
「その花に、興味でもあるんですの?」
優しい声が、マサキの耳元で囁かれた。
「ッ!?」
「あら、申し訳ありませんわ。
驚かそうと思ってはいなかったんですの。」
そう告げた少女は、優しく目を細めた。
身なりは、茶髪のふわふわとしたショートに、
服は雷門中の制服と大きく異なっていた。
「あ…こちらこそ、急に驚いてしまってスミマセン。」
その少女は、見た目こそ子供の様だが、喋り方は落ち着いていて、少し大人びた印象を受ける。
——2年生の先輩かな?
「それで、なんでこの花を真剣に見ていたんですの?」
「え、あ、あぁ…」
マサキは、一旦落ち着きを取り戻してから問いに答えた。
「この花って、前から植えられていたんですか?」
「えぇ。ずっと昔から。」
少女は、手を優しく花に触れながら言った。
「そうなんですか…
いえ、この花が前から植えられていたか忘れてしまった様で…」
すると、少女の眉が一瞬下がった後、再び少女は微笑んだ。
「それは、記憶力の問題ですわね。」
「あ、やっぱりそうでしたか…ははは」
——この人といると、なんだか調子が狂うな。
「…この花は、女郎花という花なんですの。」
「女郎花?」
「えぇ、よく俳句や、短歌にこの花の名前が出ていますわ。
今度、御覧になったらいかがですの?」
「…そうですね。」
しばらく、沈黙が続いた。
何を話したらいいのかが、わからないように、困った表情を浮かべ続けるマサキ。
すると、その沈黙を少女は破った。
「貴方、とても悲しい事が、ずっと前にありませんでした?」
「え…?」
悲しいこと…。
——あぁ、あったさ。
けれど……、こんな事を言っても……。
マサキは、作り笑いを浮かべた。
「ありませんよ。
ずっとずっと、俺は幸せでした。」
もちろん、嘘だ。
マサキは、何年か前に、両親がお日様園、という施設に預けられた。
両親の、仕事が不安定になった為に。
少女は、そんなマサキを見つめながら、こういったのだ。
「ここまで、嘘なんかつかなくていいんですわよ。」
マサキは、驚いた表情を少女に向けた。
「なんで…嘘って、事を知って…?」
「貴方の表情を見ればわかりますわ。」
そういい、少女はマサキに手を差し伸べた。
「私は、『金色の懇願姫』、神無月架那琥ですわ。
何か願いがあったら、私に言ってくださいませ。」